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「お前は、それで逃げて来たのか」
跪きこうべを垂れているユーラ公国の国王ラドルに、聖教国教皇メルドラードは冷たい視線を投げた。
「……」
「まあよい。今後のことは、様子を見てから考えよう」
メルドラードの許しをえて、ラドルはホッとひと息を吐き、退室していった。その後ろ姿に視線を向けたメルドラードは、彼も生贄ぐらいには役にたつだろうと、冷たく皮肉った笑みを受けべていた。
ハクウン達は国王がいないのに気がつき、探したところ、隠れ通路を発見した。その通路を辿ると、湖が見えて来て、その向こうには湖の小島に建つユーピア聖教国の姿があった。
半刻もたたず城を制圧、勝鬨をあげる。こうして人狼族は、自分たちの土地を奪還し、ユーラ公国は十数年という短い歴史を閉じることとなった。
「ハクウン、喜んでいるのに悪いが、これからが大変だぞ」
晴人は、水を差すのに気を引けたが、言うべきことは言おうと思った。
「ああ、わかっている。だが、今日だけは許してやってくれ。俺も今日だけは、みんなと共に喜びたい」
晴人は、ハクウンの表情を見て、そうだなと、納得の笑顔で呟いた。
ハクウンの両親の亡骸は、みんなが見守る中、火葬にした。ミルクちゃんは両親の記憶がないのだろう、みんなが泣き崩れる中、ただ一人ぽかんとしていた。それが、かえって、みんなの涙を誘うこととなった。
火葬が終わり骨を拾い集めたところで、人狼族にはこんなものは不要だ、ということで、城を壊そうということになった。
「それなら私に任せて」
珍しく、マリンが積極的に言ったと思ったら、魔法の詠唱に入った。
地上に影ができ、みな上空を見上げる。そこには巨大な物体があり、さらに大きさを増す。
地上にいる者達に、嫌な予感が走り、慌てて魔法障壁を展開させる。その時、上空より、巨大な物、それは巨大な氷で、城へと落下した。その衝撃により、爆風が起き、辛うじて魔法障壁で防いだものの、城のあったところに巨大なクレーターが出来た。
魔族達が唖然として見ている中、俺はマリンに近づき、
「マリンさん、俺たちを殺す気か」と、怒鳴った。
「知らないわよ。私だって、こんなに巨大になるとは思わなかったのよ。それも、晴人さんが悪いんだからね」
逆ギレされてしまった。(俺関係ねーし)晴人は心の中で呟いた。
マクラはマリンの力を見て、こやつが神殺しの力を得たことに気がついた。晴人が神殺しであることがわかってから、モーションを時々かけていたのだが、マリンを見ていると、神殺しは、異常性壁の持ち主のようだ。だから、わしのセクシーなモーションにも振り向かないのだ。まずいな、想定外だ。なんとか別の方法を考えなければ……。
!、そうだ、マクラは部下に命令して、巨大なクレーターを埋めるように指示した。マクラは、ポイントを稼ぎ、そのお礼にチュウしてもらおうと考えたのだ。
クレーターが平地になると、晴人がお礼を言ってきた。早速チャンス到来、「お礼など良いぞ。それよりチュウしてくれ」と、唇を突き出す。
晴人は、こいつらの言動は分からんと思いながらも、ちょっと口に口をくっつけてやった。




