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つながれて三日が過ぎた。タモツの話ではあと二日で祭りの日が来るという。盆を持ってくるのは木村、タモツのほか、体格のいい男や年嵩の女の時もあった。もちろん面をつけているので顔はわからない。私に話しかけることもなく淡々と盆を運び、排泄の始末をし、空になった盆を持って帰る。
あれから木村も言葉をかけてくれることはなくなった。
唯一の頼みの綱はタモツだけだ。
タモツは非常に同情的だった。私の身の上話――幼い時に両親に死に別れ天涯孤独の人生――を聞き、結婚どころかまだ恋人もできないうちにこんな状況に置かれていることを私自身よりも嘆き悲しんでくれた。
逃がしてくれないか何度も頼もうとしたが、そのせいで警戒されチャンスを失ってしまうかもしれないと考えるとうかつに口に出せない。
どうにかして彼のほうから逃亡させてくれる気になってくれるといいのだが。
きょう教えてくれたタモツの情報では祭りは夜中に行うらしい。
松明を持った鬼の行列が生贄の入った籠を担いで山の祠まで運ぶのだそうだ。主要な鬼以外は立ち入りできないが、タモツは子供の頃から隠れて見ていたらしい。
祠の前には大きく平たい岩があり、生贄はそこでまず首を切られ血抜きをされる。樽に溜められた血はおにがみ様の供え物で、残った肉体は内臓と骨を除き、村人たちで均等に分けるのだという。肉はほんの少しずつだが、それをいただくと無病息災で村はいつまでも栄えるというわけだ。
内臓や骨も乾燥させ粉にして薬にする。それは村の共有物として大切に保管される。生贄になった人へ畏敬の念を込めて無駄にするものは何一つないという。
「ぼく本当はいやなんだよ。広尾さんが生贄になるの。この村のやってることは間違ってると思う。でも、ぼくみたいなやつがとやかく言ったって代々伝えられてきたこと変えられるわけない。あきらめるしかないよ」
そう言うとタモツは面をかぶった。
微かな希望の光は消えてしまった。




