幕間 静かな前進
澪が傍にいることが、
いつの間にか当たり前になっていた。
彼女が来てから、
魔力の揺らぎは減り、
眠れない夜も少なくなった。
戦場で剣を振るう感覚も、
以前より落ち着いている。
澪が傍にいるだけで、
かつて知らなかった安らぎがある。
それなのに、彼女は時折、
自分がここにいていいのかと
不安げな表情を浮かべる。
そのたび、
胸の奥に、微かな違和感が残った。
ならば、
不安にさせる理由のほうが、
余計なのだと思う。
アルジェリスは、
王のもとへ向かった。
特別な説明はしない。
彼女と婚約したい旨だけを告げる。
王は一瞬、
アルジェリスの顔を見たが、
すぐに頷いた。
この国にとって、
アルジェリスが安定している状態が
最も望ましい。
彼が望むなら、
それが答えだった。
重臣も、神殿も、
同じ判断を下す。
異を唱える者はいない。
話は、それで終わった。
部屋を出たとき、
胸の奥に残っていた違和感が、
少しだけ薄れているのに気づく。
これでいい。
澪が、
自分の居場所を疑わなくて済む。
それだけで、
進める理由としては十分だった。
アルジェリスは、
歩きながら静かに思う。
澪が傍にいる未来が、
これからは当たり前になる。
ただ、その形を
整えただけだ。
婚約が確定したことを知り、
アルジェリスは胸の奥で、
小さく息を吐いた。
張りつめていたものが、
静かにほどけていく。
これでいい。
アルジェリスはようやく、
落ち着くことができた。




