134.ようこそミスト領へ
公爵領に入る前に検問で止められた。
まあ、巫女装束と浄衣を身に着けた男女60名+αを見たら止めたくなるわな。
「公爵夫人自らの依頼で参りました。こちらが紹介状です」
一応、彼らの上司だから面倒臭いけど矢面に立つかと懐に入れていた書状を見せた。
検分されて、サッと顔が青くなっている。
一体何が書かれているのか気になるところではあるが、下手に口を出したら面倒臭いことが起こりそうなので、お口にチャックをした。
「Cremaのレン様一行ですね。ようこそ、ミスト領へ」
サッと左腕を胸の前に持って来て、ミスト流の敬礼をされた。
「短い間ですがお邪魔します。皆、サクサク検査受けて出口で集合な」
軍隊のように整列する皆に声を掛けると、門番が冷や汗を掻いて断られた。
「身元は公爵様が保証して下さっておりますので、そのままお入り下さい」
ここで断ると角が立つので、
「分かりました。お言葉に甘えて通らせて貰います」
一礼して、検問所を潜る。
戦闘メイド含め総勢60名+αが検問を潜り、無事ミスト領内に入った。
ミスト領に入ったが、まずはミスト領主の館へ顔を出さなければならない。
「取敢えず、ここから二手に分かれるで。アンナは、私とミスト領主の館へ出向くで。留美生は、リサイクルに出された館近くまで行って待機。事前に調査しといて、こっちで話が固まり次第、合流して行動を開始するからな。契約カルテットと白朱も留美生に同行してや。ただし、勝手な行動はとらへんこと! 契約カルテットが暴走したら留美生は給料3ヵ月カットの刑やからな」
「何で私が給料3ヵ月カットされなあかんねん!!」
「契約カルテットと白朱の監視は、お前の管轄やろうが。しっかり監視しとけ」
「じゃあ、イザベラの痛車はお前の管轄やんか! お前は給与3ヵ月カットじゃ」
「んなわけあるか! イザベラには痛車について、この件が終わったら事情聴取した上でどうするか決める」
ただでさえ少ない給与をヘビ様に巻き上げられつつあるのに、全面カットされたら老後の貯蓄が出来なくなるではないか。
それだけは何としてでも避けねば。
留美生の暴走でボーナスカットされているのだ。
これ以上金銭面でカットされたら心がへし折れる。
痛車にした張本人から給与差し押さえか、返済まで給与から何%か天引きしてやる。
「私と2人だけは見栄えが悪いので、10名ほど連れて行きましょう」
確かに2人だけだと、侮られる可能性もあるか。
「うーん、じゃあ下から低レベル10人はレベル上げを並行して移動すんで」
「俺もそっちに行きたい」
留美生が拾ってきたリオンが、自分も加えてくれと直訴してきた。
面倒臭いなぁ。
子供のお守は勘弁なんだけど。
チラッと留美生を見たら、我関せぬという顔をしていた。
「留美生、リオンは最低限の礼儀作法は習得してんの?」
「ん? 礼儀作法と読み書き、算術は完璧に出来てるで」
礼儀作法が完璧なら連れて行っても問題ないか。
「じゃあ、リオンも来てええで。アンナ、リオン含めて10名絞って」
「分かりました」
私が鑑定すれば早いんだが、鑑定するのも面倒臭い。
最低レベルと言っても平均が150台なので皆似たり寄ったりである。
アンナが選抜した9名とリオンを連れてミスト領主の館へ向かった。




