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昔々、この辺り一帯で飢饉が起こり、村も壊滅の危機にさらされた。
村人たちはみな信心深く、一生懸命神仏に祈願するも願いは届かず、まったく救われない。
神や仏がだめなら鬼にすがろうではないか。
村の山には偉い坊様に封じ込められた岩屋の鬼の伝説があった。村長をはじめ、村人たちはその鬼に祈ろうと決意したのだ。
だが、その山には今まで誰も入ったことがない。危険を承知で長のみが入山した。
一晩過ごしたのち、村に戻ってきた長はえらくやつれていたが、おにがみ様のお告げを皆に伝えた。
「人の血を我に捧げよ」
村人たちは誰が贄になるのかと怯えたが、長は他所の村人を贄にするという。これすべておにがみ様のお告げなのだと力強く言い放った。
長と十数人の選ばれた男たちはおにがみ様のしもべとなるべく鬼の面を作り、鬼となって隣村との境の山中で人の来るのを待った。
どこの村も食糧難、食べられる木の根や草を探しに隣村の女が山に来た。
鬼たちは女を捕らえて岩屋の前に差し出した。
おにがみ様はたいそう喜び、女の体を八つ裂きにしてその血を浴びうまそうに飲み干したという。
満足したおにがみ様は肉を村人たちに分け与えてくれた。
それが鬼を崇めたことへの見返りだった。
その後も山中に入ってくる隣村の人間をおにがみ様に捧げ続け、やがて山を恐れ人が来なくなると直接足を伸ばし遂に隣村を根絶やしにしてしまった。
そしてこの村は生き延びた。
村人たちは岩屋の前に祠を立て、おにがみ様に深く感謝した。
そして感謝を忘れ祟られないようにするために、年に一度祭りを行い崇め奉る約束をした。たとえそれが豊作の年であっても。
村人たちはごく普通の人間だったが、自分たちがおぞましく恐ろしい行為をしているとは考えなかった。なぜなら、それを行っているのは鬼だからである。




