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光剣さんが先陣を切って敵陣へと斬り込んでいく。剣が光、まるでホワイトボードに描かれた落書きを、イレーザーで消しているように、魔族達が消え去っていく。
俺は後方に控えその様子を見ていた。光剣さんに思う存分に戦ってもらうためと、俺はチャンスを伺っているためだ。そのチャンスを光剣さんが切り開いてくれる事になっている。だから俺はじっと待っている。
光剣が魔王まで50mまで迫った。さすがに、肩で息するようになっている。もう限界かもしれないな、これ以上になると、魔王達も動き出すだろう。ご苦労さん、心の中で呟き、俺は魔王に向かって邪魔な魔族どもを斬り裂き一気に詰め寄った。1秒に満たない一瞬の事。
俺の剣が、魔王が立ち上がるより早く、首、数センチのところで寸止めした。魔王が全く動けず、剣が首に突きつけられている事に驚き、側近達までもが呆然としていた。慌てて構えようとした側近達を「動くな」と、ひと言叫び牽制する。
俺は、マリンの言った事を思い出し、魔王の王冠に手を伸ばし、クサクサに破壊した。その刹那、魔王の記憶がが、感情が、俺の中へ流れ込んできた……。
俺の心が、魔王の記憶、怒り、悲しみに、共鳴し、締め付けられる。鼓動が高鳴る。息が早くなり、過呼吸になる。
西門が開き、兵士たちが流れ出てきて勝鬨を上げる。魔族達はチリチリに逃げ去り、魔王とその側近は観念したように座り込んでいた。
遅れて、国王も側近を連れやったきた。国王は魔王達を一瞥すると、魔王達の首を取ることを側近達に命じた。命じられた側近の一人が、兵士と共に魔王達のところへきた時、晴人は「来るな、うせろ」と、怒りを露わにした声で警告した。その時になっても、マリンは晴人の異変に気づいてなかった……。
遠くて遥か上空で様子を伺っていた二人がいた。
「姉さん、凄いね。一瞬だよ。一瞬で魔王達をやっつけちゃった。やっぱあいつ最高だね」
グリーは嬉しそうに、姉のラスタに言う。
「欲しい」
ラスタは恍惚とした表情で見ていて、ひとこと漏らした。
「ダメだよ姉さん。あれは俺のものだからね」
グリーはラスタ姉さんに取られてなるものかと、強く主張した。
ゾイルは防護壁頂上から下の様子を伺い、これが危惧していたことだろうか。まだ何かあるのではないだろうか、と心の奥底には、不安になる部分が残っていたが、心配性だなと、自分の心弱さに苦笑いしながら、みんなの所へ歩いて行った……。
側近が、晴人の物の言い方に腹を立て「無礼者、黙れ」と、ひとこと怒鳴り、横にいた兵士に再度、魔王達の首を取るように命じた。その刹那である。側近の首が地面に転がり続いて兵士の首も転がった。それを見ていた国王が怒気をあらわにして言葉を発しようとしたが、それは叶わなかった。何故なら国王の首から上はすでに無くなっていた。
その時になってやっとマリンは晴人の異変に気づいた。これは神殺し、神殺しが発動したのか?、マリンはあまりの恐怖に身動きできなくなっていた。
その時である、一本の矢が飛んできて、光剣彩の背中を貫いた。
光剣が倒れ、そこを中心に血の輪が地面に広がる。
それを見た晴人のほんの少しだが残っていた理性が吹き飛んだ……。
近ずいていくゾイルの足が止まり、前方に見える異変に気がついた。騒ぎが広がり、急に空気の流れがピリッとした背筋を凍らせるような緊迫したものに変わっていった。その時になって、自分の甘さに気がついた。ベッヒルの予感はまだ終わってはいなかったと……。




