表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第6話 不要とされた者の名が広がる時


翌朝、

目を覚ますまでに

時間がかかった。


胸の奥が

鈍く痛む。


呼吸を

整えるだけで、

少し疲れる。


「……削りすぎましたね」


独り言は、

誰にも

返されない。


それでも、

起き上がった。


止まれば、

終わる。


ギルドに向かうと、

入口の前が

ざわついていた。


人だかりの

中心で、

声が上がる。


「回復士を

呼んでくれ!」


「昨日の

坑道の件だ!」


私は、

足を止めた。


ミルキィが

人波を

かき分けて

こちらを見る。


「レティーナさん!」


小走りで

近づいてきた。


「指名依頼が

三件来ています」


「……私に?」


驚きは、

正直だった。


「はい」


彼女は

頷いた。


「成功率が

低い依頼ばかりですが」


それで、

理解した。


誰も

受けたがらない。


だが、

捨てられない命。


それが、

私の居場所。


ギルド奥の

応接室で、

ダーレンが

腕を組んでいた。


「話がある」


声は、

以前より

硬い。


私は

椅子に座る。


「君の名前が

広がっている」


「効率は悪いが、

生還率が

上がる回復士」


評価は、

歪んでいる。


「……問題

でしょうか」


ダーレンは

一瞬、

言葉に

詰まった。


「問題だ」


はっきり

言った。


「ギルドは

数字で

動く」


「君のやり方は、

規格外だ」


私は

静かに

答えた。


「規格に

命は

含まれていますか」


沈黙。


それが、

答えだった。


「制限を

設ける」


ダーレンは

告げた。


「君の依頼は

ランク外扱いだ」


「報酬は

最低額」


「それでも

受けるなら、

止めない」


追放では

ない。


だが、

冷遇だ。


私は

少しだけ

考えた。


そして、

頷いた。


「受けます」


理由は、

単純だった。


選んでいる

場合では

ない。


応接室を

出ると、

廊下の向こうに

ブルーが

立っていた。


久しぶりに

見る顔。


「……レティーナ」


声が、

低い。


「聞いた」


「坑道のこと」


私は

立ち止まらなかった。


「そう」


それだけ

答える。


「なぜ、

言わなかった」


「命を

削ること」


足が、

止まった。


振り返る。


「言えば、

あなたは

止めたでしょう」


ブルーは

否定

できなかった。


「私は、

止められる

覚悟で

やっていません」


それが、

決定的な

違いだった。


ブルーは

何かを

言いかけ、

口を閉じた。


その背後で、

ニールが

こちらを

見ている。


視線が、

鋭い。


――気づいている。


私の

限界に。


だが、

それでも。


私は

受付へ

向かった。


ミルキィが

依頼票を

差し出す。


「……覚悟は

ありますか」


私は

微笑んだ。


「必要と

される限り」


外に出ると、

空は

曇っていた。


重い雲が

垂れ込め、

今にも

雨が

降りそうだ。


不要と

された者の名が、

広がっていく。


皮肉だと、

思う。


それでも。


呼ばれる

場所が

あるなら。


私は、

今日も

行く。


誰かが

捨てた

その先へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ