124.自動車免許証は必須だよね
運転免許証を取得するため、取得可能な人は全員参加を決めたが、一気に行うのは危険と判断して3班に分けて行うこととした。
1班は、ヘレン・ニック・レナ・ハンス・アンナ。
2班は、ジョン・マリー・イスパハン・私。
3班は。ボブ・キャロル・ルーシー・留美生。
順番に交代で合宿に行って貰い免許取得することが、新年初の課題である。
無事免許取得出来た者には、毎月特別手当が加算される。
資格取得の補助として、免許取得に必要な費用は全て会社の経費で落ちるようにした。
「じゃあ、アンナの班から行って貰おうかな。全員大型免許取得目指すで!」
合宿16日で真面目にしていれば取得出来るので、サクッとアンナ班を送り出した。
食事も寝床も付いて1人16万円なら安いものである。
サイエスの時間で換算したら約3日で取得となる。
「アンナ班が終わったら、留美生班が行って貰うしな。最後は私の班や」
「まあ、ええけど。全員に運転免許証を取得させても意味なくね?」
誰か1人、2人取得でええやんと返された。
「チッチッチ! 全員車の免許が取れれば、車買えるやん。そしたら、大勢での移動も可能になるやん。これ、結構重要やで? 移動が楽になるし、運転疲れしたら交代も出来るしな」
指を横に振りながら、ドヤ顔で答えたら蛆虫を見るような目で見られた。
解せぬ。
「言いたいことは分かった。要は、大移動出来るように楽したいんやな」
私の言葉を簡潔に留美生がまとめてくれた。
大体合っているけど、ちょっと違うことは言わないでおく。
「サイエスと地球の行き来は、パンジーがスペアキーを持ってるからパンジーに開けて貰って」
「分かりました。準備が出来次第、出発します」
「頼むわ。何かあったら、携帯に電話して。留美生は、今日どうすんの? お守りも結構順調に売り上げてるんやろ?」
神社は盛大に賑わっている。
治癒院も兼ねているから仕方がないが、それ以上に鑑定を安くしてくれるので自分の素養を知りたい者が押し寄せているらしい。
お守りの効果も噂を呼んでいるのか、遠方から来る人も多いのだとか。
毎日完売らしく、近隣の宿は満員御礼とウハウハしているらしい。
「まあな。付与師が育ってきてるから、量産も可能やけど求める人が多すぎて追いつかへん状態やな」
今、神社があるのは王都だけ。
王都が賑わうのは悪いことではないが、集中しすぎるのも困りものである。
「その問題については、ハルモニア王国全土に神社建て捲って解消するしかないな。各領の主都に神社を建てればええんとちゃう?」
「ご神体に天罰下され取る貴族の領には置かん方向で進めた方が良くないか?」
「せやね。罰当たりな事をした領主として、領民から恨み買えば面白いな」
お守り完売も軽減されるだろう。
「今日は、キヨちゃん連れて神社を視察するわ。留美生はどうするん?」
「リオン達連れて不用品回収や」
不用品という名のお宝を回収しまくっている。
若手の細工師や鍛冶師の卵に、アレンジを加えて売りに出している。
全ての品にCremaの文字を入れている。
流石に留美生印は入れる事は出来ないが。
それでも元が良いものなので、結構な値段で売買されている。
見習い諸君には、衣食住+給与が与えられている。
見習いなので普通の人よりは安いが、散財しなければ貯蓄できるくらいの額は渡している。
将来独り立ちするもよし、Cremaの正規従業員になるも良し。
それは、本人に任せている。
「問題が起きそうなら念話してや」
「了解」
朝食後、紅唐白を肩に乗せながら神社へと移動。
何度浮遊してと言っても聞いてくれず、抱っこしないと分かった途端、首に纏わりつくように体をくっつけて両肩でバランスを取りながら居座った。
引きはがすのも面倒臭くなったので、そのまま放置している。
バランスを取りながら、のっそりと歩きながら神社に向かうと留美生が見出した神主が出迎えてくれた。
「レン様、お早う御座います! 紅唐白様もお早う御座います」
「お早う。そんな飛んで来んでも大丈夫やで」
キュ~と気の抜けた鳴き声をBGMにしながら、社務所へと寄った。
別嬪な巫女さんが勢ぞろいして挨拶をしてくれた。
「「「お早う御座います」」」
「お早うさん。今日も頑張ってや」
「「「「はい!」」」」
「キュウ!」
何か違う声が混じってたが気にし……ない!
神社の寄り合い室で、ボーッと紅唐白と日向ぼっこをしている。
と言うのは、嘘です。
来る人来る人を鑑定して、Cremaにスカウトしようとしています。
参拝客6割は、本当にすがりに来てる人。2割は、興味半分。2割が、叩き出される人である。
紅唐白の存在も珍しく、有難がり拝む人もいるが気にしない。
しかし、珍しいだけあって買おうとしたり、奪おうとする輩もいた。
今、まさに絶賛絡まれ中です。
「このワシが、その珍しい生き物を買ってやろうと言っておるのだ! さっさと寄越せ」
身なりはそれなりに良いが、物凄く横柄かつ高圧的な態度で紅唐白を奪おうとしてきた。
紅唐白は危機を察知し、私の服の中に潜り込んだ。
襟が伸びてしまった。
新しい服に買い替えだな。
取敢えず、目の前の糞爺を何とかせねばなるまい。
「は? 何罰当たりなこと言ってんだよ、テメーは。キヨちゃんは、私の子なの。神様の使徒なの。大体買うって何? 物じゃねーし。これ以上不敬を働くなら天罰落とすぞ」
警告はしたが、そんなもので諦めるような輩ではなかった。
「良いから寄越せ! 下賤な輩が、ワシに指図して良いと思っているのか!」
「思ってますけど? ここは、神聖な場所なんで身分とか関係なく悪漢には天罰下されますよ」
「ワシは貴族だぞ!」
「だから? 王族だろうと、貴族だろうとこの場では何の役にも立ちませんけど。それに、神社に関しては陛下も平等ですよと祝賀会の時にお伝えしてますし。陛下は、それを受け入れてくれてます。その上で傍若無人な振舞いをするんですか?」
ハッと鼻で嗤ったら、杖を振り上げられた。
その時、ビシャーンッと雷が糞爺の上に落ちた。
死んではいないが、瀕死の状態である。
「キヨちゃん、まだ落として良いとは言ってないぞ」
「キュー!!」
怒り心頭と言わんばかりに首元から顔を覗かせて威嚇している紅唐白。
可愛いんだけど、やることが過激すぎる。
「そこのお連れの人、早くこの人どっかにやって。キヨちゃんが、興奮してこの人の関係者全員に手当たり次第天罰落とすで」
武士の情けとばかりに、ポーション(劣)を振りかけておいた。
これで死ぬことはないだろう。
ヒィィィイーと悲鳴を上げながら、糞爺を担いで去るお貴族様(笑)にpgrしてたら、拍手喝采が起こった。
どーもどーもと、片手を上げる。
紅唐白も良い仕事をしてくれたと思っていたら、留美生から念話が入った。
『姉ぇ、孤児院の回収で幽霊物件タダで貰えるって!!』
『マジか!?』
『うん、屋敷ごと処分したいって。処分後は屋敷は孤児院の所有物になるから契約交わして良えか?』
『良えで! でも屋敷を綺麗にするんはアンタ等でしや!』
『大人貸してなw』
『はいはい』
孤児院でリサイクル品集めてるって聞いていたけど、事故物件をリサイクルに出す輩が居るとは思わなかったよ。
後から返品要求してくる輩が出ないとも限らないので、その辺りはしっかり念書を書かせている。
事故物件を片っ端から買い取るのも良いかもしれない。
拠点は多い方が良いもんね!
私は紅唐白と暫く神社でまったりしつつ、時々天罰という名の雷を落として良さげな物件に声を掛け捲り、雇用契約を結んでいた。




