101.ハエに集られました
基礎化粧品のレシピを売りに王都を出ようとしたところで、後ろから声を掛けられた。
振り向くと会いたくない奴らに会ってしまった。
「ルミナ! やっと会えたな!! レンに話はしてくれたのか?」
厳つい鎧を着た小汚いおっさんに、躊躇なく顔を顰める。
留美生が言っていたチームバルドの誰だっけ?
ガルパ? バカガ?……これは、私の心の声か。
名前なんて覚える気がないので、すっかり忘れてしまったわ。
「人違いです」
しれっとした顔で言うと食い下がられた。
「そんなはずないだろう!」
本当に人違いなんだけどなぁ。
だって、私は留美生じゃないもん。
「留美生じゃありませんので人違いです」
「レンか! 相変わらず似てるな」
間違いを謝罪することなく、話を続けようとしているおっさんに殺意が沸いた。
殺気に気付いたのか、
「……悪い」
と謝った。
「パーティーの勧誘はお断りします。後、化粧品や武器などは一切販売しません。買いたいなら商業ギルドで基礎化粧品セット売ってますので、そちらで購入して下さい」
言われる前に言ってやった。
しかし、それで諦める輩ではなかった。
「そう言うわないでよ。私と貴女の仲じゃないか。ルミナは、同じ釜の飯を食った仲だし。常時じゃなくて良いから、時々私達とパーティー組みましょうよ。こう見えてもAランクパーティーだし、実入りも悪くないわよ」
ニコニコと笑いながら上から目線で勧誘してくるのは、確かリリアナと言ったか。
「そうですよ。こう見えても私達強いんです! レン様とルミナ様が前衛に加わって下されば、ダンジョンの最深部の攻略も可能になります」
胸元で両手を組みながら上目遣いに見上げてくる女は、聖魔導士のテレサだったかな?
屈みながら上目遣いって、馬鹿じゃねーの。
「後、基礎化粧品セットが欲しいわ。前回に購入してから、どこに行っても手に入らなくてさ。もう切れて無くなったんだよね。手持ちがあるなら譲ってくれない?」
タダで貰えるを前提とした言い方をしているのは、剣士フィーア。
思い出してきた。前回も散々たかってきた奴らだ。
しかも、こちらの意思は丸っと無視して自分の都合だけ押し付けてくる。
私の大嫌いな人種だ。
「聞こえてなかったんですか? 貴女方のパーティーに入りません。入るメリットがありません。単身でゴブリン1万匹倒してから勧誘して下さい。後、何故無償で基礎化粧品セットを渡さなければならないんですか? 購入出来なかったのは残念でしょうが、私には関係ありませんよね。貴女の運が悪かっただけでしょう。商品は全て商業ギルドに下ろすことになってますので、勝手は出来ないんですよ。商業ギルドで売れないものは、露天で売ることもありますけど。誰かを優遇することは絶対しません」
ノンブレスで一気に言い切った。はぁー、スッとしたわ。
「浅からぬ縁じゃないか。少しくらい融通を聞かせてくれても罰は当たらないんじゃないか?」
あからさまに不機嫌になったリリアナが、文句を言ってきた。
「縁も何も、赤の他人でしょう。ただの顔見知りであって、それ以上ではない。もっと言えば、私やルミナに集るハエですね」
ハイエナと例えたかったが、この世界に存在してないだろうと思いハエにした。
顔を真っ赤にして漸く黙った。
「レン様、そんなつもりで言ったわけでは……」
テレサが間に入って仲を取り持とうとするが、すかさず一刀両断した。
「じゃあ、どんなつもりで言ったの? あんたら、私達の力や商品しか見てないでしょう? そんな人と付き合うと思うわけ? いくら性能の良い武器やアイテムを所持しても使いこなせるとは限らないんだよ。私はSランクでパーティー組んでいるから、格下のAランカーとパーティー組む気はない。二度と声を掛けるな」
「……っ! その様な発言は慎んで下さい。いつか、アーラマンユ様の怒りを買いますよ!」
アーラマンユって何よ? それが、この世界の神様ってやつなのか?
ちょっと興味は出たけど、テレサに聞く気はない。
下手に情報を引き出そうとしたらクレクレされるから、ワウルを使って調べて貰おう。
「ふーん、だから?」
「だからって、貴女ね! 創世神アーラマンユ様を侮辱したことを教会に報告させて頂きます!!」
フンガーッて鼻息を荒くしながらフジコるテレサに、ハイハイワロスワロスと聞き流した。
後に教会がちょっかいを掛けてくることになり、私の逆鱗に触れ新信仰(天照大御神)を立ち上げ布教しまくり対立することになる。
102話でやっと、サイエスの神様の名前が出せました( ;∀;)
長かった。
しかも、キャラが思っている方向に進んでくれない……。
最後までお付き合い頂けると幸いです。
これからも頑張って書くので応援よろしくお願いします。




