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僕に回復魔法をください。  作者: シロツメヒトリ
サイドベルの章2
70/71

69.「喧嘩」

===================

 名 前:エル

 種 族:人間

 性 別:男

 年 齢:12

 所 属:サイドベル冒険者ギルド

 職 業:シーフ

 レベル:2

===================


 エルのギルドカードが発行された。

 彼は、やっぱりというか、シーフになったのだった。

 ていうか、レベル2って、僕より高いじゃないか。

 すごいねって褒めてあげたら、逆に馬鹿にするような目で見られた。

 なんでだ……?


 ギルドカードを手に入れたら、次は仕事を探さなければならない。

 シーフは、冒険者ギルドや商人ギルドの次ぐらいの規模を持つ、シーフギルドに所属することが多い。

 仕事をするうえで、何かと便宜を図ってくれるらしい。

 しかし、レベルが低いと舐められるのだそうで、シーフギルドに所属する前に、少しレベルを上げた方がいいという話になった。


「レベル20くらい、簡単に上げて見せるよ!」


 エルは、そう言って胸を張って見せた。

 僕は、レベル上げって難しいんだぞと親切に教えてあげようかと思ったが、ギルド内で冒険者たちが口論になっているのが見え、そちらに気を取られてしまった。

 「呪い」がどうとか、穏やかでない単語が聞こえてきたからだ。


 3人とも若い男性だった。

 1人は十字を意匠にした服を着ているので、多分、司祭だろう。

 他の2人は、やや筋肉質で、軽装の鎧と剣を帯びていたので、戦士か何かじゃないかと思われた。

 戦士が2人して、司祭に文句を言っているようだった。


「お前が《ヒール》をかけた痕が呪いにかかったんだから、お前の責任だろう?

 お前の神聖魔法で、ちゃちゃっと祓ってくれよ!」


「言ったでしょう!

 神聖魔法では、呪いは祓えないんです!」


「じゃあ、お前は、俺たちにこのまま死ねって言うのか!?」


「そんなことは言っていない!」


 見ると、主に文句を言っているのは1人で、その戦士は右上腕が真っ赤に腫れ上がっていた。

 もう1人の戦士も左上腕が腫れていたが、局所が腫れると言うよりは、腕が全体的に赤みを帯びていた。

 なんだかフラフラもしていて、文句を言っている戦士よりも具合が悪そうだった。


 ガシャーン!

 音がしたと思ってそちらを見ると、戦士が司祭を殴り飛ばしていた。

 司祭はカウンターに後頭部からのめり込んだ。

 ギルド内が騒然とする。


「お静かに!」


 良く通る声がギルド内に響き、騒然としたギルド内が一瞬にして静まる。

 声の主はカウンターの上に立っていた。

 ケビンだった。


「ハンスさん、何事ですか?

 小生にも分かるように説明して下さい。

 ギルド内での私闘には、相応のペナルティがあることをご存知ですよね?」


 どうやら、司祭を殴った戦士はハンスというらしい。

 ばつの悪そうな顔をして答えた。


「この前、俺とロイと、そこのデイビッドでパーティを組んで、オークの討伐に行ってきたんだ。

 オークは別に突然変異個体とかもいなくて、普通の奴らだったんだけど、俺もロイも、少し手傷を負っちまったんだ。

 んで、そこのデイビッドに《ヒール》で治してもらったんだけど、最近、治してもらったところが、どんどん腫れて痛くなってくるんだよ!

 魔獣から傷を受けると呪われることがあるって聞いたことがあったから、その呪いをデイビッドに祓ってもらおうと思ったのに、奴は祓えねえって言うんだ!

 呪いを受けた奴は死んじまうんだろ!?

 それを祓えねえって、どういうことだ!?

 それでも聖職者か!?」


 話しながら、だんだんヒートアップしてきたらしく、最後はデイビッドと呼ばれた司祭に向かって怒鳴りつけていた。

 デイビッドは壊れた酒樽をどかして、ふらふらと立ち上がり、身体に付いていた埃をはたき落しながら言った。


「ケビンさん、あなたなら分かるでしょう!?

 魔獣から受けた呪いは、神聖魔法では祓えないって!

 むしろ、遺族年金の手続きの仕方を教えてあげた方が、よっぽど建設的です!」


「なんだと、貴様ァッ!!」


 デイビッドの台詞はハンスの逆鱗に触れたらしく、ハンスはデイビッドに掴みかかろうとする。

 しかし、間にぬうっとケビンが入り、代わりにハンスはケビンの胸倉を掴む。

 いつの間にカウンターから降りたのだろう?


「どけよ、ケビン!

 あいつは、言っちゃあいけねえことを言った!」


 ハンスは顔を真っ赤にして怒っているが、ケビンはいつものような感じで、飄々と、ハンスの肩をポンポンと叩く。


「ハンスさん、怒る気持ちは分かりますが、落ち着いてください。

 そんなことより、耳寄りな情報があります。

 祓える方法があるかもしれない。

 そう言ったら、あなたは乗りませんか?」


 ケビンは、邪悪な笑みを浮かべてそう言った。

 彼の左目は、明らかにこちらを見ている。

 僕は、背筋が寒くなるのを感じた。

 そんな言い方をされれば、ハンスは絶対に乗るだろう。

 事実、彼は「乗る」と言った。


「カナンさん、あなたから見て、彼らの呪いは治せますか?

 先程から、一部始終を見ていたのは分かっています」


 ケビンがそう言って、再び邪悪な笑みを僕に向ける。

 ギルド内の視線が、一斉にケビンから僕に集まるのが分かった。

 ミューズ、ティア、リリーの3人まで、期待の目でこちらを見ている。

 僕は、逃げ場のなさを感じながら、それでも、しっかりと頷いて言った。


「治せると思います」

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