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エスケープ動力源  作者: てるてる
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第1話

初投稿です。

よろしくお願いいたします。

「もしもし、川内だ。生徒が一人、脱走した!さっき職員室除いたら、中島先生と鳥飼先生がいたはずだ。応援連絡をして表門と女子寮を抑えてくれ。俺は裏門に向かう!」

「っ了解しました。生徒の名は?」

「前からマークしていた作田だ。じゃぁ、頼んだ。」

俺は電話を切るのももどかしく、そのまま胸ポケットに突っ込むと裏門に向かう。

ここは成立高等学校、一般寮。

今では少なくなった寮付きの高校だ。

その中で、生徒一人が脱走した。コンビニに行く、等軽いものならここまで焦らないが、それでも外聞の悪さは付きまとう。

それに、脱走した生徒、作田の目的地はおそらく・・・


そこまで考えたところで裏門にたどり着く。

築年数がたっている門はところどころさび付いており、施錠もしてある。

今日動かした形跡はなかった。と、いうことは門近くの塀をよじ登っている可能性がある。

この裏門近くは、木々が生い茂り簡単には見渡せない。

長年の勘で適当に走り回れば、問題の生徒、作田が壁をよじ登っている姿が見えた。

手頃な棒切れを拾い、投げる。回転した棒切れは狙い通り作田がつかんでいた塀近くに当たり・・・

「いてっ」

びっくりした作田はそのまま手を離し、塀から落ちた。

「ずいぶん急いでいたみたいだな。作田」

「・・・川内先生」

俺は肩で息をしながら、安堵の溜息をついた。


「もしもし、武藤か。作田は確保した。中島先生と鳥飼先生には『トイレが長引いていて気付かなかった』といって引き取ってもらえ。後で俺からも話しを通す」

「あ〜よかったです。この後は宿直室で?」

「あぁ、そのつもりだ。そっちも片付いたら合流してくれ」

「わかりました。あの話、楽しみにしてますね。」

「馬鹿やろ「野郎じゃないです。これでもれっきとした女です」・・・悪かった。んじゃ、後は適当にな」

「了解しました」

作田を確保した連絡を入れ、いまだに座りこんだ作田を引き起こす。

立ち上がった作田はずっとうつむいていた。

1年生の6月。となれば、こういうやつが毎年1人か2人はでる。

「作田、お前彼女のところに行こうとしてたな」

寮へと歩きながら尋ねると、ビクッと肩を震わせた。反応が初々しい。

「毎年この時期は何人か出るんだ。入学して1段落したこの時期、しかもゴールデンウィークが終わり、6月には祝日もない。

彼女と会う時間はほとんどないし、となると次は夏休みだからな。」

この成立高校はなかなか規則が厳しい。

親御さんの心配を受け、8時以降は外出禁止。部活動の終了時間も決められている。

さらに寮生は部活動を義務付けられているため、我々教師の目を欺かなければ、ほとんど外出できないルールだ。

「・・・先生、今日1日だけ見逃してくれませんか?絶対に悪さしないし、補導にも気を付ける。迷惑はかけないから。明日の朝には絶対に戻るから」

「それはお勧めしないな。ま、理由は後で話してやるし、実際の結果も試させてやる。とりあえず宿直室で落ち着いてからな」

そのまま俺は宿直室へと作田を招いた。


プシュッという音をたてコーラの缶から少しの泡が飛び出る。

俺のおごりだ、と1言告げてから、作田の前に置いた。

「だからこれは見逃してくれよ?」俺は缶ビールを取り出し、開ける。

今、宿直室には俺と作田、そして同僚の武藤がいた。

1口飲んで、口を湿らせてから作田と机越しに向かい合う。武藤は俺の後ろ、畳の上に胡坐をかいていた。そういうところが女らしくない。

「さて、作田。俺は大体の事情は推測できている。地元にいる、彼女からの懇願があったな?」

じっくり作田を覗き込むように尋ねると、作田はうつむいたままうなずいた。

「まぁ、そんなところだろうな。さびしい、早く会いたい、会いに来てってところか。ま、そのままの行動をするのは簡単だけどな、おすすめしないぞ。

これは俺の実体験からくるものだけどな。ま、俺の話を聞いてくれ」

これから話す話は俺にとっての黒歴史そのもの。それでも作田のためになれば、と話すことを決める。

まぁ、素面じゃ恥ずかしいので、ビールを飲むのは許してほしい。




「夏休みなんてまだ先じゃないっ。さびしいよ。早く会いたい」

当時流行だしたガラケーから、そんな声が聞こえる。

「俺も早く会いたいよ。でもここの校則だから仕方ないじゃないか」

高校1年の6月。地元においてきた彼女と俺は電話をしていた。

・・・ここで1か月前にあったばかりとは言わない。いったら余計にこじれるだけだと、経験から知っている。

「信吾は意地悪だね。いっつもおんなじことを言う。私、本当にさびしいんだよ?もう待てないよ・・・」

そんな言葉と共に、信吾を好きにならなければよかった。とつぶやく声が聞こえた。

その言葉に俺は決心する。校則?ルール?糞くらえ。内申なんて構うもんか。最悪退学になってもいい。

これ以上俺の女を泣かせるわけにはいかない。

「・・・わかった。今から寮を抜ける。近くに隠してある自転車で駅に向かう。今から出て、駅に着くのは9時過ぎ。そこから河合駅に着くのは11時頃だ。そこで落ち合おう」

電話の向こうから息をのむ音が聞こえる。

「私のためにそこまでして・・・いいの?」

「構うもんか、最悪退学になったっていい。じゃ、電話切るぞ。急がないといけないからな。」

「・・・わかった、11時ね。まってるから」

そこで電話を切った俺は、急いで出かける準備をする。外出着に着替え、財布と携帯をポケットに入れる。

後は最悪現地調達でなんとかなるか。時刻は8時30分。急がないと間に合わない。

運よく俺は1Fに部屋が割り当てられていたため、隠していた靴を取り出し、窓から外に出た。










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