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ハイキングコースに毛の生えたような山登りが趣味だった。上級者になるつもりはなく、仕事に明け暮れる毎日のストレス解消程度に楽しめたらそれでよかった。
そんな軽い登山のイベントに、いつものようにひとりで参加した。
上級者にならずとも歩き続けていれば自然と健脚になる。のんびり歩いているつもりが、他の参加者よりもずいぶん早くゴールに着いた。
木村とはそこで会った。
あいつは頂上から見える町並みを眺め、汗を拭いていた。
私が着くと振り返った。
「おっ、早いですね」
少し訛りを含んでいる。牧歌的で悪くない人だとその笑顔が表していた。
「そちらこそ」
隣に並んで汗を拭いた。
お互い名乗り合った後、据え付けの丸太でできたベンチに腰掛けた。
「広尾さんは初めてですか?」
彼の質問に私は首を縦に振りつつ、
「この山はね。でも登山は何度も参加してますよ」
と返事して、リュックの中から小さなペットボトルの茶を二本取り出した。
「それでは今度は中級者向けの山に挑戦ですか?」
「いえいえ。このくらいの山で十分です。極めるつもりありませんから。木村さんは?」
一本差し出すと木村は嬉しそうに頭を下げた。
「僕、こういうイベントの参加は初めてなんですよ。でも実家が結構な山ん中で、子供ん頃は走り回ってました。
こっち来てから運動不足になったんで参加したんです」
「ああ、だから脚がお強いんですね」
二人が話している間に参加者たちがどんどんゴールしてくる。
「そうだっ。今度の夏休み、実家に帰るんですけど、一緒に山登りしませんか。僕んちに泊まってください」
「いやあ、きつい山はちょっと」
「ははは、全然きつくないですよ。この山よりも低いくらいです。ただきちんとした道がないというか、足場探しながら登るんです。かといって危険はないですよ。熊や猪は出ませんし」
「へえ、面白そうですね。でもほんとですか? 動物が出ないって」
「僕の村には動物避けのお守りがあるんですよ。だから大丈夫」
にこにことした気持ちの良い笑顔にほだされて、木村と約束を交わしてしまった。




