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狐のおつかい  作者: 黒月水羽
3章 後ろの少女
78/194

18 別視界

 次の日の昼休み、私と香奈、彰は祠の前に集まった。情報共有のためだ。


 昨日のうちに簡単ではあるが、彰に寮母さんから聞いたことは報告していた。

 それを聞いた彰が、改めてちゃんと話した方がいい。お互いに分かったことを整理する時間も必要だと、今日改めて話すことになったのだ。

 私たちが寮母さんから聞いた話は、彰にも少なからず衝撃を与えたらしい。


 祠の前に行くと、いつも出迎えてくる子狐様の姿はなかった。

 あの一件以来、子狐様の姿を見ていない。調査に忙しくて祠に来ていないこともあるが、今までを思えば不自然だ。間違いなく、彰を避けている。


 ちらりと彰の様子をうかがうと、不快そうに顔をしかめていた。いかにも不機嫌ですといった様子は怖いが、気持ちは分かる。

 彰からすれば、理由も告げられずに、突然怖がられ、避けられたのだ。しかも、子狐様だけではなく、クティさんにも。


「子狐様に怖がられる原因、彰君分かる?」


 機嫌を損ねると分かっていたが、興味が勝って、気付けば聞いていた。

 案の定、彰は射殺さんばかりの眼力で私をにらみつける。

 聞いた直後に後悔する怖さだ。


「僕が分かるわけないでしょ。何なの、人を化け物扱いして」


 本気で腹が立っているらしく、そういって舌打ちすると、彰は乱暴に地面に座った。

 私と香奈も続いて地面に腰を下ろす。


 子狐様がいないので座布団もない。地面は固い。

 本来であれば普通のことなのだが、座布団に座ることに慣れ切っていたため違和感がある。いや、本当は座布団の方がおかしい。……なれって怖い。


「彰君、何かにとりつかれてない?」


 定位置に座ってから、改めて聞く。彰の眼光は怖いが、口に出してしまったからには最後まで聞こう。という勇気だ。

 子どもが見たら泣き出しそうな、迫力ある顔を向けられたが何とか耐えた。

 隣で香奈が流れ弾を食らって、悲鳴を上げたことには謝罪したい。


「どうして、そう思うわけ」

「……気のせいかもしれないけど、子狐様もクティさんも、彰っていうよりは彰の後ろを見ていた気がして……」

「……僕の後ろ?」


 私の発言が予想外だったのか、彰は驚いた顔をして背後を振り返る。

 私も彰の背後をじっと見つめてみるが、見えるのは森の木々だけ。特にいつもと変わらない景色が広がっている。


「言われてみれば、そうかも……」


 香奈の同意を聞いて、彰はますます険しい顔でじっと背後を見つめるが、私と同様何も見えなかったらしい。大きなため息をついた。


「一体何なわけ……」

「彰が分からないなら、私たちはもっと分からない」

「だろうね。君たちに期待してないよ」


 不機嫌にそういうと、リン絞めたら吐くか? と物騒なことを言い出す。

 解決できていない問題が山積みで、ずいぶんストレスが溜まっているらしい。

 リンさんには悪いが、私と香奈の平穏のために尊い犠牲になってほしい所だ。リンさんを殴ったら、少しぐらいは彰の気も晴れるだろうし。


「今の問題は、後ろの少女だよ」

 彰はそれた話題を本題に戻すためか、わざと固い表情を作る。


「他殺の可能性があるっていうのは、本当の話?」


 彰は声をひそめて、私たちに聞いた。他には誰もいないだろうが、内容が内容だけに自然と声が小さくなったようだ。

 いくら人がいないからといって、大きな声で話したい内容ではない。


「あくまで噂らしいけど、現世にとどまっている理由としては一番想像しやすいよね……」


 私の言葉に香奈は目を伏せた。マーゴさんは恨みは感じないといっていたが、少女は意思疎通が取れないほど弱っているとも言っていた。感情が弱すぎて、マーゴさんですら感じ取れないだけかもしれない。


「分かりやすくはあるけど……、決定打とは言えないんだよねえ」


 彰はそういって腕をくみ、眉間にしわを寄せる。そろそろ皺が消えなくなるのでは。と思うほど、ここ数日、険しい顔ばかり見ている気がする。


「僕もさあ、さらに調べてみたんだけど、谷倉唯と一緒にいたって友達が誰かまでは特定できなかったんだよね」

「谷倉唯?」


 聞きなじみのない名前に聞き返すと、彰があっと声を上げた。


「ごめん、言ってなかったね。後ろの少女の名前、谷倉唯っていうらしいよ」

「谷倉唯……」


 聞いた名前を何となく声に出してみる。ぼんやりとしていた少女の存在が、やっとハッキリした。同時に、本当に生きていた人間なのだと理解して、気が重くなる。


「8歳の時に事故死。両親は事故後、別の場所に引っ越したみたい。……娘の思い出が残る場所で過ごすのがつらかったんだろうね……」


 そういって、彰は遠くを見つめる。その目はいつもより不安定で、揺れているように見えた。

 そういえば、彰は母親と弟をなくしている。家族を失う気持ちを知っているからこそ、思うことがあるのかもしれない。


「結局は、君たちが聞いた話と似たり寄ったりなことしかわからなかった。追加情報は、谷倉唯をひいたトラック運転手の名前と、現住所くらい」

「いや、十分っていうか怖い」


 毎度思うが、そういう情報はどうやって仕入れているんだ。お前の幼馴染何者だ。と突っ込みたいが、突っ込むのが怖い。

 彰が説明しないということは、知らなくていい事だろう。と無理やり納得して、話の続きを待つ。


「安心して。関係ないだろうから、個人情報はさっさと忘れるよ」

「関係ないの?」


 香奈が不思議そうに聞く。

 友達が犯人じゃなかった場合は、次に恨まれていそうなのがトラックの運転手だ。関係ないという理由が分からない。


「見える条件に当てはまる。って分かってるのが今のところ、日下先輩に相談した後輩。あの場にいた僕らの中の誰か。だけでしょ。ってなると、トラック運転手は条件に当てはまるとは思えない」


 理由が分からず首をかしげると、彰はちょっと呆れた顔をしながら説明してくれる。


「自分をひいた相手を恨んで、運転手を探してる。っていうなら、見える条件は運転手に似ている人間でしょ。

 運転手は当時30代。僕らも後輩も10代の子供。クティとマーゴも外見だけなら20代。これで僕らの誰かが似てる判断なら、谷倉唯の顔認識能力に欠陥があるとしか思えない」

「トラック運転手が、ものすごい童顔だった可能性は?」

「……僕が容疑者の顔、確認してないと思う?」


 ちょっとした冗談のつもりだったのだが、冷たく見返された。

 そうですよねー。と答えながらも、名前と住所だけでなく顔まで確認済みって怖すぎるだろ。と冷や汗をかく。

 佐藤彰を敵に回したら、冗談じゃなく地獄の底まで追い回されそうだ。


「……トラック運転手って男の人だよね? 男の人にだけ反応してる……とか?」

 香奈が考え考え、口にする。彰はそれに眉を寄せた。


「たしかに男の人だけど、それだと条件に当てはまる人間が多すぎる。もっと噂になっててもおかしくないよ。日下先輩の後輩って元々見える人じゃなかったから、日下先輩に相談するほど怯えたわけでしょ。

 つまり、見えなくても条件が当てはまってしまえば強制的に見えてしまう。そんなのが緩い条件で見えたら、とっくにホラースポットになってる」


 彰の言葉に香奈が、そっかぁ……と肩を落とした。


「見える条件特定するためにも、日下先輩に後輩教えてもらうしか……」


 私はそう言いながら、同時に無理そうだなあと思う。

 昨日、寮母さんに話を聞いた後、私たちは日下先輩が帰ってこないかと玄関で待っていた。しかし、結論からいうと会えなかった。


 日下先輩は遅くまで学校に残る場合、寮の食堂を利用せずに購買部で事前に勝ったもので夕飯を済ませてしまうらしい。

 食堂の利用時間に縛られず、ギリギリまで学校で仕事をしたり、自室にこもって仕事をするためだという。

 高校生だというのに、すでに立派なワーカーホリックだ。寮母さんが心配するのも分かる。


 昨日も遅くまで生徒会室で仕事をし、私と香奈が夕飯を食べている間に自室に戻ってしまった。

 あのフラフラの状態から、遅くまで仕事をしていた。という事実を知っているだけに、自室に訪問する。なんて出来ず、私たちは今日、学校で話を聞こうとあきらめたのだが……。


「日下先輩、休みらしいね」

「彰君も聞いた?」


 考えることは彰も一緒だったらしい。私と香奈は朝一で3年生の教室にいったが、日下先輩の姿はなかった。

 代わりにいたのは小宮先輩で、美幸ちゃんなら休みだよ。とのんびりした笑顔で告げられた。

 2人がクラスメイトなのも新事実だが、真面目な日下先輩が学校を休んだ。という事実に驚き、ますます心配になった。


「日下先輩……大丈夫かな……」

「うーん、大丈夫かどうかは分からないけど、とりあえず今日は地元に帰ったみたいだよ」

「え? 地元?」


 何でそんなことを彰が知っているんだと、私と香奈はじっと彰を見つめる。

 私たちとは入れ違いに、彰も3年教室に日下先輩を尋ねにいったんだろうか。


「安否確認のついでに、何か情報もらえないかなーと思って生徒会室いったんだよね」

「生徒会室いったの!?」


 3年教室どころか、まさかの生徒会室。さすが彰君。行動がいつも斜め上だ。


「敵陣に乗り込むようなものじゃ……」

「敵対してるつもりはないんだけどなあ……。まあ、敵対してるって錯覚しそうなくらい、睨まれたけど。日下先輩、僕のこと何ていったんだろ」


 初対面で彰相手に討論したのとほぼ変わらない内容を、生徒会室でも役員に向かっていっていたのではないか。と私は予想を立てる。おそらく外れていないだろう。

 いくら耳が早いといっても、ここ数日で寮母さんにまで話が広まっているくらいだ。もしかしたら、行動を起こしたのが最近なだけで、もっと前からマークしていたのかもしれない。


 小宮先輩と同じクラスということは、小宮先輩を呼び出したあの時、日下先輩が教室にいた可能性もあるのだ。

 あの時の彰は見る人が見れば十二分に胡散臭かったし、小宮先輩が毒牙にかけられた。と思うのも納得だ。


「とにかく、君たちと一緒で、遠方から来た生徒なんだって。

 いつもは平日じゃなくて休日なんだけど、今回は急に休んだから、お前が何かしたんじゃないか。って、すごい疑われた」


 生徒会室でのやり取りを思い出したのか、彰が顔をしかめた。

 昨日、日下先輩が彰と待ち合わせしたことを生徒会役員は知っていたのだろう。業務連絡はキッチリするタイプだろう。

 あのフラフラの状態から、生徒会室に戻ったのも間違いない。

 寮に帰らず、別の場所で時間をつぶすような性格でもないし、理由もない。一人で考え事をするなら、それこそ寮に戻った方が早いのだ。


 生徒会室に戻った日下先輩が、弱った状態を上手いことを隠し通せたとも思えない。きっと、心配する役員に大丈夫。とごり押しで仕事をしたのだろう。

 その次の日に日下先輩らしくない休みとなれば、生徒会役員が彰を疑うのはもう自然の流れだ。彼らからすれば他の原因は思いつかない。その予想は的外れとも言い難い。

 直接的ではないとはいえ、彰が関わっているのは事実だ。


「日下先輩が地元から離れてるって意外……」

「私たちも地元から離れてきてるし、普通じゃない?」


 私の言葉に香奈は真剣な顔のまま、首を左右に振った。


「私たちは地元から離れたかったし、この学校の立地とか雰囲気を気に入って入学した。けど、日下先輩ってそういうタイプに見えない」


 たしかに、言われてみればそうだ。

 うちの学校は隠れ家的な雰囲気に惹かれて入学する、どこか夢見がちな生徒が多い。日下先輩はそういうタイプではないだろう。


「学力だって低くはないけど、高くはないし。日下先輩だったら地元で、偏差値がもっと高い学校いくらでも入れたんじゃないかな。先輩ずっと学年トップ維持してるんだよ」


 生徒会長というと頭がいいイメージがあるが、日下先輩はそのイメージを損なわない人らしい。

 真面目で責任感が強く、成績は学年トップ。生徒会長を絵に描いたような人物像だ。そう思うと、少しだけ怖くなる。


 昨日の寮母さんの話を聞いたせいだろうか。前だったら特に気にせず、すごいな。で済んだ話が、それすらも他人に尽くさなければいけない。という日下先輩の異質さによるもののような気がしてくる。


「昨日のことがショックで、気持ちを落ち着かせるために地元に帰ったんだとしたら、地元にいたくない。って理由で出たんじゃないと思うの。このあたりだって、もっと日下先輩にあった学校あるのに……、なんでうちの学校だったんだろう」


 香奈の言葉に私も考える。日下先輩は何にひかれて、わざわざ遠方からうちの学校を選んだのだろう。


「そう言われると変だよね。日下先輩、地元に帰るのって月一らしいし」

「月一?」


 遠方というからには離れているだろうに、月一で地元に帰る。それならば、黙って地元で進学した方が早い。何でわざわざ。という気持ちが強くなる。


「生徒会の人に聞いた話じゃ、誰かのお見舞いにいってるんだって」

「……彰君、睨まれたっていうわりには話聞きだしてるね……」

「ほら、僕って美少年だからさ」


 答えになってないことを笑顔で彰はいう。呆れる言動だが、不機嫌よりはいつもの彰らしい。


「お見舞いって誰の?」

「それは分からないけど。前に日下先輩が、精神科のパンフレッド持ってるの見たんだって」

「精神科?」


 日下先輩とはずいぶんイメージが、かけ離れた言葉だ。


「持ってる理由を聞いたら、知り合いが入院してて、お見舞いにいってる。って言ったらしいよ」

「精神科に入院してる知り合い……」


 訳ありな雰囲気しかないが、それならば余計に地元を離れた理由が分からない。

 月一で会いに行くのならば大事な人だろう。だったら近くにいたいと思うのが、普通ではないか。


 うちの学校に突出するような部活も学科もない。特徴といったら山の上という立地と、やけに整った校舎や寮くらい。日下先輩が魅力を感じるものがあるとは思えない。


「日下先輩もさ、叩けばホコリ出てきそうだよねえ」


 にやぁと意地の悪い顔で彰は笑う。日下先輩には色々と振り回されているし、初対面から散々に言われているから、やり返したいという気持ちがあるのは分かる。

 分かるが、今はタイミングが悪い。


「止めなよ。弱ってる人間にとどめ刺すようなこと」

「さすがに今はしないよ。日下先輩の弱み握るよりも、まずは日下先輩に頼まれた仕事をきっちりやり切って、僕の正当性を主張しないと」


 弱みはその後。と続きそうな笑顔に、私は顔をしかめた。

 今はしないだけで、機会があったらやる。という顔だ。本当に性格が悪い。


「そのためにも、さっさと解決しないといけないんだけど、日下先輩に後輩について問いただすのは帰ってきてからとして……。できたら、他の手がかりほしいなあ……」


 彰はそういって、うーんと唸る。

 他の手がかりがあるのならば欲しい所だが、やることはやった気がする。

 ほかに見落としはないか。と考え直しても、なかなか良い案が思いつかない。

 

 香奈はどうかと顔を見れば、彰と同じく真剣な顔で考えていた。表情が険しい所を見ると、私と同じく何も思いつかないらしい。


「とりあえず、もう一回現場見てみるかあ……」

 彰がつぶやく。私たちにいったというよりは、完全な独り言のようだ。


「現場……?」

「昨日とは様子が変わってるかもしれないし、もうちょっと観察したら何か分かるかもしれない」


 彰はそういうと、よっという掛け声とともに、身軽な動作で体を起こす。


「それって、幽霊をもう一回見に行くってこと?」

「それ意外に何があるの?」


 きょとんと首をかしげる彰。顔としぐさだけ見れば文句なしに可愛いが、私の顔は徐々に青ざめる。

 だって、幽霊をもう一度見る。ということは、あの悲惨な様子を見るということだ。


「別に、ナナちゃんたちは無理しなくていいよ。図書館とかで事件について調べるって手もあるし」

「いや、でも、彰君は平気なの!?」


 あんな悲惨なものを一度ならずも何度も。しかも今回は観察だ。前よりも凝視するということだ。思い出すだけでも胃液が逆流しそうになる、幽霊の現状を。


「慣れたよ」


 あっさり答えて歩きだす彰を、私はぼう然と見送る。

 もうすぐ午後の授業が始まる。このまま教室に戻るつもりなのだろうと、冷静な部分で考えた。


 こういう時に実感する。佐藤彰と私は見ている世界が違うと。

 きっと彰が見てきた世界は、私が日常だと思っていた世界よりも恐ろしく、血なまぐさく、悲しみに満ちている。それに慣れ切ってしまうほど、彰は何度も、それこそ日常になるほどにそんな光景を見てきたのだろう。


 全く別の視点を持った、まったく別の人生を生きてきた人間。それが佐藤彰であり、私が彰を理解できないのは、仕方のないことなのかもしれない。


「……香奈はどうする?」

 私は腰を浮かせつつ、座ったままの香奈に問いかける。


「七海ちゃん?」

「私は彰についてくけど、香奈はどうする?」


 私の言葉に香奈は驚いた顔をした。

 私たちは幽霊は見えないが、昨日、今日だ。一日ぐらいでは忘れられない衝撃を私は受けた。見えないと分かっていても、昨日の光景を思い出して平静ではいられないだろう。怖がりな香奈ならば尚更だ。


「無理しなくていいよ。何かあったら、ちゃんと伝えるし」

「……でも、七海ちゃんは行くんでしょ?」


 香奈の言葉に私は少しだけ迷って、それから深く頷いた。


 彰は言った。慣れた。と。

 それは裏を返せば、慣れる前は私と同じように悲しんだり、苦しんだり、辛い思いをしたということだ。

 最初から何も感じていない人間は「慣れる」なんて言葉使わない。


 それに気づいてしまったら、いくら慣れたといっても、1人で生かせるわけにはいかない。きっと彰には、余計なお世話。と言われてしまうだろうけど。


「じゃあ、私も行く」

 香奈はパンパンとスカートのホコリを払って立ち上がる。


「怖いけど、七海ちゃんが彰君を一人にできないように、私も2人を一人にできないから」


 にっこり笑った香奈に、勝てないなと思う。

 私の意図も、彰のこともちゃんと分かって、そのうえで笑うのだから。


「香奈って、怖がりなのか強いのか、たまに分からなくなる」

「七海ちゃんも面倒見いいのか、面倒くさがりなのか分からないところあるから、似たようなものだよ」

「あー確かに……」


 香奈の言葉には私は納得した。

 人間ってものは、矛盾を抱える面倒な生き物なのかもしれない。

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