4-2
♢♢♢4-2
人狼の里へは、ここから歩きとなる。キャンピングカーを近くの村の長に頼み置いてもらうことにした。(お礼に異世界の菓子パンやお菓子を沢山やったら逆に涙流しながら喜んでくれた)
ついでに人狼の里へのルートを尋ねると、最短ルートを教えてくれた。それによると、1日で余裕で行けるそうだ。
俺が持っていくものを吟味していたら、ルルさんがアイテムボックスというものを持っていて、結構いろんな物を入れることが出来た。これで空手で行くことができる。楽チン楽チン。
先頭をマリンさんがミルクちゃんと手を繋いで歩いてる。
マリンさんは白無地のダブルフロントTシャツに明るい緑色のリラックスパンツ。ミルクちゃんは水色のTシャツにデニム素材のキュロットパンツ。マリンさんは白のシュシュ、ミルクちゃんは水色のシュシュ、でポニテにしている。
後方から見ると、母と娘でピクニックを楽しんでいるように見えて微笑ましい光景だ。それに反して、後方にいるルルさんは厨二病の魔女っ子スタイルだし。リルネさんはグレーの僧侶スタイル。俺が洋服を取り寄せようかと言ったが、遠慮したのか、信念なのか、頑として頷かなかった。
休憩を挟みながら5時間くらい歩いただろうか、ゆるい坂道から平坦な道へと変わった。その時、前方に人の気配を感じた。ミルクちゃんが手を振っている事から同族の人たちだろう。その人たちが近づいて来ると、ミルクちゃんが駆けて行って、前にいる若い男の人に抱きついた。同じ髪の色をしている事から、兄弟なのかもしれない。その他の人は灰色の髪が一人、茶色が二人、黒が一人、皆、若い男の人だ。きっとミルクちゃんを捜していたのだろう。
俺たちが近づくと、皆、睨みつけるような敵意の視線を向けてきた。
ミルクちゃんが抱きついている男が、威圧的に、
「お前らか、俺の妹をたぶらかし、連れ去った奴は」
ミルクちゃんは、必死で否定をしているが、それを無視して、
「人族は信用できん。すぐに俺たちを騙す。ただでは帰さんぞ」
今にも飛び掛かってきそうな勢いだ。
「とんだ言いがかりだな、恩を売るつもりはないが、人狼族ってのは、恩を売った、相手に対して礼儀ってものを知らないのか」
俺もさすがに腹が立ち、棘が立つような口振りになる。
「ほう、貴様らがそれを言うか。俺たちが、どれだけ貴様らに辛酸を舐めてきたと思っている」
「知らないね。そんなの俺の知った事じゃない。俺は俺だ」
売り言葉に買い言葉、さらに場が剣呑になる。
「よかろう。俺も誇り高き人狼族の戦士だ。言ってもわからない奴は死んで閻魔様にでも教えてもらうんだな」
必死で止めようとしているミルクちゃんを、周りにいた男たちが引き止め後方へ下がる。俺も、女性たちに目で合図を送り後方へ下がらせる。
「俺は人狼族のリーダー、ハクウンだ。お前の名前を聞いておこう」
「俺は晴人だ」
ハクウンが変化していく。そして、真っ白くて巨大な一匹の狼になった。
晴人は、その大きさに驚いていたが、次の瞬間、牙が喉に迫っていた時のスピードにはもっと驚いた。晴人は辛うじて転がるようにしてそれを避け体勢を整えた。危なかった。油断していたとはいえあのスピードは脅威だ。
一方ハクウンは、一撃で決まったと確信していただけに、避けられるとは、想定外で、次の一手に躊躇した。
晴人は相手が慎重になって、こちらの様子を見ていることに気づき、こちらから打って出た。
ハクウンは一瞬、晴人が消えたように感じた。だが、本能が危険を察知し、受け身の体勢を取る。そこへ、右脇腹に衝撃が走り、勢いよく飛ばされた。地面に落下寸前、四つ足で踏ん張り、辛うじて体勢を保つ。
ハクウンは改めてこの目の前の晴人という人間に脅威と驚きを感じた。かつて、これほどの強いやつと戦ったことがあっただろうか。子供の頃、父と戦った時、強いと思った。だが、それは俺が幼かった頃の話で、物差しとしては測れない。
自分は人間より強い、優れている、と思っていたことが、自惚れであったことに、自分自身に腹が立った。だが、負けるわけにはいかない。それは人狼族の誇りであり、俺自身のプライドでもある。
ハクウンは右に左に走り、かく乱戦法に出た。スピード、パワー、は劣るかもしれないが、持久力には自信がある。こうして、相手の体力を奪う作戦に出た。
晴人は目では見切っていたが、次の動きのパターンが読めず、動けなかった。そこへ、僅かな隙をついて爪が飛んできた。辛うじてかわすも、衣服に爪で出来た裂け目がついた。くそっ、お気に入りの服を引き裂きやがって……。
晴人の注意がそれ、隙の出来た左側から喉へ向かって牙が飛んできた。それを左の腕で防ぎ、避けずに構える。牙が左腕に刺さり、血が地面へと落ちる。
マリンが「きゃっ」と、叫び、晴人の元へ行こうとした時、ハクウンの体が、地面に崩れ落ちた……。
「わおー、姉さん、姉さん。今のは凄かったね」
グリーが嬉しそうに姉の方を向く。何時もなら、全く興味を示さない姉だが、この時は、珍しくじっと事の成り行きを見つめていた。
「欲しい」
ラスタの小さな呟きをグリーは聞き逃さなかった。
「だめだよ姉さん。あれは俺のものだからね」
遥か上空で、この様子を見ていた二人。地上で気付いた者はいなかった……。




