ep.58 カメリアと翔太、ゆっくりでも前へ
キャラランドには、いろんなキャラクターがいる。
リーダー気質、鬼のマスコット、ぽこぺん。
壮年男子うさぎのマスコット、べにほっぺ。
アイドル系マスコットを目指す(?)いたずら猫のガレットたん。
人気のご当地ゆるキャラを目指す鶴のクライン。
ビジネス志向の豚、クライム。
そして、もう一人——いや、一匹。
新米マスコット。
カメリア。
亀のキャラクターだ。
ちょこちょこと歩いている。
大きな甲羅を揺らしながら、ゆっくり前に進む。
そして、だいたい誰かに応援されている。
キャラランドの中では、いちばんの新入り。
でも、一番みんなに可愛がられている。
理由はたぶん、単純だ。
カメリアは、いつも一生懸命だからだ。
その日の夜。
レッスンが終わったあとの事務所は、だいぶ静かになっていた。
俺はカメラを肩にかけて、廊下を歩いていた。
ララライズの密着を始めてから、
「人がいなくなったあとの時間」を見るのが習慣になっている。
本当の表情は、だいたいその時間に出る。
スタジオ横の倉庫の前を通りかかったときだった。
中から声が聞こえた。
「……今日はどうだった?」
翔太の声だ。俺は思わず足を止める。
少しだけ開いた扉の隙間から中を見る。
そこには——佐藤翔太と、カメリアがいた。
床に置かれているのは、カメリアの衣装らしい小さなマント。
カメリアは甲羅の上に着ていた衣装を外して、少し肩を回していた。
「ふぅ……」
カメリアが小さく息をつく。
翔太が聞く。
「衣装、重い?」
カメリアが甲羅を少し揺らした。
「うん。けっこう」
「甲羅の上に着るとさ、思ったより動きにくくて」
翔太が笑う。
「ぼくね、今日さ、イベントで……」
カメリアが甲羅をぽん、と叩く。
「子どもに“動きおそい!”って言われたんだ」
翔太が少し驚く。
「そうなの?」
カメリアは苦笑いした。
「亀だから、仕方ないんだけどさ」
「でも、ぽこぺんとかクラインって、すごく動くでしょ」
「ぼくも、あんなふうに出来たらいいのになって思って」
翔太は少し考えた。
それから言う。
「でもさ」
カメリアが顔を上げる。
「子どもと話すとき、すごく近くまで寄るでしょ」
カメリアが少し驚く。
「……なんでわかったの?」
翔太が笑う。
「カメリア、そういうタイプでしょ」
カメリアが少し照れる。
「だって、近いほうがいいかなって思って」
翔太はうなずいた。
「それ、すごくいいと思う」
「動きが速いマスコットは、もういっぱいいる」
「でもさ」
「ちゃんと目を見てくれるキャラって、意外と少ない気がする」
カメリアは黙る。
翔太が言う。
「カメリアの良さ、そこじゃない?」
カメリアの甲羅が少し揺れる。
「……そうかな!」
「うん」
少し静かな時間が流れる。
カメリアがぽつりと言った。
「翔太」
「うん?」
「ぼくね」
「うん」
「今日ちょっと、自信なくなってたんだ」
翔太が少しだけ真面目な顔になる。
「でも、今ちょっと元気出た」
カメリアが言う。
「ありがとう」
翔太が肩をすくめる。
「お互い様だよ」
カメリアが首をかしげる。
「翔太も?」
翔太が笑った。
「うん」
「カメリア見てるとさ」
「ぼくも頑張ろうって思う」
カメリアが少し驚く。
「ほんと?」
「ほんと」
カメリアはしばらく黙っていた。
それから言った。
「じゃあさ」
翔太が見る。
「うん?」
「ぼく、もっと“カメリアらしいマスコット”になる!頑張る!」
翔太がうなずく。
「いいね」
「翔太もさ」
「うん」
「翔太らしい歌、歌ってね」
翔太が少し笑った。
「約束」
二人が小さく手を合わせる。
それを見ながら、俺は思った。
翔太が折れない理由。
あいつは、一人で走ってるわけじゃない。
甲羅を背負った、もう一人の挑戦者、仲間がいる。
俺は静かにその場を離れた。
この時間は、まだ記録しなくていい。
でも——いつか。
翔太がLoHiのステージに立つとき。カメリアが同じステージに立ったとき。
そのときは、絶対に撮る。
そう決めながら、俺はカメラを肩にかけ直した。
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佐藤翔太とカメリアのお話は、こちらも合わせてご覧ください。
ぼくは佐藤翔太!その⑭~カメリアとぼく~
https://ncode.syosetu.com/n8456ln/14
ぼくは佐藤翔太!その㊵ ~続・カメリアとの交流~
https://ncode.syosetu.com/n8456ln/40
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




