105.ヘビ様は俗物的なのがお好き?
上級スクロールを手に入れるだけで、こんなに苦労するとは思わなかったYO!
王都に戻る前に、一度自宅に戻ってヘビ様の社をお掃除しないと。
暫く放置に近い状態だったからなぁ。
お社を管理する人を残さず全員サイエスに行かせたのは間違いだったかも。
自宅に帰ると、耳がキーンッと鳴り頭がガンガン痛くなった。
『毎日、お供え物を献上する約束を反語するとはどういうことだ!!』
ヘビ様ご立腹のご様子。
頭に直接響くから滅茶苦茶気持ち悪いし痛いんですけど!!
「すみません。忘れてたわけじゃないんです! サイエスとこっちの時間軸が違うので、どうしてもお供えが出来ない時も出てしまったんです」
苦しいが言い訳をしながら、這う這うの体でソファーに座る。
『むっ……しかし、約束を破ったことには変わらんぞ』
天照大御神がバックに付いているから、強く出れないんだと思うけど、文句タラタラ言ってくる。
今回は私の落ち度だしね。
素直に謝った。
「本当に申し訳ございませんでした! 私のお給料の範囲で供物を用意するので、今回はそれに免じて許して下さいぃ」
私の半泣きになりながら言ったら、頭痛が無くなった。
『社の掃除もだぞ』
「心得てます」
箒と塵取り、雑巾と水を張ったバケツを持って屋上へ行き、隅々まで掃除した。
この糞寒い青空の下、ヘビ様監修のもと延々と掃除。
風邪引かないと良いな……。
掃除に取り掛かって3時間。
やっと、ヘビ様の満足いく掃除が出来たようだ。
『次は供物じゃ!』
「コンビニにある物なら直ぐに用意できますけど」
『それじゃあ、意味がないじゃろう。ぱそこんでお取り寄せランキングの通販があるじゃろう。それが良い』
「……」
俗物化してないか、このヘビ様。
呆れて言葉を失ってしまったよ。
確かに5階に設置されている神棚にお供えしているのは、通販で購入したご当地の地酒やおつまみプレミアムな缶詰だったりするけどさ。
何でそんな事を知っているんだ。
まさか、ずっと見ていたとか?
のぞき見されたような複雑な気分だ。
「時間かかりますけど良いですか?」
『まあ、仕方なかろう。ぱそこんでラティエンの酒造ランキングを見せるのじゃ』
ラティエン? そんなサイトあったっけ?
「ラティエンって何ですか?」
『楽しい天国のサイトじゃ』
あー……なるほど。ヘビ様は、中国語に嵌っているんだろうか?
「ちょっと待って下さいね」
ノートパソコンをリビングのテレビに繋いで、ラティエンのサイトを見せる。
酒造ランキングを検索し表示させると、ヘビ様のテンションが上がっている。
『どれも旨そうじゃのう。1位~10位までは欲しい。プレミアムな缶詰も良いが、違うものも食べてみたい』
評価が高いもの順に並べ替えし、上位10位までを無言でカートに入れる。
つまみで検索をかけて見せたら、さらにテンションが上がって奇声を上げていた。
神使が、これで良いのか?
凄く残念な感じなんだが。
「どれにします?」
『上からしたまで全部じゃ』
「いや、現実的に無理ですから! 私の給料手取り20万円くらいなんで、その中で収めて下さいよ」
『会社も順調に儲かっておるくせに、ケチケチしおって』
ケチとかそういう問題じゃないし!
確かに儲かっているけど、その分出費も多いし、人件費も馬鹿にならないんだよ。
私や留美生に残業代付けたら、月に数百万単位になる。
でも、そんな事したらお金の有難みを忘れてしまいそうだから、役職手当だけにしているのに。
まあ、留美生の残業代払うくらいなら他に回したいのが本音だけどさ。
「ケチで良いんです。社長が会社を私物化したらアウトでしょう! 20万円もあれば、ちょっとした贅沢も出来るくらい1ヵ月は余裕に暮らせますから。高給取りじゃないんで、勘弁して下さい」
『おぬし、他の者には大金を払っているくせに自分は安月給とは。……まあ無理は言わんことにしておこう。つまみじゃが、これとそれとあれが欲しい。後、そのセットもな』
言われるままにカートに入れたら約20万円になりました。
本当、ギリギリのところを狙ってくるところが憎い。
注文した荷物が届くまでの間、ヘビ様の相手をしながら基礎化粧品セットの量産と上級ポーションの量産をして時間を潰した。
こんな時くらいダラダラ過ごしても良いと思うんだが、ヘビ様が覗き見していると思うと出来ないんだよね。
ある意味、最強の監視カメラが付いた感じがする。
届く期間もまちまちで、結局2週間ほど日本で化粧品やら作って過ごしていた。
サイエスで留美生達が、スラム街の子供たちを根こそぎスカウトしているとは思ってもみなかった。




