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社畜OLは、打倒邪神を目指す!  作者: もっけさん
ミスト領
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142.仮契約

 日本の自宅には私と紅唐白(べにとうきよ)しかいない。

 玄関から顔を覗かせたら、アベルが仰向けに倒れていた。

「何やってんねん。早く来いや」

「その扉に弾かれたのだ!」

「私の配下じゃないから弾かれるのか。よし、契約(テイム)すんで」

「はぁぁあ!? 何でお前みたいな小娘に使えなければならんのだ!」

 冗談じゃないと吠えるアベルに、

「だって、そうせんと日本に戻れんねんもん。世界を超えるんやから、それくらい受け入れいや」

「いや…だが、しかし……」

 何か葛藤している。

 硝子だけでも驚いていたし、もっと物珍しい物なら好奇心を揺さぶって、上手く言いくるめることも出来るんじゃないか? と考えた。

 スマートフォンをカメラモードに切り替え、私と無理やりツーショットを撮った。

「何だ今のは!?」

「写真撮っただけやで。ほれ、今の自分の姿見てみ」

 スマートフォンをアベルに見せてみる。

 私とうっすらだがアベルの姿が映っている。

 モバイルプリンターを拡張空間ホームから出して印刷したものを渡したら絶句している。

「鉄の塊が空を音速で飛んだり、自動で開く扉とか色々珍しいもんがあんで。一時的な契約にして、戻ってきたら解除するように誓約したら良いやん?」

「そんな都合の良いことが出来るわけがないだろう」

「アーラマンユならそうかもしれんけど、(うち)んところの神様はその辺り融通利かせてくれると思うで」

 多分だけど、とは言わないでおく。

 私の言葉に1時間くらい悩んで、一時的な契約(テイム)ということで話が付いた。

 復讐よりも好奇心の方が勝ったらしい。

「んじゃ、誓約すんでー」

 天照大御神の名のもとに日本滞在時の行動規制を盛り込んで一時的な契約(テイム)をした。

 サイエスに戻ったら自動で誓約が無効される仕様になっている。

 自宅にアベルを押し込んで、サクッと日本へ戻ってきた。

<変な物を連れ来るでないわ!!>

 耳がキーンッてなるくらいの大音量が頭に響いた。

 根源はヘビ様だ。

「ヘビ様、不意打ちで神託すんの止めて下さいよ。頭がグワングワンして気持ち悪くてリバースします」

<お前が連れてきたのは怨念の塊だぞ>

 私の苦情に少しトーンダウンして、忠告された。

 酒とおつまみの催促しかしないのに、ちょっとだけヘビ様を見直した。 

「アベルは、サイエス版の菅原道真ですよ。人間が神様へ昇華したことが信じられないみたいなので連れてきました。実際に見て貰った方が手っ取り早いかなって」

<そういう問題じゃないだろう!! お前が死んだら供物はどうなる>

「そこは、私の心配をして下さいよ……」

 食い意地張り過ぎだろう、ヘビ様や。

 怨霊でも一応、今は配下になっているし、日本滞在時の行動規制も掛けてあるので、直接死に直結することはないだろう。

「何だこれは! 箱の中に人がいるぞ」

「それはテレビ。箱の中に人は居ないから」

「どういう魔法なのだ!?」

 あっちこっちを触り捲っている。

 霊体だから触れられるはずがないのだが、物を浮かせてボタンを押しまくったりしている。

 念力ポルターガイストは止めてくれ。

 物が壊れたら、私が弁償することになるのだ。

 ただでさえ少ない給与から捻出することになる。

「ちょっ、アベル勝手に触らんといて! ヘビ様、今から菅原道真様へ伺ってお話したい旨伝えてくれん? 勿論、お酒は奮発するから!」

 アベルにこれでも弄っとけと私用のタブレットを渡し、ヘビ様に仲介をお願いしてみた。

<そんな怨霊を聖域に入れられるわけないだろう>

「じゃあ、近くまで行って面会して貰うのってあり?」

<うーん……神域を汚さなければ問題ないとは思うが、会って貰えるかは保証せんぞ>

「了解です! じゃあ、神社の前から声を掛けてみるんで、会って貰えるなら神託下さいって伝言お願いします」

<分かった。その代わり、お神酒とおつまみは給与2ヵ月分で引受けるから怠るなよ>

「……っ、了解しました」

 私の給与2ヵ月分が、ヘビ様のお腹に納まるのか。

 これもアーラマンユのせいだ。

「私の配下やから地球(こっち)の文字は読み書きは出来ると思うけど、対外的に見て霊感が少しでもある人やないとあんたを認識出来んからな。後、ウロチョロすんの禁止。これから、件の神様のところ行くから付いてきて」

「分かった。法螺と分かった時は、死が待っていると思うがいい」

「はいはい」

 面倒臭いなーと思いつつ、紅唐白(べにとうきよ)を抱えて、いざ京都へ。

 行く先は北野天満宮だ。

 境遇的にちょっと似ている2人が意気投合してくれたら、アベルの説得も楽になるかな~と思って連れて行った私が馬鹿だった。

 思っていた以上に意気投合してはっちゃけた2人の暴走を全力で留めることになろうとは、この時は思いもよらなかった。

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