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放課後の安楽椅子探偵:鷹と梟の事件簿 非日常は明星高校ミステリー研究会にお任せを!  作者: 佐倉美羽
第一幕 鷹の聴取

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第4話 演劇部の役者たち

 軽いサウナのような廊下を抜けて、芹澤せりざわミヤコは佐伯さえきシズカに連れられて演劇部エリアの扉を開けた。アルプスの恵みのような風が頬を撫でる。


「涼しい~!この世のオアシスだねぇ!」


 その言葉に驚いた部員たちが一斉に芹澤ミヤコの方を見る。どの顔も誰?と言いたげな表情だ。

 演者エリアの教室には机が一つもない。

 壁際には、五人並べば全身が映るほどの大きな立鏡が置いてある。日当たりも良くて見通しが良い。それだけで広く感じられる。


「皆さん、稽古中に失礼します。こちらはミステリー研究会の芹澤せりざわミヤコさん。昨日の台本差し替えについた調査を依頼しました」


 後ろで佐伯さえきシズカがハキハキとした口調で告げる。ミヤコは片手を上げて「どうも~」と挨拶をした。教室内がどよめいて、皆視線が泳いでいる。ミヤコはあまり歓迎されていない空気を肌で感じて、姿勢を正した。


「そんなに時間は取りません。月の姫役と太陽の戦士役の俳優さんにお話しを伺ったらすぐに帰ります。どなたですか?」


 教室の隅にまで届く声で芹澤ミヤコが告げると二人の生徒が控え目に手を上げた。


「お!協力ありがとう!じゃあ、佐伯さん、どこかで話せる場所用意できる?無ければミス研の部室使うけど」


 佐伯シズカは「問題ありません。すぐに手配します」と、表情一つ変えずに告げると小走りで教室を出て行った。今の彼女にはメソメソした雰囲気は一切なく、どこか鋭利さを感じさせる。あれが普段の佐伯さえきさんなのかな。


「よろしく!じゃあ、まずは……月の姫役の方から!」


「あ、はい」


 月の姫役の生徒は一歩前に出て会釈した。ミヤコもつられて頭を下げながら盗み見る。色素の薄い白い肌にブルーブラックの髪。スッと通った小ぶりな鼻。そして、何よりも目を引くのが蒼い瞳。異邦の血を感じさせる容姿だ。


間宵まよいライラです。演劇部演者班所属の1年です。どうぞよろしくお願いいたします」


「おお!これはご丁寧に。お芝居見ましたよ、間宵まよいさん!良かったなぁ……!歌めちゃくちゃ上手ですね!」


 間宵まよいライラは「いえ……そんな……」と、芹澤せりざわミヤコから目を逸らした。謙遜、と言うにはネガティブな反応。偽台本のことを気に病んでいるのだろうか。


「あ、あの!わたし、疑われていますよね……?」


 蒼い目が鳶色の瞳を射抜いた。

 一瞬、言葉が遅れる。ミヤコは不覚にも、胸の奥が波打つのを感じた。


「正直にお答えするなら、どちらとも言えません。お話を聞いてから判断します」


「……わかりました」


 しゅんと肩を落とす間宵まよいライラ。1年生であの大舞台、さぞ不安だっただろうに。それを危うく台無しにしかけてしまった。落ち込むのも無理はない。ミヤコは間宵ライラの肩に手を置いて、出来るだけ優し気に語り掛けた。


「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ!気楽に気楽に!取り調べじゃないんですから!」


「そ、そうなんですか?」


「そうそう!だから安心してね」


 教室の扉がノック無しに開かれて「芹澤さん、部屋の準備が出来ました。どうぞこちらへ」と、佐伯さえきシズカが淡々と告げた。


「お、佐伯さん仕事が早いねぇ!じゃ、間宵さん、行こうか」


「は、はい!よろしくお願いします!」


 つづく

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