ep.23 この歌声は?
「……マジで先生?」
驚きの声が落ち着くまでに、少し時間がかかった。
スタジオの中には、信じられないって顔が並んでいる。
「見た目、俺らと変わんねーじゃん」
真秀がぼそっと言う。
辰煌がストレートに猫太さんに質問を投げる。
「猫太P、この娘が歌の先生なんですか?」
猫太さんはいつも通りの調子で、尻尾をゆらす。
「そうニャ。今日から“ももさん”が、歌唱の講師を務めるニャ」
「えっと……よろしくお願いします」
少女――ももさんが少し緊張気味に頭を下げた。
「ももさんはいくつなんですか?」
辰煌が続けて尋ねる。
「えっと……16歳です」
「俺と同じだ」
真秀が思わず声を上げた。
「16歳で、講師……」
カノンが腕を組みながら考え込む。
「歌の技術的指導には一定の経験値が必要だろう。……一般的的には、かなり異例だ」
「でも、猫太さんが呼んだってことは、理由があるんでしょ?」
俺がそう言うと、猫太さんが頷いた。
「そのとおりニャ。――まずは、ももさんの歌を聴いてほしいニャ」
全員が息をのんだ。
「カノン、ピアノの伴奏お願いできるかニャ?」
「了解」カノンが短く返し、ももさんと目を合わせて小さくうなずく。
そして、鍵盤に指が触れた。
静寂。
音が、ゆっくりと空気を震わせる。
そこに、ももさんの声が重なった。
……一瞬で、世界が変わった。
スタジオの空気が、光を帯びたみたいに澄んでいく。
声というより、稲妻。
16歳のか弱い少女の姿は、もうどこにもなかった。
曲が終わった瞬間、誰も動けなかった。
時間が止まったみたいだった。
十秒、二十秒――。
その沈黙を破ったのは、翔太の小さな声だった。
「……すごい……」
猫太さんが、満足そうに言う。
「この猫太が、ももさんを呼んだ理由、わかったかニャ?」
誰も返事をしない。
でも、その表情がすべてを語っていた。
“本物だ”。
ももさんは少し照れたように笑って、
「今日から、よろしくお願いします」と頭を下げた。
自然と、拍手が起こった。
……でも、俺の胸の奥だけがざわついていた。
(この声……どこかで聞いたことがある)
確かに知っている。
けど、どこで聞いたのか思い出せない。
――この歌声は、一体。
その答えを知るのは、もう少し先のことだった。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




