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ep.51カノンとガレットたん、見るとこ一緒

午後の事務所は、ちょっと静かだった。


レッスンは終わっていて、次の予定までは、まだ少し時間がある。


バタバタしてる人もいない。


俺は、レッスンスタジオから会議室のほうへ歩いていた。


ドアが、少しだけ開いている。


(……カノンくん?)


そっと中を覗くと、やっぱりいた。


カノンくんはテーブルの端に腰かけて、

何枚かの紙を広げている。


譜面でも、台本でもない。


コードと、短いフレーズが書かれたメモ。


最近作ってる曲の途中、って感じだ。


(ああ……今これか)


カノンくんは、考えがまとまらないとき、

一回ぜんぶ紙に書き出すタイプだ。


音を出す前の、いちばん静かな時間。


俺は声をかけずに、そのまま見ていた。


そのとき。


テーブルの反対側から、小さな影が、ひょいっと飛び乗った。


三毛の毛並み。


軽い足音。


——ガレットたんだ!


迷いゼロで、カノンくんのメモの上に着地。


(あっ……)


思わず、一歩踏み出しかける。


ガレットたんは、紙の真ん中に前足を置いて、ぴたりと止まった。


ぽん。


肉球の跡。


白い花びらみたいな模様。


同時に、ふわっと広がるマーガレットの香り。


(……やったな)


カノンくんは、一度だけ顔を上げた。


「……」


無言。


追い払うでもなく、ため息をつくでもなく、ただ、その紙を見る。


それから。

肉球の跡がついたメモを、もう一回、じっと読み直した。


(え……?)


さっきまで、止まってたフレーズ。


カノンくんはペンを取って、一行だけ、書き足す。


「……ああ」

小さく、納得した声。


「ここ、残るな」

それだけ言って、その紙を、他のメモと分けた。


ガレットたんは、仕事終わりみたいに、しっぽを一回だけ揺らす。


そのまま、紙の端で丸くなる。


(……邪魔してない)


それどころか。

さっきより、カノンくんの手が止まらない。


一枚。


また一枚。


残されていくメモ。


ふと、気づく。


ガレットたんが最初に肉球を置いた紙と、

カノンくんが最後まで残した紙。


……同じだ。


偶然じゃない。


ガレットたんは、テキトーに乗ってるわけじゃない。


カノンくんも、気分で選んでるわけじゃない。


やり方は、全然ちがう。


でも。


「これ、いいよね」って思う場所が、同じ。


ガレットたんは、いつの間にかカノンくんの横で、静かに目を閉じていた。


カノンくんも、それを気にせず、作業を続ける。


(……この2人)


(見るとこ、一緒だ)


前に感じた、「色が重なる」って感覚。

今、ちょっとだけ、はっきりした。


——パートナーって、話が合うかどうかじゃない。


——選ぶポイントが、自然にそろうかどうか。


俺は、そっとその場を離れた。


会議室を出る前、もう一度だけ振り返る。


テーブルの上には、肉球の跡が残る一枚の紙。


それを見つめる、カノンくん。


マーガレットの香りが、まだ、ほんのり残っていた。


(……まだ仮だけど)

俺はポケットのメモに、短く書く。


・カノンくん × ガレットたん


見るとこ一緒

今は、それで十分。


——たぶん、この組み合わせ、ちゃんと意味を持つ。


そんな予感が、胸の奥に、静かに残っていた。



*キャラクター原案者*

英賀田 雪雄(あがた ゆきお)  :日花子

根古島 カノン(ねこじま かのん) :日花子

京極 真秀(きょうごく まほろ)   :茶ばんだライス

折原 千鶴(おりはら ちづる)   :夏也 すみ

狭山 那音(さやま なおと)   :ギフカデ

Daz・Garcia(ダズ・ガルシア)  :HUNGRY

赤河 辰煌(あかがわ たつき)   :ウニヲ

佐藤 翔太(さとう しょうた)   :niko

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