146.提案と最終通告
「あの街の浄化は完了しました。ですが、根本的な問題が解決していません。そもそもの問題は、王家が本来王になる者を無理矢理王位を奪い飼い殺しにした事が発端です。それが、アベル・フォン・ルテゥ・ハルモニア。伯爵家と婚姻させ、ハルモニアの姓を捨てさせ、ミストの姓を名乗らせて公爵の地位を与え飼い殺しにした。死後、王家と反逆に加担した者達の不審死が相次いだからアーラマンユ教にお願いして封印した事で、火に油を注いだ形になりました。封印が解けて、一番最初に被害が出たのがあの街だったのではありませんか? アーラマンユ教会に封印を依頼したが断られたのが真相なのでは?」
留美生曰くのカス封印しか出来ないのだから、アンテッドエンペラーになったアベルを封印することなど不可能だろう。
アーラマンユは尻尾巻いて逃げた。
結果、リサイクルという形で私達に厄介ごとを押し付けたとも考えられる。
「……レン殿の推察通りだ。だから、リサイクルとしてあの街を出した。街の浄化が出来たのなら問題はないのではないか?」
「今は私がアベルを押さえてますが、彼の要望を飲まないとこの国は滅びますよ」
私の言葉にシュバルツの眉間に深い皺が刻まれる。
「どう云う事かね?」
ドスの効いた声音に若干ビビりつつも、アベル神格化計画をプレゼンした。
「1つ、王家がアベルにした事を公開する事。1つ、アベルの荒魂を神として崇めて怒りを鎮めて貰う。全国各地に祀るので、その建設費を王家が負担するか国が負担するかは、そちらで決めて下さい。1つ、元ミスト領跡地に学術都市を建設する。この3つを吞むことでアベルの怒りも収まります。そう、交渉しました」
「リサイクルに出した街をレン殿がどうしようと公爵家は関知しない。だが、神として祀る事や曽祖父の過去を公にすることを王家は了承しないだろう」
シュバルツは、苦虫を噛みつぶしたような顔で3つの条件の内2つを却下してきた。
それも想定内だ。
「それがハルモニア国総意の答えなら、この国は滅びます。アベルはアンテッドエンペラーでレベル1325です。私の4倍以上のレベルです。命がけで交渉して妥協案を提示されました。それを無視するなら、亡ぶしかないでしょう」
アベルに念話で姿を現すように指示を出した。
燕尾服を着た骸骨が現れる。
威圧感が凄い。
契約している私ですら、冷や汗が止まらない。
チラッとアンナ達を見ると青ざめて震えている。
「アベル、好きにしたれ」
<ただし、ビビらす程度にしてや>
念話で一応念を押しておく。
「分かった」
そう言うと、彼はフッと姿を消した。
「私達で出来る事はしましたので、後はそちらでどうするか決めて下さい。急がないと本当に国が滅びますよ」
私は固まっている3人に目配せし席を立ち、一礼して退出しようとしたら止められた。
「ま、待ちたまえ!! それでは契約不履行ではないか」
「誰が彼を祓うと言いましたか? リサイクルに出されても、リサイクル不可と判断した場合はお断りしてますが」
「だが、それでは国が……」
「では、先ほど申し上げた内容を吞めば宜しいのでは?」
「それは無理だとっ」
「なら亡んで下さい」
ニッコリと笑みを浮かべて言い切ると、シュバルツは金魚のように口をパクパクしている。
見てて面白いが、本人にとっては最悪の事態に頭を抱えていることだろう。
「神社建設は公共事業として行えば経済が動きますから、出費があっても行く行くは戻ってきます。王家が事実を公表したくないのなら、紙芝居や演劇、吟遊詩人に話を流させれば良いのではありませんか。暗黙の了解で別の方法で事実を公表すれば良いでしょう。王家の支持率が下がるかどうかは、今の治世の問題だと思いますけど。では、これで失礼します。暫くは宿におりますので考えが変わりましたら、お声をかけて下さい」
話は終わったと礼をして、そそくさと退出した。
館の近くの宿で暫く待機になるので、自由時間を設けることにした。
1週間もあれば、相手は根を上げるだろう。
精々熱が出たり死の淵を彷徨う程度で、死人は出ないだろう。
王家、関連貴族、民の順番で不幸が出ると思われる。
王家の不幸だけで決断してくれると有難いが、一応ダメ押しにCremaの人員を使って噂をばら撒いておくか。
その方が信憑性が増すだろう。
王都の自宅の鍵を使って顔だけ覗いてみる。
「パンジーいる?」
「はぁい、ここに居ますよ~」
部屋を掃除していたのだろうか。
ハタキを持ってひょっこりと現れたパンジーに、Crema社員全員にアベル復活と祟りがあるかも的な噂を流して貰うように言伝た。
「了解しました~。お任せ下さい」
「じゃあ、頼んだ」
「道中お気をつけて~」
ヒラヒラと手を振っているパンジーを見て、私は顔を引っ込め扉を閉めた。
後はどう転ぶか静観するしかない。
アベル無双が炸裂してないと良いな……。




