ep.30 この光景、誰かに見せたい
「いいね。じゃあ、“ララライズ密着計画”――本格スタート、だ」
猫沢さんにそう言われてから、
ぼくの毎日は少しだけ忙しくなった。
撮影用のメモリーカードを買い足して、
編集ソフトのテンプレを作り、
どの時間帯に投稿するのが一番見てもらえるか統計を取る。
メンバーのレッスンスケジュールと、
スタジオの空き時間も全部照らし合わせて、
“邪魔にならない撮影ポイント”を地図にした。
(……まだ撮影どころじゃないけど、準備ってこんなにあるんだ)
でも、不思議とつらくはなかった。
むしろ、胸の奥がわずかに熱い。
――みんなの“今”を残すためなら、なんだってやりたい。
そんな気持ちが、ずっと背中を押していた。
今日は、機材のケーブルを受け取りにスタジオへ。
さっと寄って帰るつもりだった。
……そのつもりだったけど・・・。
廊下を歩いている途中、
ふいに視界の奥が“明るくなるような気配”がした。
(……あれ?)
スタジオの扉が少しだけ開いていて、
そこから、三人の影が鏡に揺れているのが見えた。
雪雄さん。
那音くん。
そして、ダズ。
三人は、声を荒げるでもなく、笑っているでもなく、静かに、同じ振付をそろえようとしていた。
動きはゆっくり。
でも、揃った瞬間の“線”が、とてつもなく綺麗だった。
雪雄さんの、空気まで斬るようななめらかさ。
那音くんの、素直でまっすぐな体重移動。
ダズの、二人の間に自然とリズムを差し込むような呼吸。
「ナオト、肩ちょっと上がってる」
「……あ、これでいい?」
「OK。ユッキー、その流れカッコイイね」
三人のやり取りは小さくて、
でも、見ているこっちの胸をじんわりと熱くする。
(……すごい。なんか、作品みたいだ)
高さでも、派手さでもない。
三人の“軸”がそろうだけで、スタジオの空気が変わる。
ぼくは、扉の隙間から目を離せなかった。
こんな瞬間、誰に頼まれたわけでもないのに、胸がざわめく。
(……ああ、こういうのだ)
ぼくが“密着計画”で残したいのは。
こういう、誰にも気づかれずに生まれるエピソード。
それをいち早く見つけて、ちゃんと伝えられるのは、この立場のぼくだけだ。
気づけば、小さく息をのんでいた。
「……この光景、早くみんなに見せたい」
まだ密着計画は“準備中”。
でももう、撮りたい光が目の前にあった。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




