ep.27 レッスンのぞき見② 休憩のあいだに見えたもの
歌のレッスンが休憩に入り、
飲み物を任された俺は、ペットボトルを片手にスタジオへ戻った。
ドアの向こうから、何か動く気配がした。
笑い声でもなく、話し声でもない。
“シュッ”と空気を切るような、静かな音。
「……? まだ休憩のはずだけど」
そっとドアを少しだけ開けると、
照明の落ちたスタジオの中央で、雪雄さんが型をゆっくり確認している姿が見えた。
腕を滑らせ、重心を落とし、視線を誘導する――殺陣の基礎そのものだ。
雪雄さんの一番の特技は、この“殺陣”だ。
舞台時代、悪役として誰よりも多くの敵役を斬ってきた。
その経験が染みついているから、こういう所作がとても綺麗だ。
そして、それを食い入るように見つめる 辰煌。
その動きを必死に真似しようとする 千鶴。
辰煌が思わず声を上げた。
「ユッキー、それ……今の構えめちゃくちゃカッコいい!僕、それやりたい!」
雪雄さんは動きを止め、少し驚いたように振り返った。
「辰煌くん、すみません……。休憩なのに、ひとりでバタバタして。
さっき先生に“軸を意識すると声が安定する”と言われて……
姿勢が気になってしまって、つい“型”で整えようとしていたんです」
その言い方が、いかにも雪雄さんらしい。
控えめで、相手を気遣って。
「いや、むしろ最高だよユッキー!その“見せる構え”、僕に全部教えてほしい!」
辰煌は完全にスイッチが入っていて、雪雄さん以外は目に入っていない。
千鶴も慌てて近づきながら、
「え、えっと……オレもやってみたい!さっきのターン、こう? こうかな?」
とぎこちなく真似を始めていた。
雪雄さんは苦笑しながら、ふたりの腕の角度を順番に直していく。
「辰煌くん、肩の力は抜いて……視線は、ここ。
千鶴くんは、手首を少しだけ返すと流れが綺麗になりますよ」
その言葉に、辰煌が目を輝かせた。
「うわ、やっぱりユッキーすげぇ……! 僕、この部分だけ一生練習する!」
ほんとうに分かりやすい。
辰煌の情熱は、“ステージに繋がるもの”にしか反応しない。
千鶴は千鶴で、
「え、えっと……オレ、さっきのフレーズをちょっと練習してたんだけど……
あ、でも……それ、オレもやってみたい!」
と、半ば巻き込まれる形で参加している。
気づけば休憩のはずのスタジオは、小さな熱で満たされていた。
歌でもダンスでもないのに、
3人の動きはどこかひとつの“パフォーマンス”に見える。
僕は、飲み物を配るタイミングを少しだけ迷って——そっとドアを閉めた。
邪魔したくなかった。
▼ 颯太のメモ(スタジオ前で書いた走り書き)
•雪雄さん
休憩中でも姿勢を整える。真面目すぎるほど真面目。
でも、その“静かな芯”がみんなの軸になっている気がする。
•辰煌
興味のあることだけ異常に深く没頭する。
今日も例外なく“そこだけ”一直線。
•千鶴
巻き込まれながらも場を明るくする空気の調整役。
真似する姿がいちばん素直で、いちばん楽しそうだった。
→ この3人の組み合わせ、意外と面白いかも。。
休憩中のワンシーンでも、それがよく分かる。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




