149.国滅亡のカウントダウン
王都はアベル復活で混乱しているとパンジーから連絡があった。
アベルが直々に王城へと足を運び、呪ったる宣言したらしい。
王を始め続々と体調を崩す人が続出し、王都の機能がストップしていまい庶民の間でも騒ぎになっているようだ。
死人は出てないが連日続く発熱と下痢・嘔吐の病に、貴族は門を閉ざし、救いであるはずのアーラマンユ教会も門を閉ざしたとの事。
今まで足を運ばなかった者達が、救いを求めて神社に人が押しかけているという。
暴動一歩手前の状態で、早急に対策を講じないと神社を破壊されかねないと報告が上がったので、急遽作りました。
呪詛緩和HPポーションと病気平癒のお守りを!
HPポーションに呪い解除を付与してみて出来上がったのが、呪詛緩和HPポーションでした。
既存のポーションに付与を掛けることはしない為、解除出来ないのが残念だが緩和は可能なので、それと併せて病気平癒のお守りを持って貰うことで、現状が悪化することはないだろう。
しかし、アベルの奴やりたい放題だ。
王都の機能が停止した日が続けば、その分経済的な影響も大きいだろう。
ミスト公爵がどう動くかが焦点になる。
呪詛緩和HPポーションも病気平癒のお守りも、それぞれ銀貨1枚とけして安くはない金額だ。
買い占めようとする輩は、即刻叩き出すように言ってある。
病気に掛かって参拝出来ない者には、代理授与も認められているが、その真偽は天照大御神像の前で分かる。
もし、営利目的な場合は天罰が落とされる。
本当にチート過ぎる像だよ。
藁にも縋るとはこう言うことか、と神主をしているベリックが感慨深く言っていた。
胡散臭いポーションとお守りの出現に、稼がせて貰いました。
胡散臭いと言っても効果はあるので、お守りを持っているだけでも症状は軽く済む。
呪詛緩和HPポーションと併用すれば、更に効果は上がり、症状が治まるのだ。
とはいえ一時的なものなので、そろそろ決断をして貰わないと国全体が麻痺しかねない。
1日でアベルがやらかしたので、逆に一週間の猶予期間は国を潰しかねないと判断した。
通告から3日目に公爵の館を訪問した。
一応、先ぶれは出したよ?
先ぶれから1時間以内に着いたのは、仕方がないよね。
公爵家のメイドや執事さん達が慌ただしかったが気にしない。
アベルの件でと言えば、すんなり通してくれた。
それだけ切羽詰まっているんだろうね。
今回は執務室ではなく、応接室に通された。
既にそこで待っていたシュバルツは、私達に座るように勧めた。
「君には、今の王都の状態が分かっているようだね。国を滅ぼしたいのかね?」
怒気を孕んだ問いに、私は薄い笑みを浮かべた。
「いいえ。折角、立ち上げた会社や育成した人材を潰されるのは嫌ですね」
「では、何故あれを放っているんだ!! 王都では王はおろか民にまで呪いが降りかかっている。原因不明の病気が蔓延しているのだぞ。神社とやらで怪しげな薬やお守りを売っているそうではないか」
「怪しげとは心外です。アベルの積年の恨みを晴らせる物など作れるわけないでしょう。精々呪いの緩和をさせ、熱などで落ちた体力を戻させるのがやっとですよ。アーラマンユ教会は、恐れ戦いて門を閉じたようですが。王都の機能が麻痺している状態は、国庫にも大きな影響があるのではありませんか? 私が提案した3つを吞まないならアベルは止まりませんよ。もう時間はありません」
このまま1週間放置すれば、国力は一気に削げ落ちる。
それだけの経済的な打撃を与えてしまう。
「私だけで判断は出来ぬ。ギルド経由で連絡を入れているが、王が倒れてしまっている状態だ」
情報源はそこか。
最高責任者が倒れているとなれば、埒が明かないまま国が亡びるな。
「では、直接王に采配して貰いに行きましょう。貴方が居れば、王城にも入れるでしょう。大丈夫です。王都で配っている呪詛緩和HPポーションと病気平癒のお守りをお持ちすれば、口が利けるくらいには回復すると思いますよ」
生かさず殺さずを攻めているだろうし、アベルの王族への恨みは深いので、どれだけ効果が出るかは不明だが目を覚ますくらいはするだろう。
「今から行って間に合うかどうか」
「私はCremaの会頭ですよ。ちょっと裏技使いますから目隠しして貰います。目隠しを取れば王都ですから。必要な物を用意して下さい。今すぐに」
シュバルツを急かすように荷造りをさせ、アンナにシュバルツの目隠しをして貰う。
王都の自宅の鍵を取出し、見慣れた扉に鍵を差し込みドアを開けた。
「では、参りましょうか」
シュバルツの手を取り、王都の自宅へと招き入れた。
「留美生、あんたは新人達の面倒見る為に残留な」
「は? 何で、私も行きたい!!」
「誰か1人残らんと、状況を伝えられんやん」
「留美生様、お留守番お願いします。リオンも残りますので大丈夫ですよ」
有無は言わせない迫力でアンナが押し切り、問答無用で扉を閉めている。
鍵を拡張空間ホームに仕舞い、目隠しのまま王都の自宅を出たところで目隠しを取った。
「は?」
「では、王城に参りましょうか」
一瞬で王都に着いたことに目をカッと開き絶句しているシュバルツを引きずって、王城へと向かった。
ママチャリで。




