ep.28 はじめての企画提案――“ぼくが撮るララライズ密着計画” ――
11月のある日。
プロデューサーの猫太Pと、岡マネージャーに時間をつくってもらった。
スタジオ横の小さな会議室。
ぼくは、手に汗をにじませながら簡単な資料を抱えていた。
――緊張しても仕方ない。
ずっと考えてきた企画なんだ。自分で言わなきゃ、始まらない。
「えっと……今日は、その……企画の相談で」
猫太さんが、椅子に座ったまま尻尾を揺らした(※比喩じゃなくて本当に揺らしている)。
岡さんは静かに資料へ視線を向ける。
ぼくは深呼吸をして、話し始めた。
「La♪Ra・RISE!って、まだ未完成だと思うんです。
アイドルユニットの完成型は、まだ先で、遠いところにいるというか……。
でも、だからこそ発信できる“今”があるんじゃないかって思って」
猫太さんが小さく頷く。
その反応に背中を押されて、続きを口にした。
「レッスンの様子とか、日常とか……ぼくらが成長していく姿を、SNSで公開したいんです。
撮影も、編集も、SNSにあげるのも、全部ぼくがやります」
最近、ぼくは思っていた。
あの“加工フィルター大混乱事件”。
カノンくんの冷静すぎる分析、真秀の迷いのない“盛り補正”、
翔太の必死のツッコミ……。
あの3人のやり取りは、“仲間になっていく瞬間”そのもので、
扉の外で見ていたぼくまで、つい笑ってしまった。
そして雪雄さん・辰煌・千鶴の小さな熱。
休憩中なのに、雪雄さんの型に辰煌が食いつき、
千鶴が巻き込まれるように楽しそうに真似して、
気づけばスタジオがひとつのパフォーマンスみたいになっていた。
――この瞬間を、誰かに見てもらいたい。
そう思うことが増えた。
レッスンの裏側って、ただの練習じゃない。
誰かが誰かに影響されて、場が変わっていく。
仲間が仲間の良さを引き出していく。
本人たちは気づいてないけど、確かに成長していく音がする。
これ、動画にできたら……絶対に伝わる。
そう確信したのが、今日この企画書を持ってきた理由だ。
言い終えた瞬間、部屋の空気が一段静かになった。
猫太さんが、ゆっくり口を開く。
「オーディションのときから、La♪Ra・RISE!は多くの人に見守られてきたニャ。
“過程ごと愛されるユニット”って、とても強いニャ。
これからも、よい部分だけじゃなく、課題も含めてオープンでいてほしいニャ」
いつもの柔らかい声なのに、どこか重みがあった。
「……岡くん。マネージャーとしてはどう思うニャ?」
数秒の沈黙。
岡さんは、資料を閉じて、ぼくの方を見た。
「颯太。撮影の運用とかSNS投稿のルールは猫沢さんに聞いてみな。
ただ――」
言葉を切り、少しだけ間を置いた。
「裏も表も、全部さらけ出す覚悟があるなら、やっていいと思う・・・。
“見てもらう”ってのは、そういうことだ」
胸の奥が熱くなった。
覚悟。
その言葉が、真正面から刺さった。
「……はい!」
思わず大きな声で返事をしていた。
猫太さんが嬉しそうに目を細める。
「じゃあ、猫沢ちゃんと相談して撮影体制をつくるニャ。
颯太の新しい役割、期待してるニャ」
会議室を出た瞬間、息が一気に軽くなる。
緊張で固まっていた肩が、ようやく動いた気がした。
――メンバーのみんなにも説明しないとだし、
――機材のことも考えないといけないし、
――でも、とにかく早く、ぼくらの“今”を届けたい。
ぼくの中で、静かに火がつく。
「……よし」
まずは猫沢さんに相談だ。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




