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マリンは訓練所を見渡し勇者を探していた。そして一人の女性に目が止まった。異常にステータスの高い女性。まず間違いないだろう。その人の方へ歩いて行って声をかけた。
「私はマリンと言います。あなたは異世界人でしょうか」
直球で尋ねると、訝しそうな表情をしながらも、頷いてくれた。
「私たちにも異世界人がいるの、ひょっとして同郷の人かと思って、会ってみます」そう言って、マリンは晴人さんを呼んだ。
マリンが俺を呼ぶ声がしたので、行ってみると、一人の女性が隣にいて、
「同郷の人かもしれないので話してみたら」と、マリンが教えてくれた。
黒髪で高校生くらいの小柄な女性。顔の特徴は日本人のそれだが確証はできない。
「俺は神谷晴人、日本人です。君は……」
言葉を続けず。探るような視線を彼女に向けると、
「私は光剣彩といいます。日本人です」
それを聞いて、嬉しくなり、饒舌になる。
「俺は、キャンピングカーで北海道へ旅行中、どういうわけかこちらに来てしまった。何が何だかさっぱり分からん」
彼女も顔がパッと明るくなって、
「私は京都の自宅にいました。夏休みで、学校の部活に行こうとしたら、気絶してしまって、気がついたらここにいました」
互いの境遇を語り、話が弾んでいるところに、騎士団長のマントラさんが来て、互いに自己紹介してから、どうだろうと、剣を持つ格好をして、試合が見たいと言い出した。
俺は、戦うのがあまり得意ではないと言ったが、試合場に連れていかれ、剣まで持たされ、剣と腕輪を説明され、気がついたら「始め!」と合図がかかった。
彩は彼が剣が苦手といった理由は剣の構え方で納得した。多分謙遜だと思っていたのだが、どうやら本当だったようだ。ここは恥をかかせるのも可哀想なので、早めにけりをつけようと、隙だらけの頭部へと剣を打ち込んだ。
決まったとそう思った瞬間、剣が剣で受け止められたことに驚き、一瞬動きが止まった。慌てて距離をとる。場内に「おー」と、驚きの声が響く。
彩は己の未熟さに腹が立っていた。彼が剣が苦手と言った。それを間に受け、構えを見た時確信していたが、それが見誤っていたことに気づいた。
彼はあくまでも自己申告で言ったのだ。それを、周りにいる人と比較してして、同程度と判断してしまった。彼は、周りにいる誰よりも強い。これが、実戦だったらどうだろう。取り返しのつかない結果になっていたとしても過言ではない。
彩は気を引き締めて「本気で行きます」と、ひとこと発し、光剣流奥義を繰り出した。
剣が連続して光る。縦に、横に、それらが一歩たりと動かず、ただ右手のみの動作で、全て受け止められていた。
場内は唖然として声を発する者も居なくなっていた。
彩は全力で斬り込んだ影響で、肩で息しながら、初めて知る強いものと戦った時の興奮に心臓が高鳴っていた。生まれて此の方、父以外でこれほど強い人を見たことが無い。アドレナリンが上昇する。心臓がバクバクいってる。それでも、心の底からくるこの感じは何だろう。腕は震えているが、それは恐怖からくるものでは無い。初めてみる強い人に体が興奮しているのか、武者震いっていうやつか、嬉しい、楽しい、剣を持って初めて感じた感情に、幸福感に包まれた。
晴人は剣術などここへ来るまでしたこと無かった。初めてはコングさんとの戦いで、それからは少しづつではあるが剣術が上達したと自負していた。だから、目の前の女性を、ちっこい身体のか弱い人と決めつけていた。それが予想に反して、剣の打ち込みにスピードがあり、力強さもあった。人は見かけによらないものだと感心しながらも、剣を持つ手に力が入り、心の底からくる高揚感みたいなものを感じていた。
安全は保障されている。ならば、全力でいかなければ彼女に失礼だ。晴人は、「今度はこちらから行きます」と、動いた。
マリンは晴人のステータスをジッと見ていた。一瞬だがステータスが光、変更された。その時、場内に「おー」と、驚きの声が響き渡り、晴人の持っていた剣が粉々になったのが見えた。
それより驚いたのはマリンで、改めて晴人のステータスを確認すると
HP 50000
STR 50000
MP 50000
DEF 50000
AGI 50000
(MAX HP 100000)
(MAX STR 100000)
(MAX MP 100000)
(MAX DEF 100000)
(MAX AGI 100000)
もうこのステータスで、この世界は滅びるレベルになっていた。




