125.何故か人生相談しています
リサイクル品として出された貴族のお屋敷を改装して、貴族版の神社設立することになった。
住み分けは必要だよね!
留美生を筆頭に、イーリンとジャックが補助としてお払いに行っている。
最近、彼らも前衛ヒーラーになりつつあるのが怖い。
マイクロフォンを設置した神薙の衣装に身を包み、祝詞を上げながら踊り狂う姿が異常だ。
なんちゃって神楽舞とか無いわー。
結構有名な心霊スポットらしく、ギャラリーが多かったのだとか。
留美生からの浄化終了のお知らせと、清掃要員を寄越してくれと念話が入り、手の空いている大人子供を送り出した。
貴族が住まう地域に孤児院を建てるのは、ちょっと危ない気がすると思っていたら、孤児院ではなく神社にするするとのこと。
貴族版神社が出来るのなら、それに越したことはない。
住み分けが出来れば、要らぬ諍いも減るだろう。
曰く付き物件や曰く付きの物に対する浄霊の依頼が増えていると留美生に愚痴られた。
それは、仕方がないことだ。
あんな大人数のいる前で、悪霊・怨霊を一発昇天させて見せたのだから、必然的に頼られるのは分かっていたことだろうに。
我が妹ながらツメが甘い。
除霊レベルなら、スラム街に立てた神社の神職でも可能だ。
浄霊レベルになると、イーリンやジャックが駆り出される。
イーリン達でも無理なら、留美生が駆り出されるという。
自分で自分の仕事を増やして阿呆やなと思ったが、口には出さない私は偉い。
言ったらとばっちり食らうもん。
仕事の大半を実務も経験の内と、キャロルとルーシーに丸投げして神社でまったりスカウトしてます。
留美生が見出した神主ベリックが指揮を執り、鑑定に来た人のステータスを細かくメモした和紙を渡している。
勿論口頭で説明はあるが、物的証拠があると良いよねという事で和紙に書き残すことにした。
素養も確認出来るため、銀貨1枚で進路相談に乗るという事もし始めた。
例えば、素養に剣士の卵とあれば剣術を極めることを薦めるとかだ。
勿論そういうパターンは稀なので、その人のステータスを見て伸びしろがありそうな部分を強化した方が良いよ~的なアドバイスをしている。
私が紅唐白を連れて入り浸っているので、大抵私のところに来て相談しにくる。
鑑定で一通り鑑定してから、アドバイスをしている状態。
お忍びで来ている貴族もいるが、態度は変わらない。
紅唐白を膝に乗せて、背中を撫でながら鑑定された紙を渡されて、進路相談を受けている。
「努力次第でステータスが変わるからな。そこは、念頭に入れて聞きや。あんたの場合、知力と魔力が他よりも秀でている。魔導士になるか、付与師になるのがええね。魔法の適正は無属性か。補助魔法に力を入れて勉強するとええで。五行属性やないから、派手なインパクトはない。でも、どの属性とも相性がいいから補助魔法を極めれば引く手あまたになるで。もし、就職で困るようなら私のところで雇ったるから安心して勉強しいや」
「ありがとう御座います!!」
深々と頭を下げる青年は、銀貨1枚を紅唐白の横に置いたお賽銭箱に入れて明るい顔で帰っていった。
「はい次」
「お願いします」
「あんたは~……」
こんな事を続けていると、人生相談までされ始めた。
特に貴族から!
跡を継げない次男以降の男ども、貧乏貴族令嬢からの就職希望者が殺到している。
Cremaで働く職種によっては、上級侍女や騎士よりも給与が高いらしい。
基本給は低いが特別手当が付いてくる上に、しっかりとした休暇や安価で怪我や病気を治せるのがポイントらしく就職希望者が後を絶たない。
一番人気は神主と巫女。二番人気は、スラムの自衛団員。三番人気がCremaでの売り子。
手堅く安定した高収入というのが、貴族階級でも魅力なんだそうな。
どの職種もこれから全国展開するのに、人手はあった方が良い。
採用しても、第一関門の実習という名の地獄のブートキャンプが待っている。
そこで残れなかった人は、無能のレッテルが貼られ解雇となるので皆必死である。
今のところ、誰1人として落ちたことがない。
留美生から神職の素養がある者を回せと言われているし、アンナからは商人の素養がある者を採用して欲しいと言われるし。
折角、人に仕事を擦りつけ……ではなく、任せられるようになったのに、こうも忙しいのかと紅唐白を撫でながら、今日も今日とて人生相談に勤しんでいた。




