58.「レベル認定」
ケビンの仕事というのは、もちろんギルドマスターとしての仕事である。
ギルドマスターの仕事の重要なものの一つに、ギルド員のレベル認定がある。
レベル認定とは、ミューズが聖騎士レベル36だったりとか、ティアがアサシンレベル45だったりとかを認定する作業のことだ。
ギルド員は、ギルド員として登録された後に職業を決める必要がある。
これは、ギルド員の自由に決められる。
ギルド員が職業を決めたら、ギルドマスターはその職業であればレベルが幾つぐらいかというのを、独自の方法で認定する。
これが、ギルド員のレベル認定である。
ある程度のマニュアルは存在するらしいが、方法はそれぞれのギルドマスターに一任されており、ギルドの規模やギルドマスターの経験や名声によって、認定できるレベルが異なる。
以前、ティアやミューズに説明を受けた通り、ギルドカードのレベルは非常に重要な意味を持つので、なるべく高いことに越したことはない。
以上が、今、ケビンとメリーに受けた説明である。
「まず、エルフのお嬢ちゃん。
職業はシャーマンでいいですか?」
ケビンがリリーに聞く。
リリーは不安そうに僕の方を見上げ、それから答える。
「カナンと同じのがいい」
リリーの発言に、ケビンは急に笑い出した。
あまりに急だったので、リリーはビクンと反応し、僕の陰に隠れた。
あまり他人と接することがなかったリリーには、ケビンの濃ゆいキャラの刺激が強すぎるのかもしれない。
ケビンは、そのリリーの様子にあまり気にする様子はなく、先を続けた。
「小生は、こんな目をしていますが、目はいいんです。
お嬢ちゃんの周りには、すべての精霊が集まってくる様子が見えます。
お嬢ちゃんは、四属性すべての精霊に愛されていて、すべての精霊魔法が使えるのではないでしょうか?
精霊魔法の使い手は、職業としてシャーマンを選択することが多いです。
シャーマンのレベルは、どれだけ精霊魔法を使えるかで決まってきますからね。
どれだけ使えるかを見せてもらわないと何とも言えませんが、恐らく、お嬢ちゃんには小生の認定できる最高、シャーマンレベル20を認定できるんじゃないか思います。
対して、カナンさんの周りには精霊が見えません。
まったくです。皆無です。かけらもありません。
これは、この世界の住人としては、むしろ珍しいです。
カナンさんの住んでいた異世界というのは、精霊が全くいない世界だったのでしょうね。
そんなカナンさんに、シャーマンとして高レベルを認定することは不可能ですし、実際にシャーマンになったとして、レベルを上げることは非常に困難でしょう。
小生であれば、カナンさんにはシャーマンレベルゼロを認定したいと思います」
レベルゼロ……。
あったんだ、そんな圏外みたいなレベル。
まあ、日本には精霊魔法なんてなかったし、ケビンの言うことは僕にはすんなりと納得できた。
リリーは渋っていたが、ケビンが「シャーマンでいいですね?」と急なアップで聞いてきたので、再びビクンとして、コクコク頷いた。
その後、ずっと僕の後ろを離れない辺り、ちょっと刺激が強すぎたようだ。
涙目になっている。
ケビンはそんな反応をされても、別に気にしている感じはなく、むしろ楽しんでいるようだった。
「それでは、カナンさんの職業を決めましょう。
ちなみに、イシャという職業を、小生は知りません。
ギルドマスターは、自分の認識の範囲内でしかレベルを認定できません。
つまり、ここサイドベル冒険者ギルドでは、イシャを職業として認定できないということです。
ですから、あとはカナンさんの好きな職業を選んでもらうのがよいですね。
何がいいでしょうか?」
医者がダメと言われても、自分には、自分が他の職業に就いているところを想像できない。
生まれてから、医者以外の職業に就いたことがないのだ。
まあ、家庭教師とか、喫茶店でバイトをしたことはあるけど、それくらいだ。
職業・フリーターとかはないだろうし。
僕が悩んでいると、ケビンが助け船を出してくれた。
「そもそも、イシャとはどのような職業なんです?
人の病気を治すというのは、具体的にはどのようにしていたんですか?
神聖魔法を使うんですか?」
「科学的知識をもとに作られた薬や医療技術をもとに治療していく。
人体の生理現象について、特に詳しい知識があると思う」
「なるほど」
ケビンはそう言うが、よく分かっていないようだ。
自分も、逆の立場であったら、分からないだろう。
ケビンは少し思案していたが、しばらくするとポンと手を叩いた。
何かを思いついたらしい。
「分かりにくい時は、具体的な例を示してもらうのが一番です。
カナンさん。
小生は目を患っております。
カナンさんから見て、この目を治す方法はありますか?
なければないで構いません。
特に治ることに期待しているわけではありません。
カナンさんの返答を通じて、カナンさんがどのように病気にアプローチをするのかを知りたいのです」
ケビンの目は、期待というよりも好奇のために輝いて、こちらを見つめていた。




