136.リオン初参戦
移動初めて10分も経たずに道を塞ぐようにやって来た魔物。
相変わらず私よりレベルが高いなー。
須佐之男命から貰い鍛え直した刀を取出し、
「大物さんのご登場やで。うちが相手の出方を見るから、後衛は結界魔法展開後に攻撃魔法の準備。リオンは私が合図したら参加な」
鑑定したらイルビージョンズと出てきた。
見た感じ、テラノサウルスっぽい見た目をしている。
鞘から刀を抜き、手始めに一撃加えてみたら、でかい図体をしているくせに俊敏に交わされた。
速度は私の方が上なのに、単調な攻撃だから見切られたのかもしれない。
「うへぇ。こいつ物理耐性・水魔法耐性持ってるやん」
窒息死という戦法は使えないということか。
身体強化を使い、更に速度を上げて死角から首をはねようとしたが失敗に終わった。
滅茶苦茶頑丈だ。
「レン様、大丈夫ですか?」
「問題ないで~。リオン、前に出て相手を攪乱してくれ。攻撃はなし、交わすだけでいい。仕掛けて死んだなんて洒落にならん落ちは要らんからな。水魔法は耐性あるから無効化される可能性大。後衛、火魔法の準備してや!」
「その間、あんたはどうするんだ」
カタカタと刀を振るわせながら、目の前の強者を見ながら上ずった声で問うリオンに、ニヤッと黒い笑みを浮かべて言った。
「正攻法がダメなら裏技使うに決まってるやん」
刀を一旦鞘に戻し、拡張空間ホームから山賊の手を取出した。
契約カルテットが作ったふざけた名前のチートアイテムである。
一見グロいが性能は格別だ。
イルビージョンズの口を無理やりこじ開けさせ大量の劇物(失敗作の薬)を投下。
「リオン下がれ、後衛は口の中目掛けて一斉に魔法攻撃! 私に当てるなよ~」
誤射で当たっても多少怪我する程度で死にはしない。
でも痛いのは嫌なので、出来れば誤射は勘弁してほしい。
大量の劇物でオロロと吐しゃ物が頭の上に振ってきて、思わず避けた。
ファイアボールやアイスボールなどが後ろから襲ってくる。
ヒョイヒョイと避けながら交わしていくが、誤射が1発私の方に向かってきた。
「レン様避けて下さい!!!」
「だりゃーっ!」
山賊の手をバットのように扱いスイングしてアイスボールを打ち、無理やり軌道修正させた。
勿論、イルビージョンズに直撃だ。
「的がデカけりゃ、楽な仕事はないねー」
「いえ、そういう問題ではないかと」
アンナの突っ込みは綺麗に無視して、ビクンッビクンッと痙攣しているイルビージョンズを見ていた。
「失敗作も役に立つな! じゃあ、止めはリオンな」
「俺じゃあ無理だろう。あんたの剣でも弾かれたんだぞ」
「あんた、身体強化も物理強化の魔法も使われへんの? 使えるやろう。やれ。本当ならこれくらいの魔物1匹を1人で倒せないとやってかれへんで」
嘘です。
やっていけないのは私です。
紅唐白と一緒に行動するようになって、以前の私と同じ状況になっている。
以前の私よりも酷いかもしれない。
魔物ホイホイなので、乾いた笑みしか出ない。
「……」
「実戦で生き残るなら、使える手数を増やす方法を習得していくんや。今なら弱っとるし、動きも鈍くなっとる。その剣だと刃こぼれするから、これ使え。帰ったらイスパハンに打ち直しさせたる」
拡張空間ホームから取出したのは、留美生とイスパハンが試し打ちで作った剣である。
彼ら曰く成長する剣を作りたかったようだが、失敗作らしい。
物理+10000/(小)風魔法付与と平凡な剣である。
「魔力を込めたら付与された魔法が発動する仕組みになっとる。試しに魔力込めてみ」
ブブブッと剣が振動している。なんちゃって電動ノコギリじゃん。
刃はギザギザじゃないけど。
「魔物1匹に時間を掛けてる余裕はないねん。ほれ、サクッと首から落としてしまい。いつまでもこの状態を維持できるわけじゃないんやし」
リオンを急かすと、腹を括ったのかやっとやる気を出してくれた。
身体強化・物理強化の魔法を発動させつつ、魔力を込めるのはちょっと意地悪だったかな。
まあ、魔力コントロールは怪しいところはあるけど出来ているので今のところは良しとしよう。
ズシャッとイルビージョンズの首が落ちた。
ドロップ品に変わる前に、心臓や魔石をしっかり回収した。
イルビージョンズの皮や角などがドロップされ、拡張空間ホームに収納する。
「それじゃあ、先に進むで」
休憩する暇を与えることなく、移動を開始する。
数回の戦闘で息絶え絶えになっているリオンを見て、ちょっとやり過ぎたかな? と思いつつ、休憩をこまめに挟んでミスト公爵の単語に辿り着いた。
移動に1週間かかったが、館の方には連絡が入っていたようで、案外これで良かったのかもしれない。




