114.ルミナがまた何かやらかしました
三が日が過ぎて、仕事始めの日がやってきた。そう1月4日だ。
こぞって福袋を出す会社が多いが、私のところはしない。
大体福袋って昨年の余りものの詰め合わせじゃん。
所謂、在庫処分の名目を福袋と胡麻化しているだけである。
それを買っちゃう人は、貧乏性なんだよ。
まあ、その気持ちは分からなくもないが。
私も福袋をついつい買っちゃう人の部類に入るしね。
アンナに至っては、福袋に興味津々でネット予約してました。
コスメ・アクセサリー・アパレルとジャンルは色々あった。
大半がブランド品の福袋だったのが、アンナたる所以か。
使わなければニャルカリで出品すれば良いだけだしね。
自分の好みじゃなくても、誰か1人くらい好みが合う人がいるかもしれないし。
拡張空間ホームの個人フォルダー内も色々細かくフォルダー分けしている。
留美生みたいに適当に放り込んでいるわけではない。
社長やのに、スーツではなくカンガルーポケットの付いたラフ過ぎる格好で新年の挨拶をすることになるとは思わなかったYO。
「今年も1年、無病息災で元気よくガッツリ働くで! 自分やったらどんな接客なら購入したいと思うか考えて行動してや。数字が全てやないけど、売れたら売れた分だけ自分の給与に反映するさかいガッツリ稼いで仕事を楽しもうや。新年の挨拶は以上です」
ヒーヒーフーと呼吸をしながら上段から降りる。
「社長のお言葉通り、皆で楽しく稼ぎましょう。福袋こそありませんが、年末年始お休みだったので開店を心待ちにされているお客様もいらっしゃるでしょう。忙しい日々が続くと思いますが、それも一過性のことなので暫く頑張って下さい」
私の挨拶に引き継ぎ、アンナが社員に発破をかけている。
社員目が、私のお腹にいっているのが非常に気になる。
多分懐妊したと思われているんだろうなー。
35歳で処女なので賢者確定してるし、このまま40歳過ぎたら大賢者になれるんじゃね?
なんて阿呆なことをつらつら考えながら、祝賀会に出席して、大いに賑わった後、社員たちは目まぐるしい勢いで開店準備をしていた。
私は、裏口の階段を3階まで上り、そこからサイエスの自宅へと戻ったのだった。
サイエスでは、丁度クリスマスの時期だった。
日本で結構過ごしていたのに、この時差。
本当面倒臭いね。
「クリスマスコフレも順調に売れてるし、やっぱりクリスマス会はしたいな!!」
と留美生が、また面倒臭いことを言い出した。
クリスマスコフレでお腹がいっぱいなんだけど。
それにそんな事したら、アーラマンユ教が何を言ってくるか分からないじゃないか。
自衛出来るよう護身術を三馬鹿に指導して貰っているが、指導したばかりで素人同然の人達を盾に取られたら、それこそ面倒な事になる。
「姉ぇークリスマス会しよ! 孤児院の子供もイベントがあったら楽しいやろ? 従業員だって喜ぶで!?」
その提案事態は良いが、いかせん金がかかる。
つい先日、会社の金を着服した奴がのたまうことじゃない。
「そんな金あるかっ!!」
半眼で睨みつけながら却下したら、
「でもクリスマスコフレ売れたんやろ?だったら労いで忘年会兼クリスマスで合同でパーティしても良えやん!! イルミネーションもやってCremaの力を見せる時や! 通行人にもお裾分けでチラシ付きチョコを配れば一石二鳥やで?」
と食い気味で食いつかれた。
カンガルーポケットにいる卵ちゃんの存在だけで、今の私は無気力なのだよ。
ガシガシ生気吸い取られているからね。
Cremaの宣伝になるって力説され、私よりアンナが釣れた。
「留美生さん、それ良いアイディアですよ。クリスマスコフレも完売しましたし、今後の期待を膨らませる為に大々的にイベントをしましょう!」
アンナの目がお銭々になっている!
「炊き出ししたばっかりやん! 別にそんなに頻繁に宣伝せんでも良えんとちゃう?」
これ以上イベントは要らないと嫌々と抵抗したが、
「炊き出しは慈善事業! イベントは社運を賭けた事業ですよレン様。ということで、予算を出しておきますね」
と、一刀両断し勝手に企画を承諾し留美生にGOサインを出している。
「うち…社長やのに……」
と呟いてみたが、誰も聞いてくれなかった。
クリスマス準備は従業員と孤児院の子供達総動員して、飾り付けをした。
大きな樅ノ木を森から採ってきて、イキイキとデコっている留美生が憎い。
イルミネーションライトの動力は、雷の魔石(極小)を使っている。
魔力を補充すれば光り続けてくれるので省エネかつエコである。
終わったら、そのまま拡張空間ホームに収納しておけば来年も使えるだろう。
デコる必要もなくなるし、準備も楽になる……と思いたい。
と思ったら、オーメントは参加者に配るようだ。
オーメントは、留美生印の金貨だ。
勿論、偽物です!
本物だったら、毟り取られているところだよ。
太陽がモチーフの愛くるしいデザインに、小回復の付与が付いている。
イベント参加には1人銅貨5枚(500円相当)が必要になる。
一般参加も認めているため、結構な人数が来るだろうと予想し、樅ノ木はデコデコしく金貨が主張されたクリスマスツリーになった。
社員用のプレゼントや孤児達のプレゼントを購入したりと、クリスマス当日まで慌ただしかった。
私はお金を出し、指示をするだけに徹した。
卵が中型犬くらいの大きさになったので、抱っこ紐を買いました。
ママゾンの特急便で買ったら、2時間後にパンジーが届けてくれた。
それを使って背負ってます。
ほんのり暖かいんだよね。
でも、私の生気をガンガン吸うので常時立っていられず、車椅子生活ですよ。
クリスマス当日、留美生がクリスマス参加チケットを見せながら最終確認している。
「皆、よう頑張った!クリスマスのチケットは持ったか!? これが無いとクリスマスパーティに参加出来へんから注意してな」
「今からCremaでクリスマスパーティやから楽しむんやで!」
「あの?クリスマスって何ですか?」
孤児の一人が質問してきた。
留美生、そんなことも説明せんと手伝わせてたんかと頭が痛くなった。
「クリスマスは家族、恋人、友人達で美味しい物を食べてプレゼント交換する日やで!」
いや、その説明は間違ってないけど違うぞ。
イエス・キリストの誕生日だと教えなかったのは、わざとなんだろうか?
「へぇ、そんな日があったとは知らなかった」
留美生が下僕2号にしたリオン君の冷たい目が何気に冷たいのは気のせいか?
「サンタは実在人物やで! 語ると長くなるけど聞くか?」
逆切れしながら切り返している留美生をどうでも良いと切り捨て、リオンはCremaのパーティ会場へ早く連れて行けとばかりに彼女の背中を押しいた。
私を含め、社員や孤児で飲んで歌ってクリスマスパーティを皆で楽しんだ。
勿論、お金払ってパーティに参加している人もいるけどな!
外では三馬鹿が三勤交代でチョコ&チラシを配っている。
本当にお疲れ様です。
飲み食いして楽しんでいたら事件は向こうからやって来た!
「おーい、酒がねーぞっ!! 酒! 酒を出せぇ!!」
酒気を帯びたおっさんが酒を出せと喚いている。
「大体なぁ~何が美容だ! コスメだ! そんな物を高値で売るんじゃねぇーーー!!」
インテリアで飾っていた像をガンガンと蹴りまくっていた。
天照大御神の石像である。
私はアンナに目配せし不埒者のところへ行ってもらった。
そして、思いっきり腹を回し蹴りして吹っ飛ばしている。
ちゃんと誰もいないところを狙っている辺り、戦闘に慣れてきた証拠かな。
よくやったアンナ、グッジョブだと親指を立てて見せた。
「アーラマンユの教会の者が此処に来て暴れるんじゃないわよ!」
パーではなく、グーで酔っ払いのおっさんの顔をボッコボコに殴るアンナ。
一体誰の影響を受けてこんなに狂暴になってしまったんだい。
いつも上品に澄ましている姿がないYO!!
「異教徒……ゲフっ……ゆ…ガっ……」
言葉を発すると同時に殴る殴る。留まることを知らないアンナの拳。
毒舌と情報操作で破滅&退路を断つやり方を取るのに、物理攻撃になっているのは何で?
「お布施! お布施! お布施ってうっせーんだよ! お布施を払って1割でも私に還元してくれましたぁ? 無いですよね! ポケットないないするんですよね! お銭々を奪うだけで施しも碌にしない屑宗教なんざ廃れてしまえ!」
これが本音なのね。
お金大好きアンナの本音は、アーラマンユ死ねなのね。
凄い恨み節にドン引きしたわ。
「ジョン、こいつ捨ててきて下さい。」
失神したおっさんの首を掴んでジョンに引き渡している。
ジョンは、指示通りにズリズリとおっさんの首を引っ張って、パーティ会場からポイ捨てしたようだ。
後に酔っ払いのおっさんは身包み剥がれていたらしい、ざまぁw
おっさんがいなくなってパーティは盛り上がりを見せ終了した。
後にアーラマンユ教が必死になって対抗しようとしてくるのだが、返り討ちに合うという結末が待っているのであった。




