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両手にいっぱいお見上げを買って帰って来ると、すでに家は建て終えていた。さて、ハクウンはどこだろうと、探していると、あっちから手を振って教えてくれた。そこへ行くと、壁のない、屋根と柱だけの集会所みたいなところで、数人の若者達が、話をしているようだ。一様いいのかと尋ねると、構わないということで、俺たちは端の方に座った。
テーブルに買ってきたものを出して、食べようとすると、匂いでわかったのか、みんなこっちを見ている。昼時だし、みんなまだ飯食ってないようだ。食べると聞いてみたら、みんな頷く。それで袋から出し分けてやった。
よっぽど腹減っていたようで、あっという間に食べ終わってしまった。
ハクウンが苦笑まじりに言ってきた。
「食料が底をつきかけていてね。お金も無いしね。それで、みんなで相談していたんだ。このままじゃ、飢え死にってことにもなりかねないからね」
最後の方は冗談まじりで言っていたようだが、みんなを見ていると問題は結構深刻なように見える。このままだと、冗談が本当になりそうだ。
「街に行ってきたんだが、どうだろう、働き口を探してみたら。結構賑わっているし、求人もありそうだぞ。それに、君たちは人族より力もあるし体力もある。案外直ぐに、働き口が見つかるかもしれないぞ」
「そうだな。これからのことを考えると、人族とも付き合って行く必要があるし、それもいいかもな」
ハクウンは腕を組み、俺が言ったことを真剣に考えているようだ。そして、一つ頷いてから、俺が言ったことをみんなに伝え、意見を求めた。
ハクウンは、賛同した人たちを連れ、街にある商業ギルドへ訪ねることにした。そこでは、求人の斡旋もしているので、参考に見学がてらやってきたのだ。
中に入ると、多人数のせいが、職員達は驚いたようだが、仕事を探していると言うと優しく接してくれた。
職員であろう制服を着た女性が、人種、したい仕事、特技など。いろいろなことを質問してきて、俺たちに合いそうな仕事を見繕ってくれた。
みんながそれらを見て、これなんかどうか、と興味津々だ。なかには、紹介状を書いてもらって、早速出かける奴もいる。それに刺激されたのだろうか、求人票を持って、カウンターの方へ行く人が増えた。
俺はみんな出払ってから、俺たちの事を聞いてみた。すると職員の女性は、俺たちの事を知っているし、偏見も、差別もない、と教えてくれた。要は仕事が出来るかどうかが重要だとか。
意外な返答に俺は驚き、ここでなら俺たちもやっていけそうで、希望が湧いてきた。
ついでに、女性たちの求人票が欲しいといったが、職員の女性は申し訳なさそうな顔をして、紙は貴重品なので、ホイホイと渡せないと言った。
なるほど、ハクウンは腕を組み少し考えてから、紙は売れるのか聞いてみた。
「紙は貴重な物ですから、価格によってはすぐに売れます。何ならここでも買い取り致しますので、宜しかったらこちらにお持ち下さい」
職員の丁寧な応対に感謝の言葉を述べ、ハクウンは帰り早々長老宅を訪ねた。
「成る程のう。紙が売れるか……」
長老はすっかり白くなったあご髭を撫でながら思案し、
「よし、やってみよう。紙なら老人達はみな作り方を知っているからな、わしがみんなに相談しよう。よく思いついたなハクウン」
長老の褒め言葉に、頭をかくハクウンであったが、悪い気はしなかった。
夕暮れになると、職を求めに行った人たちが帰ってきた。みな上手く働き口が決まったようで、本日の賃金をいただき、食い物や子供達や奥さんへの土産を買ってきた。それをみて、反対していた人たちにも、考えが変わった人が出てきて、働き口の相談したりしていた。
ハクウンはそれを見て、ゆっくりではあるが、俺たちは、いい方向へ変わろうとしていると、将来への希望が見えてきていた。




