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20.「魔法」

「じゃあ、僕も洗礼を受ければ魔法が使えるってこと?」


 僕の問いに、リックは、やはり首を振る。


「聖書に禁じられていることをしてしまうと、罪を犯したことになってしまい、奇跡を使うことはできなくなってしまいます。

 カナンさんは、聖書の内容を知らないと思いますので、聖書に書いてある通りの生活を送ることは難しいんじゃないでしょうか?

 教会の信者の中には、死ぬ直前まで洗礼を受けない者もいるほどです。

 神に赦された状態で死ぬと来世の生命を与えられる、というのが基本教義ですから。

 実際に洗礼を受けるのは、聖書の内容を理解し、聖書の通りに自然に生きられるようになってからの方が良いと思います。

 というのも、洗礼を受けられるのは、原則的には、一生涯に一度きりとされているからです。

 懺悔、つまり、神の前で罪を告白することで罪が許される場合もありますが、許されることを期待して罪を犯すことを神は禁じています。

 奇跡の使い手は、物心つく前から聖書と共にあり、聖書に沿った生活を息をするようにできる人であることがほとんどです。

 どうしても奇跡を使用したい場合は、聖書を充分に研究してからの方がよいでしょう」


 リックの言葉に、僕は少しがっかりした。

 僕も《ヒール》を使ってみたかったのだ。

 あの魔法を使えるようになって、日本に帰れば、医療の革命が起こると思った。

 まあでも、絶対に使用できないと言われたわけじゃない。

 聖書の研究をしてみてもいいかもしれない。


「じゃあ、精霊魔法ってどんなものなの?

 精霊魔法なら、僕にでも使える?」


 僕の言葉に、リックはまた首を振った。

 さっきから、首を振らせてばかりだ。


「精霊魔法とは、地水火風の四精霊に力を借りることで発動するということは先に言いました。

 この地水火風は、四元素とも言われています。

 この世界のありとあらゆるものは、この四元素で出来ていると考えられています。

 この四元素に、それぞれ精霊がいるということは、すなわち、この世のありとあらゆるものには精霊が宿っているということになります。

 精霊は、それぞれ地のノーム、水のウンディーネ、火のサラマンダー、風のシルフと名付けられています。

 精霊の加護を受けた人は、それぞれの精霊の声が聞こえたり、姿が見えたりするそうです。

 加護のない、ぼくには見えません。

 精霊魔法を使うためには、精霊の加護を受けて、精霊に力を借りる必要があります。

 分かりづらいですかね?

 要するに、精霊魔法とは、それぞれの精霊とお友達になって、力を貸してとお願いして、協力してもらう、というものなんです。

 精霊さんたちとお友達でない人が、精霊魔法を使うことはできません」


「精霊さんたちとは、今のところ、お友達じゃないな。

 どうすれば、お友達になれるの?」


「精霊にも、人間と同じように、それぞれ好みがあるようなので、一概にこうすればいいという方法はありません。

 しかし、たとえば、火山の近くに住んでいた人は火の精霊の加護を受けやすいとか、そういった法則はあるようです。

 火山というのは、火の元素が多い場所と言われています。

 その他、水源の近くでは水の元素が、地下洞窟では土の元素が、風通しの良い丘では風の元素が多いと言われています。

 性格なんかも、元素に影響されると言われることがあります」


 性格が元素に影響されるというのは、多分、四体液説の話だろう。


「あと、火と水、地と風は、それぞれ相反する元素と言われています。

 このため、2種類までの精霊の加護を受けている人は、比較的多いのですが、3種類以上の精霊の加護を受けている人は、ほとんどいません。

 精霊の加護は、自然と共に生きている人たちに多く与えられるとも言われ、人間よりもエルフのような種族に加護を与えることが多いようです」


「エルフなんて、いるんだ!」


「いますよ?

 非常に長命の種で、皆美しい容姿をしていると言われています。

 金色の髪、緑の瞳、長い耳、透き通るような白い肌、すらりとした四肢。

 これらが、エルフの特徴ですね。

 でも、ぼくは実際には見たことないです。

 森の奥の方に住んでいて、めったに人前には姿を現さないと言われています。

 ティア姉さんも、見たことないって言ってました」


 各地を飛び回っているティアが見たことないということは、余程の希少種なのだろう。


「じゃあ、もしかして、精霊魔法を使うのって、神聖魔法や暗黒魔法よりも難しい?」


 僕の問いに、リックは力強く頷いた。


「はい。少なくとも、人間の使い手はごくごく少数です。

 ぼくは、見たことありません」


 僕は、その回答にがっくしと肩を落とした。

 いや、でもまだ、もう一つある!


「じゃあ、古代魔法はどう?」


「古代魔法は、条件さえ整えば、誰でも使用できます」


「おお!」


 僕は、リックの色よい返答に、身を乗り出して聞き入った。


「カナンさんが、こちらの世界に来たのも、古代魔法の可能性が高いです。

 ただ、古代魔法の厄介な点は、使用するための条件が、既に失われているというところです。

 一部の古代魔法を独占している部族・種族もあるそうですが、そういった情報はあまり外には出てこないものです。

 他の人たちに狙われますからね。

 あと、古代魔法と名前が付いていますが、本当のところ、魔法かどうかかも怪しい所があります。

 古代魔法は、異世界からもたらされたアーティファクトなのではないか、という説があったりしますが、カナンさんの話を聞いていると、その説はかなり有力なのではないかと思います」


 確かに、僕がワープしてきたということは、もっと文明が進んだ他の世界からワープしてきた人もいるかもしれないし、そういう世界の利器が、この世界にもたらされた過去があっても不思議ではない。


「実は、古代魔法も見たことないんですよね。

 カナンさんは見たことあります?」


 リックの問いに、僕は首を振った。

 どうやら、僕が魔法を使うのは、かなり困難なようだということは分かった。

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