10-2
♢♢♢10-2
地面に散乱した血飛沫が、地面へと吸い込まれていく。続いて死体も、沼地かと勘違いするように地面へと沈んでいった。
「生贄は捧げられた。さあ、破壊神の復活だ」
教皇メルドラードが両手を上げる。それが合図となって、魔術師の古代語による詠唱が始まる。
地面が光り出し、何かが出現してきた。それは、徐々に露わになると、巨大な手であることがわかる。続いて、一対のツノが現れ頭部が見えてきた。デカい。これは想像以上にデカい。危険を察知した者たちが次々と非難する。全貌が露わになると、頭部は天井にあたり、天井の石材が崩れ落ちてくる。
「素晴らしい。実に素晴らしい」
メルドラードが狂気に満ちた顔で叫ぶ。部下の一人がメルドラードに近かより、
「メルドラード様、ここは危険です。非難致しましょう」
部下の説得も聞かず、メルドラードはただただ狂気に満ちた顔で、感泣に咽せていた。
この頃になると、能力のある者たち、あるいは神、天使にも、異変を感じ取れるものが多くなっていた。彼らは空を見て、異変の正体を知ろうとするが、それがわからず、わからないからこそ不安が一層大きくなっていった。
晴人はマリンと一緒に人狼族たちのところへ転移した。そこでは、すでに人狼族たちは湖面の向こう、ユーピア聖教国の方を見ていた。ここからでも建物の一部が崩壊してる様子がわかる。そして、内側から何か巨大な物が、出現してくるのがわかる。その巨大さは建物から比較して相当なものであると想像し、みんなの心にふつふつと恐怖の感情が沸き起こる。それがやがて姿を表すと、一対のツノを持った、鬼ような姿の巨人であった。
それを見た者たちに恐怖を含んだ声が出始めた。その空気を読んでハクウンがみんなを叱咤する。
「狼狽えるな。俺たちは人狼族だ」
ただそれだけの鼓舞で、皆の恐怖が吹き飛び士気が上がった。俺はそれを見て、ハクウンが、始めてあった時の荒々しいだけの若者から、みんなを率いる力を持った若者に成長していると感じ、彼ならいずれは父のような立派な人狼族の長になるだろうと、親のような気持ちで見ていた。
後方に気配を感じ振り向くと、ライナスリーク率いる魔族、マクラ率いる魔族、ラスタ率いる魔族、と続々現れた。
俺は可及的速やかに、事情を説明し、全ての魔族を配置して、いつでも打って出れるよう、
「ライナスリークよお前は、全ての魔族を率いて、防御に当たれ。良いな」
「御意」
「マクラ、ラスタ。お前ら二人は俺に続いて、いつでも打って出れる準備をしておけ」
「わかったのじゃ」
「仰せのままに」
俺は二人を選んだのは、上に立つ魔王としての存在を、魔族たちに知ってもらいたいからである。マクラは自分が魔王としての自信がないと思っている。それなら、ここでその自信をつけさせようと考えた。ラスタは魔王ですらない。当然これからはそのことで不満に思う魔族も出るだろう。それなら、ここで彼女の立つ位置を決定付るいい機会だと、俺は考えた。
巨人の顔が光った。それを見てライナスリークは皆に魔法障壁を展開するよう指示をする。その刹那、巨大な光が障壁にあたり、その衝撃が、周りに影響をもたらした。
「なんて力だ。これでは、あと2回、障壁が持つかどうかわからないぞ」
ライナスリークに、焦りと緊張が浮かんできた。
俺はそれを見て、ライナスリークの肩を軽く叩き、笑顔を見せて、
「これで終わりだ」と、一つ頷き、
「マリン、湖面を凍らせてくれ。マクラ、ラスタ、いくぞ!」




