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放課後の安楽椅子探偵:鷹と梟の事件簿 非日常は明星高校ミステリー研究会にお任せを!  作者: 佐倉美羽
第一幕 鷹の聴取

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第7話 杉浦カズキの照明

「じゃ、早速なんですが、間宵まよいライラさんに偽台本を渡したという話は事実ですか?」


「いやいや!確かにライラちゃんに渡したけど!俺も被害者なんだって!」


 机で築かれた壁に囲まれて、卓上ライトが芹澤せりざわミヤコと杉浦カズキを照らす中、杉浦すぎうらカズキは手を大きく振って否定した。


「ほほう!被害者というと?」


「俺も誰かから渡されたんだよ。裏方の誰かに」


「裏方の誰か、というと、どなたですか?」


「……わからねぇ。よく見えなかった」杉浦すぎうらカズキは、眉をひそめながら言葉にしずらそうに言った。


「……そんなことってあるんですか?暗くて見えないという意味ですか?」


「それもあるけど、あの時はルカちゃんの事故があって、皆浮足立ってたんだ。俺も3年照明やってっけど、初めてだったよ。あんな現場」


 杉浦すぎうらカズキによると、当日の舞台裏はプチパニック状態。皆が自分の役割をこなすことで精一杯だった。そんな中で杉浦すぎうらカズキは照明の調整と確認作業中時に、誰からか偽台本を受け取って、間宵ライラに渡すように言われたと。間宵まよいライラも相当参っている状態だったので、声を掛けたとのこと。


 ルカちゃん……というのは、寺前てらまえルカのことね。月の姫役を事故で降ろされた悲劇のヒロイン。チーム内でも尾を引いているということか。あとで佐伯さえきさんにも聞いてみるか。


「そうだったんですね……。その裏方は男性だったか女性だったかはわかりますか?」


「あー、男だったと思う。高い声の男」


「高い声……、今聞いてみて特定できそうですか?」


「いや……すまん。自信ねぇわ。あの時は本当に騒がしくてよ」


 ……自身ない、か。要領を得ないな。ダメだ。参考にならない。別の切り口を試してみるか。

 ミヤコは机に肘を置いて手を組んだ。


「ふむ、なるほど。寺前てらまえルカさんの事故について、詳しく教えていただけますか?」


「え、ルカちゃんの?なんか関係あんの?」


「ない、とは言い切れませんね。改竄かいざんされた台詞といくら一致するところがありますし」


「へー、じゃあ犯人は台詞を通して何か言いたかったってこと?」


「まだ確実なことは分かっていませんので何とも」


 杉浦すぎうらカズキは背もたれに大きく身体を預けて、頭の後ろで手を組んだ。そして、思い出すように視線を天井に泳がせながら言った。


「なーほーね。あれめちゃくちゃ大変だったんだぜ。フレネルレンズライトっていう吊り下げる照明があるんだけどよ。あれが落ちたんだよ。ルカちゃんガチ泣きしてて、マジでヤバかった」


 芹澤せりざわミヤコが詳しく話を聞くと、フレネルレンズライトは本来、吊りバトンにネジとセーフティワイヤーの二重で固定するようになっているらしい。だが、事故当時にはネジもセーフティワイヤーも老朽化しており、バトンを下ろした衝撃で破損。落下事故が起こったようだ。


「うわぁ、それはひどい。杉浦すぎうら先輩はその場に居たんですよね?」


「おー。いたいた。最初は俺の確認ミスみたいに言われててさ、マジ勘弁してくれよって感じ。俺が女の子照らすのに手抜くかっての」杉浦すぎうらカズキは鼻に皺を寄せて言う。


「先輩、疑われたんですか!?大変でしたね……」


「もう必死よ!セーフティも直前に確認してたんだけど、ネジの固定が根元から折れるなんて誰が予想できるんだよって」


 身体を起こして、身振り手振りを交えて説明する杉浦すぎうらカズキの目には出会ったときの軽薄さはどこにもなかった。


「なるほど。詳しく教えていただきありがとうございます。ところで、寺前てらまえルカさんは今どうしていますか?」


 杉浦すぎうらカズキは腕を組んで難しい顔をしながら「もうだいぶ休んでるなぁ。ルカちゃんも3年だし。だいぶショックだったんじゃないかな……」と、唸った。


 瞬間、芹澤せりざわミヤコはメモに視線を走らせる。

 ――悲劇は神によってもたらされる。光が堕ちる。運命なんてことはない、か。やっぱり、偽台本の台詞と事故は繋がっている気がする。なら、この場合における“神”って誰のことだ……?光を操作する照明担当?あるいは……


「そうですか……心配ですね……。これが最後の質問なんですが、脚本担当の佐伯さえきシズカさんのこと、どう思いますか?」


佐伯さえき?アイツ、元々、照明だったんだけど、脚本に移ってからはあんまり絡んでないなぁ」


 ミヤコは方眉を吊り上げて、こめかみに手を当てた。

 ほう。佐伯さえきさんは元々、照明担当だったと。これも後で聞いてみようか。


「そうでしたか。聞きたいことは以上です。何か言っておきたいことはありますか?」


 杉浦すぎうらカズキは「くぅ~終わったぜ~」と伸びをして再び頭の後ろで手を組んだ。


「あの20を言ってはいけないゲーム。なんであんなにつえぇの?コツとかあんの?」


「それはですねー……」ミヤコは顎を撫でながらニヤリと笑った。


「……それは?」


 そして、十分に間をおいてから「内緒です!ご協力ありがとうございました!」と言って、卓上ライトを消した。

 杉浦すぎうらカズキはガックリと肩を落として「俺は諦めてねぇからな!次は勝つ!」と捨て台詞を残して去っていった。

 そして、音を立てて閉じられた扉を眺めながら芹澤せりざわミヤコは呟くようにして言った。


「先手必勝なんだよね、あれ」


 ◇◇◇


『ミス研グループチャット(2)』


【ミヤコ】照明の杉浦カズキさんから話聞いたよ!添付はこれ!(16:46)


【リカ】またやったんですか。あのゲーム。先輩は悪い人ですね(16:46)


【ミヤコ】くくく……あれくらい見破れる人じゃないとダメダメ!(16:46)


【リカ】杉浦カズキさんには台本のアリバイが一切ありません。要注意人物です(16:46)


【ミヤコ】そうだよねぇ。事故について疑われてたってのも気になるし(16:46)


【リカ】佐伯シズカさんとは元同じチームですか……本当にそれだけでしょうか(16:46)


【ミヤコ】多分違うね。もっと親しい仲だと思う(16:46)


【リカ】……ふむ。ミヤコ先輩が言うならそうなのでしょう。次は誰に話を聞きますか?(16:47)


【ミヤコ】いったん、佐伯シズカさんに話を聞いてから、主演の俳優さんかな(16:47)


【リカ】分かりました。事故や偽台本の台詞についても詳しく言及してみてください。(16:47)


【ミヤコ】オッケー!(既読)


 つづく

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