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セラフィエルの憂鬱  作者: 笑顔猫
王宮動乱編
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第48話 魔力

 

 アーサーに安息を与えた私は、急ぎ王宮へ戻っていた。


 ルベリオの様子も気になったが、そっちへはサイを向かわせた。サイに呼応術式を教えたら早くも改良して振動の強弱で状況を伝えると約束してくれた。


 そもそもあやつを王宮に入れさせたら討伐隊が組まれて、その討伐隊が簡単に蹴散らされるかもしれないからな。


 もしサイが本気で王城を破壊しようとしたら、さすがに対抗手段が思いつかない。

 私でも阻止できないだろう。


 そうなったらもういっそ全てを諦める他無い。

 母様などは対抗する為の私の力の余波で簡単に命を落としてしまうだろうからな。


 まぁ、サイがそんな事をする理由は一つも無い訳だが。


 ひとまずは疫病の感染拡大を阻止しなければならない。サイはアーサーを殺したら呪いが解かれるかもしれないと言っていたし、アーサーも頷いていたが半信半疑だ。

 そんなに都合のいい事は起こらんだろう。



「呪い……ね」



 そう、疫病では無かった。

 魔王アーサーの身体を蝕んだのは病ではなく、セラフィエルのペナルティによる呪いだ。


 さすがの魔王アーサーも予想していなかっただろう。予想できていたとしたら行動は変わっていたはずだ。



 魔王を苦しめてまで人類を滅ぼそうとするセラフィエル。その存在は未だ謎だ。

 行動原理も内面も何一つ理解できることがない。



 ……前世では、私たちを滅ぼすために魔王ではなく本人が直接降りてきた。


 そもそもセラフィエルの力を持ってすれば魔王など不要な筈。セラフィエル本人が降りてこなければならない理由があったんだ。



 探せるか……?その理由を。



 森の深奥から走っていた私は足を止めて思考に力を注ぐ。


 つい魔神の魔力を扱いたくなってしまうが、セラフィエルに覗かれているという言葉に重きを置かねばなるまい。



 深い海のような暗い谷底に私の宮殿はある。

 私の記憶の置き場所だ。そこにある私の自室の棚から過去の記憶を取り出す。



 ……セラフィエルは決定的なものは残していない。世界を何度も破滅に導いているんだ。その際に全て証拠となるようなものは消しているはず。



 だが、分かることもあるだろう。

 よく思い出せよ。



 一つ、セラフィエルは何度も世界をリセットしている。これは間違ない。


 二つ、セラフィエルはリセットする事で魔術を消そうとしていると考えていた。

 だが、本当にそうか?魔術も魔法も本質的には変わらないのではないだろうか。ヒトを媒介にして魔力を用いて放つという点で言えば共通しているんだ。


 三つ、セラフィエルは神じゃない。魔神から分裂した神の破片のようなものなのだろう。言ってしまえば、ヤツこそ魔神の使徒と言えるのではないか?

 "ペナルティ"を与えるという行為は、実に()()()()



 最後に……()()




「……あぁ」




 少し分かった気がする。


 未だ情報が圧倒的に足りないが、理解はできる。


 セラフィエルは()()しているのだ。


 何に期待しているのかは分からない。だが、何度もリセットを繰り返しているのは人類に何かを期待している。


 そして、聖女の存在。


 セラフィエルは聖女に力を与えたのではなく、知恵を与えたのではないだろうか。


 聖書の記載によると、聖女の力を持って大地を育み、人を育み、社会を作ったとされている。

 そして、その聖女はセラフィエルを信仰していた。


 これは魔力を使わずに行われた、聖女による魔法なのではないだろうか。


 大地を育むというのはつまり、食物が育つようにしたという事。

 人を育むというのは、村や街、国単位で人を統制する術を考えた事。

 そして、社会基盤が構築されていったとも読み取れる。

 そこには魔力を介さない人の知恵が散りばめられていたのだろう。



 セラフィエルは、この世界に魔力を与えたんじゃない。



 ()()を与えたんだ。



 セラフィエルにとって、魔術も魔法も同じだ。奴が嫌いなのは、魔力そのものだったのかもしれない。

 だからこそ奴は私との戦闘時、ギリギリまで魔法を使わなかった。



 ……飛躍し過ぎか?

 魔神から生まれたセラフィエルが魔力嫌いなど、ありえない。



「いや、待て」


 魔神とセラフィエルは敵対しているんだ。理由は分からないが、魔神が魔力を生み出した存在であるならそれを嫌ったセラフィエルが離反していてもおかしくはない……か。


 聖女に知恵を与えたのは何故だ……?

 いや、聖女に知恵を与えたんじゃない。与えられた人間が聖女と呼ばれるようになったんだ。




 魔力を使わずに栄えた土地。


 与えたのは魔力ではなく知恵。


 セラフィエルは何かに期待していた。


 そして、魔神からの離反。


 聖魔法行使の拒絶。


 現在も生み出される魔王。




「まさか、魔力を使わない世界を作りたかった……?」




 仮定に仮定を重ねた推論だ。突拍子も無い事かもしれないし、かなり的外れという可能性もある。


 だが……。



「……もしそうなら、全ての辻褄が合う」



 与えた知恵が生み出した土地、人、物。

 全てが魔力無しで動いていたんだろう。だが、何かが起きて結局魔力が表に出てくるんだ。

 そりゃあリセットしたくもなる。


 奴は何度も実験しているんだ。

 どうすれば魔力を根絶させる事ができるのかを。


 私たちの住む、この世界で!



「……ふざけるな」



 必死に生きて、必死に努力している人がたくさんいるんだ。

 その中で生まれた知恵や社会性、歴史と伝統。

 全てを無かった事にして再度世界を作り直すなど、正気の沙汰ではない!


 私のクロエがそんな事のためにその命を散らすなど、断じて許容できるものでは無い!


 我々は、お前のオモチャ箱などでは決して無い!



 セラフィエルは私の転生に気づいていないだろう。気づいていたのなら、何よりも優先して私を殺す筈だ。

 それこそ()()が登場してもおかしくない。

 だが、今のところ昔に作った魔王にペナルティを与えて放ったらかしていた有様だ。



 今の私はセラフィエルに覗き見られている。最強の魔王を屠った、過去最高の器の可能性があるからだ。

 故に魔神の力を使う事はできない。一度使ってしまえば、全てがセラフィエルに露呈するだろう。



 この怒りの感情を、負のエネルギーを撒き散らす事ができない苦痛。

 燃え滾る心臓は激しく私を苛んでいる。



 ……待っていろ、セラフィエル。

 お前は必ず私が殺す。


 サイに譲ってなるものか。


 準備が整った時、私が呼び出してやる。



 覚悟など、させるものか。

 絶好の機会など、与えるものか。



 お前は、絶対に私が殺す。




 

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