ep.09 集合前夜
オーディションが終わってから、いくつもの日が過ぎた。
何人かとは顔を合わせ、少しずつ互いを知る時間もあった。けれど――。
8人全員がそろうのは、明日が初めてだ。
その前夜。
伊藤颯太は、自室の机に広げたノートを閉じ、深く息をついた。
オーディションのころからつけてきた「メンバー調査ノート」。
短いメモやイラスト、感想がびっしり詰まっている。
けど、ページをめくるたびに思う。
――これだけじゃまだ足りない。
人を知るって、情報を集めるだけじゃダメだ。
同じ時間を過ごして、一緒に笑って、悩んで、汗をかいて……その積み重ねの先にあるものだ。
「誰よりも彼らを理解しているマネージャーになりたい」
颯太の心にあるのは、その思いだけだった。
今日、先輩マネージャーの岡さんから、改めて新ユニット名の由来を聞かされた。
名前自体は前から知っていたけれど、そこに込められた意味や願いを聞いたのは初めてだった。
「名前ってのはな、颯太。最初から完璧に馴染むもんじゃない。みんなで育てて、やがて特別なものにしていくんだ」
そう語った岡の言葉が、今も頭に残っている。
正直、まだしっくりは来ていない。
けれど、明日――
全員の前で発表されたその瞬間から、その名前は彼ら八人のものになる。
そしてオーディエンスが呼び、声援を送り、思いを重ねていくことで、きっとかけがえのない響きに変わっていくのだろう。
カレンダーの「9月19日」に赤い丸がついている。
見るだけで、胸の奥がざわざわと熱を帯びる。
――8人全員がそろう日。
そして、新しいユニット名が発表される日。
緊張とワクワクが入り混じる中で、颯太は小さく息を吐いた。
明日、いよいよ“本当のスタートライン”に立つ。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




