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第1話 癒やし手は不要と告げられた


冒険者ギルドの待合室は、

昼前だというのに薄暗かった。


石造りの壁に吊るされた魔灯が、

淡く脈打つように揺れている。


その中央で、私は立っていた。


「結論から言おう」


ギルド長ダーレンは書類から

視線を上げずに言った。


「ブルーファングから、

回復士レティーナを外す」


言葉は短く、

それだけで十分だった。


「……理由を、

お聞きしてもよろしいですか」


声が震えないよう、

私は胸の奥に力を込めた。


ダーレンは溜息をつき、

初めて私を見た。


「回復が遅い。

それに効率が悪い」


「最近の戦闘記録を見ると、

被害が大きい」


「もっと即効性のある

回復士はいくらでもいる」


数字と評価。

それが彼の判断基準だった。


「……私の回復は」


言いかけて、

言葉を飲み込む。


私の治癒は、

命の流れを整えるものだ。


傷だけを塞ぐのではない。

無理に繋げば、

後で必ず歪みが出る。


だから時間がかかる。


「説明は不要だ」


ダーレンはきっぱりと遮った。


「冒険は戦争ではないが、

遅い回復は死を招く」


その理屈は、

間違ってはいなかった。


だからこそ、

胸が痛んだ。


横に立つブルーは、

唇を強く噛んでいた。


「俺は反対だ」


短く、しかしはっきりと

彼は言った。


「レティーナがいなければ、

俺たちは三度死んでいる」


ドレッドは無言で頷き、

ニールは目を伏せた。


それでも、

決定は覆らない。


「感情論だな」


ダーレンは冷たく言った。


「パーティは成果で判断する」


その瞬間、

私は理解した。


ここでは、

私の“救い方”は価値にならない。


「……わかりました」


自分でも驚くほど、

穏やかな声が出た。


「本日付で、

ブルーファングを離れます」


ミルキィがそっと、

私に冒険者証を差し出した。


「……ごめんなさい」


小さな声で、

彼女はそう言った。


私は首を振り、

微笑んだ。


「いいんです」


本当に、

そう思った。


癒やし手は不要だと

言われたのなら。


私は――

私のやり方で、

生きるだけだ。


魔灯の明かりが、

やけに眩しく感じられた。


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