ep.31 視線の理由
スタジオの前を通るつもりなんて、最初はなかった。
でも──扉の向こうから聞こえたリズムが、俺の足を勝手に止めた。
少しだけ開いた隙間から、三人の姿が揺れていた。
真秀は鏡に向かい、真剣な表情で細かい角度を何度も確かめている。
指先ひとつのズレが許せないみたいに、静かで、でもすごく熱い。
カノンくんはひとつ動くたびに、自分の動きを分析して言い聞かせるように呟く。
「呼吸が早い。つまりテンポが乱れる原因は……」
本人は普通に話しているつもりらしいけど、すごく専門的で、俺には全然わからない。
那音くんは、ふたりの動きを見しながら合わせようとする。
メンバーで一番ダンスがうまい那音くん、その技術の高さが、動きの柔らかさにそのまま表れていた。
「……カノン、そのステップ、軽くなった?」
真秀が、呼吸の合間にぽつりと言う。
「そう?自分なりに分析しった結果」
カノンくんはふつうに答えてるけど、どこか嬉しそう。
「いいな分析って。俺もその分析、できるかな……」
那音くんが遠慮がちに言う。
「那音のダンスは十分技術が高い。呼吸を安定させればもっと良くなると思う」
ダンスの素人ながらカノンの指摘は、核心を突いている。
「……でも、那音のダンスをするときの息遣いも動きも、俺は好きだけどな」
真秀の声は淡々としているけれど、どこか優しい。
「一歩踏み出す感じがしてさ。見てて“らしいな”って思う」
「そ、そう……?」
那音くんは、耳の先まで赤くなる。
こんな小さなやり取りだけで、
スタジオの空気があたたかく変わっていく。
(……やっぱり、いいな)
俺は、そっと手帳を開いた。
急いで書き留めないと、この“温度”が逃げてしまいそうで。
でも──。
「……なあ、カノン。なんか視線感じん?」
真秀の声に、俺の肩が跳ねる。
「感じる・・・。観察者が、さっきからこっちを分析している」
カノンくんの言い方が妙に怖い。
那音くんが眉を寄せながら、ゆっくり扉のほうを見る。
「……あー……やっぱり。俺もなんか見られてる気がしてたんだよな……」
3人が向けた視線の先にいるのは──もちろん、俺・・・。
(やば……)
「……颯太?」
「あっ、その……っ!」
俺は中途半端に固まったまま、手帳を胸に抱えた。
真秀が静かに問いかける。
「どうした? なんかあるなら言ってくれ」
カノンくんも腕を組んだままこちらを見る。
俺は喉を鳴らし、深呼吸をひとつ。
「……みなさんに、お話ししたいことが……」
言った瞬間──
那音くんは一度「ん?」というように目を瞬かせたあと、ゆっくり表情を和らげた。
「……そっか。なんか相談あるんだな。だったらさ──俺ら三人より“みんな揃ってるとき”のほうが話しやすいんじゃない?」
那音くんは、軽く首をかしげながら続ける。
「La♪Ra・RISE!(ララライズ)に関わることなら、全員で聞いたほうがいいと思うし」
カノンくんも小さく頷いた。
「そのほうがスムーズだろ。全員で聞いたほうが、話が早い」
三人とも、“何の相談か”まではわかっていない。
ただ──俺がLa♪Ra・RISE!(ララライズ)のために何かを抱えている、と自然に受け止めてくれている。
「……うん。みんなが揃っている場で、話させてください」
三人がふっと緊張を解く。
8人がそろったときに、ちゃんと企画の話をしよう。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




