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第2話 追放回復士の値段


ギルドを出ると、

外の空気は冷えていた。


石畳の通りを歩く人々は、

誰一人として

私を気に留めない。


それが、

少しだけ楽だった。


冒険者証は返却した。

今の私は、

ただの無所属だ。


「……宿を探さないと」


呟いた声は、

風に消えた。


ブルーファングにいた頃は、

宿代の心配など

したことがなかった。


回復士は後衛。

危険は少ない。


そう言われる。


けれど実際は違う。


命の流れを読むため、

私は常に

仲間の限界を見ていた。


それを、

誰にも話さなかっただけだ。


通りの角で、

掲示板が目に入る。


依頼票が

雑多に貼られている。


その中で、

一枚だけが

私を呼んだ。


――下水区画

――原因不明の衰弱者多数

――報酬:銀貨三枚


「安い……」


思わず声が出た。


だが、

条件が気になった。


“原因不明”


これは、

傷ではない。


命の流れが

乱れている可能性が高い。


私は依頼票を剥がし、

受付に向かった。


そこにいたのは、

ミルキィだった。


「あ……レティーナさん」


彼女は一瞬だけ

言葉に詰まった。


「無所属の依頼受付も、

可能ですか」


私は淡々と

そう聞いた。


ミルキィは

小さく頷いた。


「はい。ただし……」


「報酬は、

冒険者ランクに応じて

減額されます」


「承知しています」


それでも、

構わなかった。


命の乱れは、

放っておけば

死に直結する。


下水区画は、

街の北側にある。


石造りの蓋を開けると、

湿った空気が

押し寄せた。


中には、

倒れた作業員がいた。


傷はない。

呼吸は浅い。


私は膝をつき、

そっと胸に手を当てた。


――乱れている。


命が、

細く絡まり、

詰まっている。


「やっぱり……」


私は目を閉じ、

魔力を流した。


回復魔法とは、

壊れた箇所を

直すものではない。


流れを、

元に戻す技だ。


時間はかかる。

だが、

確実に救える。


十分ほどして、

作業員の呼吸が

安定した。


その時だった。


「……あんた」


背後から、

低い声がした。


振り返ると、

三人組の冒険者が

立っていた。


装備は粗末だが、

視線が鋭い。


「回復士か?」


「はい」


短く答える。


男は

鼻で笑った。


「じゃあ、

ちょうどいい」


「うちの仲間が

倒れてる」


「タダとは言わん」


その言葉に、

胸が少しだけ

温かくなった。


必要とされる。


それだけで、

今は十分だった。


「案内してください」


私は立ち上がり、

そう答えた。


回復士は不要。


そう言われた私の値段を、

これから――

私自身で

決めていく。


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