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人狼族の長老オルタは、髪が灰色のせいか、より一層老けて見える。
俺たちは、オルタと対峙して座している。そこへ、黒髪の人狼族の女性が食事を運んできてくれた。配られたものを見ると、お湯の上に山菜とわずかな肉のようなものが浮いているスープとナンみたいな何かを固めたものだ。スープは味がなく、ナンみたいな物は硬くて不味い。
俺たちの様子を察してか、オルタは、
「私たちには、これが精一杯のおもてなしです」と、申し訳無さそうに頭を下げた。
その事は周りの様子を見ても本当だとわかる。子供たちの視線は正直で、羨ましそうに見ているし、大人たちは、皆、痩せこけている。無理していることが十分に分かる。
俺はこれには事情がありそうだと感じたので、
「何か事情がありそうですね」
俺が周りを見渡していると、察したかのように話し始めた。
「私たちは、元からここで住んでいたわけではありません。人族に追われこの地に来たのです」
成る程そういう事か、それで、俺たちに反感を持っていたのか。
「私たちは、ここより遥か遠い地、エルフの森の北の地で、狩猟を主として生活をしていました。そこへ人族が来て、建国するとか言って、私たちを排除しようとしたのです。もちろん私たちは戦いましたが、多勢に無勢で追いやられたのです。その戦いで、大勢の仲間たちが死にました。ハクウンの両親もその戦いで無くなりました。私たちは太古の昔、人族と魔族の全面戦争の時、人族に付き、共に戦い勝利しました。そして、我々の地を認めてもらったのです。それが、突然人族が現れこの地は我々の地とすると言って、勝手に旗を立て、建国を宣言したのです。これが人間のやり方だと思うと……」
オルタさんは膝に置いた手を力強く握りしめた。
俺は余所者だ。どうこう言う立場の人間では無い。だが、このままでは、人狼族は滅びる運命だろう。俺のいた世界では、絶滅危惧種に認定されてもおかしく無いほどだ。人間と共存出来ないだろうか。いや、無理だろうな。あの長老の話を聞いて、共存の選択肢は無いと思った。だとしたら……。
俺はルルさんを呼んで、キャンピングカーをここへ持ってこれないだろうかと聞いてみた。ルルさんは難しいだろうと言って、諦めようとしたところを、マリンさんが口を挟んできて、やってみたらどうだと言った。そうだね、ダメ元でやってみますかと、俺が念じると、巨大な魔法陣が上下に現れ、それに挟まれるようにして、キャンピングカーが出現した。
マリンさんは晴人が神に匹敵する能力を持っている事を知っていたので、当然でしょうと思っていたが、ルルさんやリルネさんは唖然としていた。当の本人も、これがどれほど凄いことか分かってないようだ。
翌朝、俺は長老と裏取引をした。俺は思うところがあって、ハクウンを連れて行こうと考えている。そのかわり食料を提供しようと言ったら喜んでOKしてくれた。本人にはショックを受けると困るので「お前は戦いで負けたのだから、俺の奴隷な、長老も納得しているから、従ってもらう」と、言ったら、慌てて長老のところへ行って、項垂れて帰ってきた。
(いひひ、ざまあみろ、俺の左腕を思いっきり噛んだ罰だ)心の中で、あっかんべーしながら、笑ってやった。
いざ出発というところでミルクちゃんが泣き付いて来た。お兄さんと離れたくないという。みんなが俺の方を見る。
(そんな非難がましい目で見んなよ。はいはい、俺が悪いんです)
俺が「好きにすれがいいさ」と、言ったら、みんなが「良かったね」と言って、ミルクちゃんに抱きつき、もらい泣きしている。俺、ほんとに悪者なった気分だ。




