ep.48 ララライズ密着計画・記録は、十分そろった
事務所の照明が、夜用に切り替わっていた。
昼間のざわめきが嘘みたいに静かで、廊下には、空調の音だけが残っている。
俺は、企画室の机にカメラを置いた。
レンズキャップを外して、何も撮らないまま、しばらく眺める。
(……だいぶ、たまったよな)
ノートパソコンを開くと、撮りためたフォルダが並んでいた。
レッスンの合間。
準備中の会話。
失敗した直後の、何でもない表情。
無造作につけたフォルダ名が、画面に並んでいる。
マウスを動かしながら、この数週間の出来事を思い返す。
声と向き合った歌のレッスン。
夢を言葉にした千鶴の横顔。
それぞれ違う場所で、違う速度で進む姿。
(……どれも、“今”だ)
椿社長の言葉が、ふと頭をよぎる。
「作りすぎなくていいからね。
今のLa♪Ra・RISE!(ララライズ)を、そのまま残して」
猫太Pも言っていた。
「盛らないほうが、あとで効いてくるニャ」
分かっている。
これは、“見せるための映像”じゃない。
記録だ。
彼らが、ここにいた証拠。
カレンダーに目をやる。
── 2月10日(火)
日付の横に、小さくメモが残っている。
「配信開始」
(……いよいよか)
公開を押せば、もう引き返せない。
(……大丈夫だ)
派手じゃなくていい。
全部を伝えなくてもいい。
途中のままで。
揃ってなくて。
完成していないままで。
それでも、今のララライズは、ちゃんと前に進んでいる。
俺は、カメラを手に取った。
レンズ越しに見える事務所は、いつもと同じ。
でも、少しだけ、近くに感じた。
「よし」
誰に言うでもなく、小さく呟く。
あとは――外に出すだけだ。
俺は、そっとカメラの電源を入れた。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




