表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/63

ep.61 何も起きないのが、一番うまくいってる

キャラランドのレッスンスタジオは、朝から少しだけ慌ただしかった。


今日はLa♪Ra・RISE!(ララライズ)の撮影日。


密着企画の一部を使った、ショート動画の収録が予定されている。


機材が運び込まれて、スタッフが位置を確認して、メンバーもそれぞれ準備に入っている。


 一見すると順調だ。予定通りに進んでいるように見える。

 ——でも。


(……ちょっとだけ、ズレてる)


俺はスタジオの隅に立ったまま、全体を見渡した。


誰かが大きくミスをしているわけじゃない。


むしろ、全員ちゃんと動いている。


ただ、ほんの少しだけ。


立ち位置が甘い。


導線がかぶっている。


準備の順番が噛み合っていない。


このままでも撮影はできる。


でも、このままだと、どこかで引っかかる。


(……今のうちだな)


誰かに言われたわけじゃない。


でも、自然と体が動いていた。


「真秀、先にそっち入っていいか?」


声をかけると、真秀は少しだけ首を傾げる。


「今? まだカメラ来てないけど」


「うん、でも今の立ち位置だと次のカットで動線かぶると思う」


「あー……なるほどね」


軽く納得したように位置を変える。


「カノンくん、音チェックもう一回だけいい?」


「さっきやったが」


「うん、でもさっきのだと環境音ちょっと入ってた」


「……ああ、確かに。今なら静かだな」


言いながら、すぐに機材の方へ向かっていく。


「ダズ、今の並びのままだと後ろ詰まるから、半歩だけ後ろいい?」


「OK、ワタシ後ろネ」


軽く笑って、自然に位置を調整する。


全部、大したことじゃない。


指示ってほどでもない。


修正ってほどでもない。


ただ、少しだけ整える。


それだけ。



数分後。

「じゃあ、本番いきまーす!」


スタッフの声がスタジオに響く。


カメラが回る。


音が乗る。


メンバーが動く。


——引っかからない。


流れるように進む。


誰も止まらない。


変にやり直す必要もない。


(……いいな)


小さく、息を吐く。


これだ。



撮影は、そのまま一発で終わった。


「……早くない?」


猫沢さんが、少し驚いたように言う。


「いつももうちょい詰まるのに」


「今日、やけにスムーズだったな」


岡さんの声も、ぽつぽつと聞こえてくる。


「……あれ、さ」


那音くんが小さくつぶやく。


「さっきの位置調整とか、伊藤くんがやってましたよね?」


一瞬、視線が集まる。


「え?」


思わず声が出る。


「いや、別に……」


大したことじゃない。


そう思っているのは本当だ。


「いやー、あれなかったら詰まってたよ」


真秀が軽く笑いながら言う。


「俺、あのままだと確実にかぶってたし」


「音もあのタイミングでやって正解だったな」


 カノンくんも、淡々と言う。


「Good adjustmentネ」


ダズが親指を立てる。


少しだけ、言葉に困る。


「……いや、普通に気になっただけで」


そう言うと、真秀が肩をすくめた。


「それができるのがすごいんだろ」


その言葉に、少しだけ間が空く。


でも、変に照れる感じでもなかった。


ただ、静かに納得する。


(……ああ)

やっぱり、これだ。


ちゃんと回るようにする。


スタジオの端で、スマホを取り出す。


次のスケジュールを確認して、少しだけ調整を入れる。


今日と同じように、明日も、ちゃんと回るように。


(世界一にするって——)

(こういうこと、積み重ねていくってことだよな)


誰も止まらない。


誰も困らない。


その状態を、当たり前にする。


それが、俺の仕事だ。



*キャラクター原案者*

英賀田 雪雄(あがた ゆきお)  :日花子

根古島 カノン(ねこじま かのん) :日花子

京極 真秀(きょうごく まほろ)   :茶ばんだライス

折原 千鶴(おりはら ちづる)   :夏也 すみ

狭山 那音(さやま なおと)   :ギフカデ

Daz・Garcia(ダズ・ガルシア)  :HUNGRY

赤河 辰煌(あかがわ たつき)   :ウニヲ

佐藤 翔太(さとう しょうた)   :niko

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ