三話
「わ、るかったな、?大丈夫か…」
勢いに驚きながら、思いの外、幼い少女に変態とか判断されたらどうしようと考えながらしばらく見つめ合うが
「…」
気まずい空気の中行き場の無い手をひくと、その手につられておちびさんが俺の足を見て、
目に見えて固まった。
そしてガン見である
我が一族は数こそ少ないが、知名度はそこそこある方なのに、
「あれ?蛇足みたの初めてか?」
よっぽどの僻地から出てきたのか、ちょっと意外に思いながら声をかけたが、
そのおちびさんの顔は呆然とし、みるみるる陶器の人形のように青ざめると、
「ちょ、おい」
涙が一筋したたって、こぼれ、
ふいに
彼女の体が揺らいで、
頭から受け身もとらず崩れ落ちた体を慌てて受け止めれば
触れた体はじんわりと暖かかった。
…断じて、俺は、何にも、し て な い 。
思わず、あたりをキョロキョロと見渡し誤解されたり誤解されたり誤解されたりしてないか人気を確かめてから、
一体、何があったのか、よくよく考え込んで、しばらく迷子を抱えて立ち尽くしてしまったのだった。
しかし
立ち尽くしていても、時間は止まらない
始業時間も、まもなく迫るし気を失った子供ほっぽり出したら、売っ払われるか、イタズラされるか
無難に、迷子センターにでも預けようかと決め込んで
頭を胸によせ腰と腿の裏をささえて両手でそっと抱え上げると、
香水だか何だかの臭いにまざって、ふんわりと嗅ぎなれない生き物の匂いがした
悪くない、いいにおいである
なるべく揺らさないように抱えなおすと
腕の中の生き物は胸に頭を擦り付け、心地よさそうにため息をついた
思わず ゆっくりと進みながら運んでいくが
まぶたがピクピクと動いて、
夢でも見始めたのか、嫌そうに眉間にシワをよせ歯ぎしりしだす。
「おい、」
耳障りな音に、仕方なく起こすことにして、声をかけるが
「おい、なあ」
起きやしねぇ。
歯ぎしりにイライラしながら、大人げないとは思うが上下にガキを振動させて
うっすらと目を開いた そいつは、目が覚めていくにつれ
…悪い夢でも、見ているような顔をした。
首を伸ばし、辺りをキョロキョロと不安げに見渡すから、
「そろそろ、迷子センターつくからな、泣くなよ?親御さんにきっとあえるから」
安心させるために言えば それに一瞬口ごもって、
「…ぁ、の」
人見知りする質なのかしばらくモゴモゴと
「おろして、ください」
うつむいて微かに震えた か細い声で、そう言った
ようやく喋り、意思表示のままに地べたに下ろしてやり
うつむいたままなので、視線を合わせて色々、先を促す。
「どうした?」
正直 時間がナイ。
なるべく猫なで声を出したものの
逆に怯えさせたのか、ポロリと子供から涙がこぼれて
「ぅ…」
総毛立つ
やっべぇ、泣くなよ。
どうしようかとパニックになりかけたが、再び口を開いたコイツが口にした話しに
時間とか減給どころの話じゃなくなった事に
絶句した、
「か、えりかたがわかんない」
並べられた単語は 異世界 ニホン? チキューゥ?、口早に捲し立てる話しと
とりあえず異世界と言うキーワードに、こいつは流されて来た奴だ、と理解した。
俗に言う 異世界トリップ
コチラの言葉で『流れ渡り』だ、と