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晴人ははにかみながら取り乱したことを詫び、知っていることをライナスリークに話した。
「ライナスリークよ、よく聞け。俺は知っている。全てを知っている。なぜだか知らないが全て知っているから、これからその真実をすべて話そう」
晴人は正面に座るライナスリークを見つめ話し始めた。
サイレンの国王は、ひとり娘を人質にとられ、どうしようもなかったんだ。その首謀者は、ジャンロレーの長兄イモータルだ。
「そんな馬鹿な。その場には、父のジャンロレーだけでなく、兄弟もいたはずだ」
ライナスリークは興奮して立ち上がりながら反論した。
「それが狙いだ。3人の抹殺。そして、自分が魔王になる。そう言う筋書きだ。そして、その卑劣な作戦がまんまと成功したわけだ」
彼の火がついた野望はそれだけでは止まらなかった。世界を、魔族の世界を、自分の手にしたいと思うようになった。ヘルフォード王の跡を継いだジュラルに焚きつけ、人族との戦争に持ちかけたり、あなたの奥さんを、人族を使って殺害させしたのも、みんなイモータルが裏で糸を引いていたことなんだ。
そこまで話すと、ライナスリークはテーブルに置いた両手を、握りこぶしにして、ドンとひとつテーブルを叩いた。それを見て魔王の側近の二人も、その腕に手を添え「魔王様」と、言って、沈黙する。心の中では、仇を打とうとでも言っているようだ。
俺は続けた。
「ライナスリーク。君の娘はサイレンの王の娘とともに、魔王城に時が止まった状態でいる」
それを聞いて、ライナスリークは視線を向ける。
「それは本当か」
「俺の中の記憶が正しければ、玉座の間に。水晶のようなものの中に閉じ込められている」
「もう死んだと思っていた。諦めていたんだ。それが本当で、また再びこの手で、我が娘を抱くことができるなら……」
ライナスリークはテーブルに頭が付かんとばかりに下げ
「晴人殿、どうか私に手を貸してくれ。もし、我が娘を再び抱くことができたら、私の全てをあなたに捧げよう。どうか助けて欲しい」
側近の二人も頭を下げ、ライナスリークの言葉に同意した。
マクラ・ヘルフォードはカマレロの王宮前にいた。不思議と守衛がいなかったので、通用門を素通りして中へ入って行った。
マクラは今になって、神殺しがどんな奴か、聞いてくるのを忘れていた事に気がついた。。心の中で、まずいどうしよう。神殺しは誰か、と直接聞いても教えてくれないだろうし、しつこく聞くと怪しまれるかもしれない。どうしたものかと思案していたら、前方に一人の女性が歩いていた。
マクラはビビッと直感して、駆け寄り声をかけた。
「おい、そこのお前」
ミルクちゃんは、自分に声をかけられたのかと、その方へ視線を向けると、同じ歳くらいの、ピンク色の髪をした女の子がいた。
「僕にようかな」
同じ歳くらいなのに偉そうにしていたので、こちらも偉そうな態度をとった。
「わしはマクラだ。君の名前は」
「僕、ミルクだよ」
むむ、こやつだな。この容姿といい、まず間違いなかろう。これなら、神殺しも、メロメロになるかもしれん。
「ミルク。チュウしたか。チュウ」
何この人。いきなりそうくる。偉そうにしているので、
「当然よ。チュウなら、何回もしたわ」
やはりそうか。こいつが神殺しから力を受け取ったんだな。
「そいつは誰だ」
マクラはミルクちゃんに詰め寄った。
「誰と、言われても……」
「うむ、話せぬと言うのか」
ひつこく詰め寄られ、焦るミルクちゃんが周りに助けを求めようとした時、ちょうど、兄のハクウンが通った。それをいい事に、指をさし、
「あの人よ。いつもチュウしてるんだから」と、ない胸を張りながら、得意げに言った。
「そうか。やつか」
マクラはその人のところへ走って行って、声をかける。
「おい、そこの」
ハクウンは声が後ろから聞こえなので振り向くと、そこに、小さな女の子が立っていた。何だろうと見ていると、
「おい、君。わしにチュウしろ」と、理解不能なことを言ってきた。
あわてて、後方よりミルクちゃんが走ってくる。
「だめ、お兄ちゃんは僕のだよ。あんたにはチュウさせない」
両手を広げ、兄のハクウンの前に回り守ろうとする。
マクラは、こいつなんて卑怯なんだ、神殺しの力を独り占めにしようとしているな。ならばこれならばどうだと、セクシーなポーズをとった。
それは、マクラにとっては精一杯のセクシーポーズなのだが、ハクウンには何をしているのかさっぱりわからなかった。そして、最近の子供の遊びは分からん、と首を振り去っていった。




