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僕に回復魔法をください。  作者: シロツメヒトリ
サイドベルの章2
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60.「学者」

「つまり、双子や兄弟がいない人では、治すのは難しいということですか?」


 ケビンの問いに、僕は頷いた。


「とは言っても、正常な眼球を摘出する必要がある。

 全盲ならともかく、正常に見える眼球が一つある相手に、自分の眼球を差し出すことはあまりないのではないかと思う。

 つまり、ケビンの視力が回復するのは困難だと言わざるを得ない」


 僕がそう締めくくると、ケビンはまた急に高らかに笑い出した。

 リリーだけでなく、僕やメリーもギクリとした。


「あーはっはっは。いやいや、ありがとうございます。

 こんなに整然と視力が回復しない理由を説明されたのは初めてですよ。

 知ってますか?

 こういう、治らない病気は、いい金づるになるんですよ。

 治らない理由を、信心が足りないとか、そんな理由にして、高い薬とか壺とかを売りつけたりする輩の多いこと多いこと。

 治らない、ときっぱり言って頂くことも重要だと思いますよ。

 まあ、カナンさんは、それでも何とかする方法をご存じのようですが……」


 ケビンの邪悪な笑みに、僕は再びギクリとさせられる。

 そういう思わせぶりの態度を取る習慣があるのか、実際に何かに気付いたのかは分からないが、要注意人物なのは確かなようだ。

 僕は、背筋が寒くなるのを感じた。


「で、カナンの職業は何がいいのさ?」


 しびれを切らしたティアが、横から入ってくる。

 ナイスだ、と僕はちょっとホッとした。


「そうですね、お話を聞いた限りだと、カナンさんに一番近い職業は、学者だと思います」


「学者!?」


 僕とティアの声が被った。

 予想外のような想定内のような職業だった。

 そんな職業があるんだ、というのが、僕の第一印象だった。


「はい。テーマを決めて、それについて研究し、研究成果を学界に発表する。

 ただ、学者はレベルについての認定が厳しいんですよね。

 少なくとも、小生ではレベル1しか認定できません」


「しょぼいなあ」


 ティアの発言に、ケビンは眉をひそめる。

 ちょっと気に障ったらしい。


「しょうがないんですよ!

 学者っていうのは、学界に支配されています!

 レベルを上げるのにも、論文を書いて学界に提出して認められる必要があるとか、そういう回りくどい方法しかないんです!

 戦闘職とは異なり、魔獣を倒しても、普通はレベルが上がりませんし」


 今度は、ティアが眉をひそめる番だった。


「なんか、学者になんか、ならない方がいいように聞こえるけど?」


「いえいえ。なるメリットはありますよ?

 まず、公共の図書館や博物館などの施設に無料で入れるようになります。

 一部の施設では、レベル制限がある施設もありますけどね。

 あとは、鑑定書を発行することができます。

 例えば、アーティファクトと考えられる壺のようなものを見つけたとしましょう。

 でも、それがアーティファクトかどうかを証明する方法はありません。

 有名な学者が、それがアーティファクトだと言った物がアーティファクトなんです。

 このように、アーティファクトとか古代の遺物とかを、そうであると証明する文書が鑑定書です。

 ですから、有名な学者が発行した鑑定書は、高額で取引されているんですよ」


 ティアは頭を抱える。


「全然、役に立たないじゃん。

 図書館とか博物館とかに入っても仕方ないし、鑑定書はそもそも有名にならなきゃ意味がないんだろ?

 有名になったらカナンは狙われる可能性があるから、できれば有名になってほしくない。

 てことは、鑑定書作成なんて、無意味じゃんか!」


 ティアの言うことにも一理あった。

 図書館とか博物館に入れるのは意味があると思うけど。


「まあまあ。

 職業は必ずひとつじゃないといけないって訳じゃないですし」


 僕は、メリーの意外な返答に、思わず聞き返した。


「え? 職業って複数選べるの?」


「はい。ただし、ひとつのギルドカードに登録できる職業はひとつだけです。

 複数の職業を選びたい人は、複数のギルドカードを持つ必要があります」


 メリーの説明に、ティアが割り込んでくる。


「ギルドカードは金貨1枚だよ?

 選べないからっていう理由でギルドカード増やしてたら、破産しちゃうよ。

 カナン、メリーは商売上手だから気を付けてね?」


 ティアの説明に、なるほどと思ってメリーを見ると、メリーは目を逸らした。

 商売しているという自覚はあったらしい。


 聞くところによると、ギルドカードを更新する際にも手数料を取られる場合があるらしい。

 冒険者ギルドって、どこで儲けているんだろうと思っていたが意外としたたかで、依頼料のピンハネもするし、国や都市からの援助も受けているし、就職できれば食いっぱぐれない、いわゆる優良企業なんだそうだ。

 ティアの言うことだから少し誇張もあるかもしれない。

 メリーは、慌てて否定していた。

 ケビンは、なぜか照れるように頭を掻いていた。


 結局、僕はケビンの勧める学者を選ぶことにした。

 少なくとも、身分証としてギルドカードは必要であるし、図書館や博物館がどのような所なのかは知らないけれど、僕としては面白そうだし行ってみたいと思った。

 合わないと思ったら、変えればいいのだ。

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