ep.50 2月13日、事務所はちょっと甘い
2月13日。
事務所に入った瞬間、俺は察した。
(……あ、これアレだ)
机の上。
紙袋。
小さな箱。
明らかに数が多い。
「おはようございまーす」
一番に声を上げたのは千鶴だった。
「今日さ! 猫沢さん来るの早くない?
なんか、もう準備万端って感じ!」
その時点で、ほぼ答え合わせだった。
——バレンタイン。
案の定、
猫沢さんは少し照れた顔で、紙袋を抱えて立っていた。
「えっと……みんな、おはよう。
今日は、その……明日は皆さんお休みなので……」
言い切る前に、真秀が一歩前に出る。
「あ、これ……もしかして?」
「やっ言わないで……!」
笑いが起きる。
「一応ね、全員分あるから。
ララライズのみんなと……
猫太Pさんや男性陣みんなに……」
最初は雪雄さんだった。
「雪雄くんは……これです」
渡されたのは、シンプルな箱。
「カカオ多めです。集中力高まるやつ」
「……ありがとうございます。
すごく、うれしいです」
次はカノンくん。
「カノンくんは……これ」
小さめの箱を受け取ると、カノンくんは一度だけパッケージを見る。
「……なるほど、理にかなってる」
それだけ言って、静かにしまった。
結果、こちらもハイカカオ系だった。
那音くんは、個包装がいくつか入った袋。
「一気に食べなくていいやつ、選びました」
「...!!ありがとうございます。すごく助かります」
ダズは、海外っぽいパッケージ。
「ワタシ、これ見たことある。
でも日本では、なかなか売ってない」
「ネットで探しました……」
「うれしい。家族にも見せます!」
次は千鶴だった。
「千鶴くんは……これ」
少し大きめの包みを差し出すと、千鶴は目を丸くする。
「え、俺? いいの? ほんとに?」
受け取った瞬間、中身を見ずに、にっと笑った。
「ありがとうございます!
なんかもう、もらえただけで嬉しいでーす!」
そう言って、大事そうに胸の前で抱える。
「あとで頂きます!妹にも分けようっと!」
その一言で、場の空気がふっとやわらいだ。
辰煌は、見た目が派手なチョコ。
「わっ、なにこれ!テンション上がる!」
「辰煌くんは、“楽しいやつ”がいいかなって……」
「最高!」
翔太には、小さな箱と、メモ。
「佐藤くんは……
喉に優しそうなやつ、選びました」
「ありがとうございます。
...とても、うれしいです。」
最後は——
真秀。
「真秀くんは……」
一瞬、猫沢さんが間を取る。
「……明日、誕生日なので」
「え?」
「誕生日“前日仕様”です」
箱は、他よりちょっとだけ大きかった。
「おお〜!前夜祭ってやつ?」
「前夜祭です!」
真秀、めちゃくちゃ嬉しそうだ。
猫太Pにも、ちゃんと用意されていた。
「これは……お酒に合うやつニャ?」
「はい。“夜用”です」
「わかってるニャ〜」
俺も、シンプルなチョコを受け取った。
「颯太くんは……
作業しながらでも食べやすいのにしました」
「助かります。ほんとに」
チョコが配られ終わると事務所の空気が、少しだけ緩んだ。
(※岡さん、他スタッフは営業の為不在だ)
それとは別に、オーディションの頃から応援してくれているファンの人たちからも、いくつかチョコやメッセージが届いていて、受付の棚が少しにぎやかになっていた。
——こういう日も、悪くない。
ふと見ると、
翔太と千鶴が、こそこそ話している。
「……明日さ」
「だよね?」
「レッスン、オフだし」
「……な?」
俺と目が合って、二人とも、すっと逸らす。
(ああ)
(これ、なんか企んでるな)
真秀はまだ、チョコの箱を眺めながら、
「いや〜、明日なにしよっかな〜」
なんて言ってる。
(たぶん、“普通の誕生日”にはならない)
そんな予感だけが、静かに頭に残った。
——明日は2月14日。
レッスンオフ。
そして、真秀の誕生日。
さて。
どんな一日になるんだろうな。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




