年明けまで
年末の夜。
家の外では雪が降り、地面や屋根に少しずつ積もり始めていた。
明日から1月か。1年は早いな。始まったばっかだと思ったら、もう終わる。あ、少し鬱になってきた。なによりこの寒さが動くのをおっくうにしてくれるんだよな。布団が心地よすぎる。こたつもやばい。こたつに入ってたらもう抜け出せない。そのまま眠ってしまったらもうダメだ。あの罠から這い出ることは不可能だろう。
「寒い」
「こたつに入ってるのに?」
「ストーブも付いてるな」
「なのに寒い?」
「寒い」
と、こたつに入って会話する2人。
部屋の隅に設置されたストーブはこたつの方を向いている。こたつの上には、かごに入ったミカンが乗っている。
そのこたつに向かい合って座り、テレビを見ている。
テレビの中では、笑った芸人が罰としてしばかれていた。
「アハハハ!」
「あんた、これ好きね」
爆笑するオレを尻目に、ミカンをつまむ彼女。
「おう!おもしれーじゃん!!」
オレもミカンに手を伸ばし、皮を剥き始める。
「わたし紅白見たい」
「えー?歌聞くのもいいけど、こっちのが面白いじゃん」
「…まぁいいけど」
不満そうだが、しょうがなくミカンをつまんで食べる。
「なんだー?おにいの見るテレビが不満なのかー?」
と、こたつの中からヒョコッと顔を出す妹。妹はそのままオレの方に近づいてきて、オレと同じ場所からこたつに入る。それを彼女は引きつった笑顔で見る。
「おい、邪魔」
膝の上に乗っかられて、妹の頭がテレビを阻む。中学生の体の重さと、ツインテールが視界にピョコピョコと入りうっとうしい。
「あー、お兄ちゃんそんなこと言って、もうツ・ン・デ・レさん♪」
そういって、オレの頬を指で突く。
「……」
「えへへ、ふにふに」
笑顔で頬を突く妹。
「…離せ」
「はい」
妹は指を離し、大人しくテレビの方を向いた。
「なぜどかない」
「座り心地がいいから」
そういって、わざわざ座り直す妹。
「むぅ…」
ミカンを食べてた彼女がムスッとし始めた。
「あー、嫉妬?嫉妬してるの?お兄ちゃん私に取られたから」
ニシシ、とイタズラっぽく笑い彼女をおちょくり始める妹。
「べ、別に嫉妬なんて…」
「ふふん、おにいの膝は座りやすいなぁ!」
勝ち誇った様な表情をする妹。
なぜか、それに悔しそうな顔をする彼女。
オレはそのやり取りを見ながらひたすらみかんを食べる。
「あ、みかん無くなった。」
かごの中はからっぽ。その代わりに、オレの前にはみかんの皮が大量にある。
「みかん」
妹の頭を軽くペシペシとはたき、みかんの補充を頼む。
「はーい」
妹は素直に頷き、オレの膝から立ち上がりみかんの補充をしに部屋から出ていった。
「…なんであんたの家に来ると、いつもあの子は私を目の敵にするわけ?」
はあ、とため息をつきオレの方を見る。
「遊び相手をとられるから?」
「そんなわけあるか。ばか」
ジト目でオレを見る彼女。
なんだよ、そんなことわかんねーじゃんか…。
「あんたは誰にでも優しくしすぎなのよ」
そう言って、こたつの上に両腕を乗せ、その上に顎を乗せる。ボーッと目はオレの方を見てる。
「そーかなぁ」
普通にしてるだけなんだけどなぁ。
「私にも優しくしなさいよ」
「はいはい」
やれやれ、と彼女の頭を撫でる。髪の毛が乱れないように、でもしっかりと撫でる。
「…」
それに満足そうな表情を浮かべている。
そこへドアを開けて部屋に入ってきた妹。手にはかご一杯のみかんが入っている。
オレが彼女の頭を撫でてるのを見て顔をこわばらせ、慌てて近づいてくる。
「おにいのなでなでは、私だけのもの!!」
かごをこたつに置いて、彼女の頭からオレの手をどかす。どかすというか、はね除けた。
「おまっ…」
顔を引きつらせる。彼女も今のには驚いてるようだ。
「ほら、次私!私!!」
そういって、うきうきしながらオレの横に座る。
「しょうがないな」
呆れながら妹の頭へと手を伸ばす。
それにやはり顔をしかめる彼女。
「ふん!」
「あだっ!?」
オレの手は妹の頭へと縦に振り下ろした。それを思いきり受け、頭をさする妹。
「いい加減にしとけ。いくらお前でも怒るぞ」
「うぅ…、おにいのアホー!!」
と、言い放ち部屋から走って出ていった。
「あーぁ、泣かしちゃった」
「今のはあいつが悪い。」
はぁ、と腰に手を当てて呆れる。
「さーてと、みかんを食おう」
静かになったし、みかん来たしテレビ見ながらゆっくりするかね。
こたつにまた足を入れ、みかんを手にとる。
「のんきね…」
彼女もこたつに入り、みかんをとる。
「みかんうまー」
「そーね」
みかんをモグモグ食べるオレ。それを見ながら自分のみかんを食べる彼女。
時間はもうすぐ0時を報せようとしていた。
ホントはもうちょっと前に更新するつもりでしたが、遅れました。
そして、遅れましたが明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
で、今日から活動を再開していきます。