ep.17 みんなの優しいダンス兄貴
レッスンが始まって、数日。
SARUさんとKABAさん――
あのダンスユニット「動物園」のお二人によるレッスンは、スケジュールの都合もあり毎回というわけにはいかない。だからこそ本当に貴重な時間なのだ。
というわけで、彼らが不在の日は、メンバーだけでの自主練習となる。
自主練の日に、自然と“先生役”を務めるようになったのが――そう、那音くんだった。
最初こそ「いや、俺が前に出るの、ちょっと……」と控えめだったけど、
翔太や千鶴の「ここ教えて~」攻撃には勝てなかったらしい。
「はい、そこ! 足の角度が甘い。手はもっと上、上!」
那音くんの指導は、的確で優しい。たまに厳しめ。だがそれがいい。
今ではすっかり、メンバー公認の“みんなの優しいダンスの兄貴”ポジション。
そして、その隣でよくサポートしているのが――雪雄くん。
劇団で鍛えられた経験が光る、もうひとりの“先生”だ。
「肩のラインを意識して、呼吸で流れをつくるといいよ」
言葉の一つ一つがやたら上品で、なぜか舞台照明が当たってるように見える(気がする)。
一方、未経験組で熱心にみんなの優しいダンスの兄貴を頼っているのが翔太と千鶴。
2人とも、那音くんと雪雄くんに食らいついて、必死に頑張ってる。
その姿勢はマジで尊い。
真秀は、どちらかというと“教える側”なのに、気づけば那音くんのところへ行っては、
「このパート、なんかしっくり来ねぇんだよな。ちょっと見てくれる?」
と、素直にアドバイスを求めている。
プライドより完成度、さすがだと思う。
カノンくんは、独自のリズムで踊っている。
「ふむ……この振りは、音楽の構造上、1拍目で跳ねるより4拍目に“タメ”を入れた方が……」
まさかの理論派。振り付けを解析してる。未経験なのに恐ろしい。
そして、ダズ。
ダンス未経験のはずなのに、動くだけでキマる。
「それ、適当にやってるでしょ?」と千鶴に言われても、本人は、
「これが、ワタシのダンス」
ってだけで説得力があるのがズルい。
……正直、顔と動きが勝ってる。
たつきは、というと――今日はやけにキレッキレだった。
「んー……ここ、ターンからの体重移動が納得いかないな……」
ぽりぽり頭をかきながらも、足元はしっかりステップを刻んでいる。
その姿は、ズボラ男子の皮を被った“本気のダンサー”
「たつき、やるときはやるなあ……」
と、ぼそっとつぶやいた俺に、横で見ていた那音くんが軽く笑った。
「赤河くんって、普段はあれだけどさ。
アイドルのことになると、誰よりも真面目だから。ちゃんと全部見てるし、考えてる」
言われてみれば、ダンス中の辰煌はいつも目つきが変わる。
“見せる”ことに関しては、誰よりも貪欲だ。
それが彼の、プロ意識なのかもしれない。
そんな中、レッスンの合間。那音くんとベンチで一息ついていたとき、ふと尋ねてみた。
「那音くん、なんでダンス、そんなに好きなの?」
すると彼は、ちょっと照れた顔で言った。
「小さいときから照れ屋で、友達つくるのが苦手だったけどさ……ダンスしてると、自然と仲間ができたんだ」
「言葉がいらないって感じ?」
「うん、踊ってるときだけは、全部が味方してくれる気がするんだ」
「味方?」
「そう。誰も俺を邪魔しないし、むしろ応援してくれてるって気分になる」
俺はその横顔を見ながら、心の中で拍手した。
――かっけえ。尊い。アイドル向いてるわ。
「那音くんは、踊ってるときが本当に幸せなんだね」
「そう、みんなと一緒に踊ってるときが一番好き……あと、コロッケ食べてるときね」
「……は?」
彼はそう言って、カバンからおもむろに揚げ物の袋を取り出した。
ゴソゴソ……パカッ。
「ん? コロッケ注文したのに、これ……メンチカツ。……メンチカツも美味しいけど……」
(おい神様……)
颯太「あぁ神様、どうか、ダンスしてないときも那音くんの味方でいてあげてください」
こうして、今日もララライズは、汗と笑いと揚げ物の香り(?)に包まれていた。
*キャラクター原案者*
英賀田 雪雄 :日花子
根古島 カノン :日花子
京極 真秀 :茶ばんだライス
折原 千鶴 :夏也 すみ
狭山 那音 :ギフカデ
Daz・Garcia :HUNGRY
赤河 辰煌 :ウニヲ
佐藤 翔太 :niko




