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私は、やるせなくて、どうしようもなくて、その時、初めて酒を飲みました。酔いがまわると、少し気分が良くなりました。それでたくさん飲みました。
朝目覚めると、まったく記憶がなく、見知らぬ個室で寝てました。まだ頭がズキズキしていたのですが、ふらつきながらも部屋から出て行くと、そこにひとりの女性がいました。
女性は私に気がつくと「おはよ」と声をかけて来ました。私も何とか返事すると、「朝ごはんもうすぐできるから待って」と、言いました。私は二日酔いで食欲がなかったのですが、彼女がしつこく進めるので、少しくらいなら何とかなると思って、テーブルに着きました。彼女が出したものは、スープとサラダ、それとパンでした。
スープはさっぱりめで、口に入れると、食欲が出てきました。サラダも薄味のドレッシングだが悪くなかった。パンは……、そこは言わないでおこう。その時にもそ言ったら、彼女はすこし怒ったようで、「知らない」と、言って、頬を膨らませ、そっぽを向きました。1000年以上も前のことなのに、今でも昨日の事のように覚えています。
私は二日酔いが治るとともに彼女に恋をしたようだ。それから、時間を見つけては彼女に会いに行きました。そして、彼女にプロポーズ。彼女もOKしてくれたので、私たちは魔王国で一緒に暮らすことにしました。
私たちにはすぐに一人娘が授けられ、幸せな日々を送っていました。世界的には人族と魔族に亀裂が入り一触即発の緊迫した状態が続いていましたが、私たちはカマレロとは以前のように友好的な関係を維持していました。
娘が大きくなると妻のリーンはよく娘のココナを連れカマレロに買い物に出かけました。その日も笑顔で娘の手を握り、「行ってきます」と、手を振って出かけて行きました。
一仕事終え、休憩に入っている時でした、私を呼ぶ声が聞こえたので、返事をすると、大至急カマレロへ行くように言われました。
私が着くと公園の片隅に、布を被せられたものがあり、布を取ると、苦悶に満ちた妻の顔が、すでに死んでいる姿がそこにありました。私はすぐに娘のことを訪ねましたが、知る者はいませんでした。
妻の顔が、ひょっとして娘の行く末を物語っているのかもしれません。そう思うと、悲しみと絶望の中、むくむくと怒りがこみ上げてきました。
(誰が妻を殺した。誰が娘をさらった。私は許さない。絶対に、この命に代えても、俺はそいつを見つけて殺してやる)
私の心は怒りに満ち、私は変異したのです。髪が黒くなり、目は赤く染まり、そして、魔王になったのです。
晴人は、ライナスリークのその時の感情に共鳴して、滂沱と涙が溢れてきた。そして、ライナスリークの妻リーンが人によって斬り刻まれている情景が目に浮かび、泣き叫びながら連れさられる娘を見ながら、絶望に顔を歪めるリーンの姿が思い出されると、怒りの激情に体が震えてきた。
マリンにもその感情は伝わり、マリンは慌てて立ち上がり、晴人さんの頭を抱えた。
(晴人さん。いけないわ。そり以上感情を高ぶらせては、お願い、感情を抑えて……お願い)
マリンは晴人さんの頭を抱え、心の中で必死に叫んだ。
ライナスリークには、3対の白い羽を持つ天使が、晴人の頭を抱いている姿が見えていた。
この人はやっぱり天使だったのか。リーンとどことなく似ていると思ったが、リーンと同じ天使だったとは……。それにしても何だ、このとてつもない力は。上位天使?、いや、それ以上だ。神をも超える力を感じる。そうだ、目の前の晴人が豹変した時の、あの時の力と同等なものを感じる……。
その時天界では、ゼウスが白眼を剥き、口から泡を吹いて倒れ込んでいたのは、言うまでもないことである。




