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四章 ポジティブシンキング

四章 ポジティブシンキング



 ユエの身体が降ろされたのは、それから3日後のことだった。学校に姿を見せないことを心配して、カオルというユエのクラスメイトの男子が様子を見に来たのだった。

俺たちは、その様をずっと眺めていた。ユエの身体は、見れたものではなかったが。やっと供養されると解って、幾分かほっとした。だが、当のユエにはそれも恐怖でしかなかったようだ。身体が焼かれて無くなるのは、酷く辛いことだろう・・・。

 それよりも、


「これからどうしろというのだ。」

「それは俺の台詞だよ。てっきり、お迎えか何か来てくれると思ったのに」

 そういえば、こんなことも誰かが言っていた。人には定められた寿命があって、その寿命を全うするまでは、自殺してもこの世に居なくてはいけないとか。あるいはこの世に未練があるからあの世にいけないとか。

 何が本当なのか、見当もつかない。

「なんだ、お前らしくないじゃないか。何が本当かなんて、お前が信じたら、それが本当になるんじゃなかったか?」

「いや、そりゃそうだけどさ。それは俺の中での話であって・・・。」

「俺の中の?ふふん、内と外を隔てる皮膚がどこにあるというんだ?お前はもはや零体に過ぎないんだぞ?」

 まあ、確かに。ここにミスター・クロックマンが居る時点で、すでに内と外の区別が無い世界であるこが解る。

「まったく、何のための俺様だと思っているんだ?お前の幻想を現実にするための存在ではなかったか!」

「そうだけど・・・。」

 そして、ミスター・クロックマンは俺の中にあるしこりを敏感に察知していた。そして、その内容も、おそらく全部お見通しなんだろう。

「お前のことは、嫌いではない。ユエはそういうものへの耐性がある。いや、無いといったほうが正しいのか?たとえば、そのぶっ飛んだSF映画さながらの願望とか・・・。」

 こうして具現化したことで、ミスター・クロックマンを俺以外の誰かとして認識しかけていたが。なるほど俺の分身だ。なぜミスター・クロックマンが俺の妄想を知っているかというと、そもそも俺にそんな幻想を抱かせるような存在はミスター・クロックマンしか居ないからであって・・・。

「俺様はユエが認めた真実を、真実としてその世界で実現し行使する存在。お分かりかな?」

「解ってるさ。こうしていても埒が明かない。どうせやることもないし、少しでも可能性があるのなら、やらないよりもやったほうがいい。幸い、ミスター・クロックマンのおかげで不可能ではないようだし。」


 「後悔先に立たず」。そう、後悔しても、過去には戻れない。けれど、それが俺の思い残したものである以上、過去に戻ってやり直さなくてはいけない。願わくは、俺と母さんと父さん。俺の家族が幸せに微笑んでいる世界になるように。

「解っているだろうが、この世界のお前はすでに死んでいる。たとえ過去に戻ってお前が望む幸せな未来とやらにたどり着いたとしても、干渉した事でそこから枝分かれした先の未来の話であって、お前とはまったく関係の無いお前の未来だ。それを忘れるな。」



「ユエちゃん、あなたの好きなようにやるんだよ。それで貴方が幸せになれたら、お母さんも幸せだからね。」

 そう言って、母親はユエを抱き寄せた。



「母さんに、ステキな世界見をせてあげるから。待ってて・・・、母さん。」


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